
小雨舞う空模様でまだ肌寒さの残る3月2日(金)、東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪にて第35回日本アカデミー賞授賞式が開催されました。
今年は角田光代の人気小説を映画化した「八日目の蟬」と池宮彰一郎の同名小説を映画化した「最後の忠臣蔵」の2本が最多11部門で優秀賞を受賞。原田芳雄さんの遺作となった「大鹿村騒動記」や三谷幸喜監督による昨年の邦画興行収入No.1作品「ステキな金縛り」、すでにシリーズ化も決定している探偵アクション「探偵はBARにいる」など、時代劇からドラマやコメディー、アクションまで幅広いジャンルの作品が揃いました。
授賞式の開会を告げる挨拶では、日本アカデミー賞協会の新会長に就任した岡田裕介氏が「荘厳な厳粛たる式典であると同時に、楽しく明るいざっくばらんな集いにしたい」と抱負を語ると、その意を汲むように司会の関根勤さんと深津絵里さんが軽快な司会ぶりで授賞式をスタート。深津さんが開口一番「司会の関根麻里です」と自己紹介して会場の笑いを誘い、お笑いを本職とする関根さんが思わず「すごいアドリブがきましたね」と感心するほどのコメディエンヌぶりを発揮してくれました。

授賞式は2人の息のあった司会ぶりで和やかに進行しつつ、最優秀賞の発表を待つほどよい緊張感に包まれていよいよ最初の最優秀賞の発表へ。最初の発表となった最優秀美術賞は「最後の忠臣蔵」が受賞して機先を制しましたが、その後は「八日目の蟬」の快進撃が続きます。撮影賞、照明賞、録音賞、編集賞と立て続けに受賞し、今年の主役は「八日目の蟬」という雰囲気が漂いはじめました。
そして最優秀助演女優賞も「八日目の蟬」の永作博美さんが初受賞。出産後初の映画出演となった永作さんは「家族の助けがなければここにはいなかった」と撮影を支えてくれた家族に感謝しました。また、愛人の子どもを誘拐してしまうという複雑な役について「役柄を理解するのに苦労した。でも赤ん坊を抱いた瞬間に感じる母性愛というのは、やはり女性の性なのでは」と母親の一面を覗かせました。

最優秀助演男優賞の発表でプレゼンターの樹木希林さんから受賞者の名前が読みあげられると、会場からは歓声とどよめきが。受賞した「冷たい熱帯魚」のでんでんさんは、屈託のない笑顔で人を殺し切り刻んで証拠隠滅する連続殺人鬼という強烈な役柄でしたが、登壇したご本人はご自分の芸名をパンダのようだと言って会場の笑いを誘うユーモアたっぷりのスピーチを披露しました。

最優秀主演女優賞は「八日目の蟬」の井上真央さんが受賞。「成島監督から何度逃げだそうと思ったかわからない」と厳しかった撮影当時を振り返りましたが、プレッシャーに押しつぶされそうになりながらも最後までやり抜いたことに誇りを覗かせました。そして「映画がもっといろんな人の心に届いていけばいい。私もそれに貢献できる役者になりたい」と抱負を語りました。

最優秀主演男優賞を受賞したのは「大鹿村騒動記」の故・原田芳雄さん。昨年7月に惜しまれながらこの世を去った原田さんに代わり、女優として活躍する娘の麻由さんが登壇し「父は生前、映画館はおれたちの宝箱だと言っていた。これからも映画館からたくさんの映画が世に出ていってくれれば」と原田さんの思い出を語りました。なお、故人の受賞は第19回(1996年)に「午後の遺言状」で最優秀助演女優賞を受賞した乙羽信子さん以来となります。

ほか、新人俳優賞では昨年の最優秀主演男優賞受賞者・妻夫木聡さんがプレゼンターとして登壇し「僕も10年前に同じ賞をいただいた。10年経って役者の仕事が好きだという気持ちを再確認した。みなさんにもとにかく楽しんで苦しんでいただければ。その分かえってくるものがあると思います」と今年の受賞者たちにエールを送りました。司会の関根さんもまた、受賞者の皆さんをハリウッド俳優に例えるというユニークな方法で祝福。ユーモアたっぷりに受賞スピーチを行った上地雄輔さんは“和製ロビン・ウィリアムズ”、大人顔負けの受け答えで会場を驚かせた熊田聖亜ちゃんは“和製ダコタ・ファニング”、着物姿が初々しい桜庭ななみさんは“和製ナタリー・ポートマン”とそれぞれ命名(?)され、一同照れくさいような誇らしいような顔で微笑んでいらっしゃいました。

結局、最優秀監督賞および最優秀作品賞も制した「八日目の蟬」が、優秀賞を受賞した11部門12賞のうち10部門で最優秀賞を受賞。成島出監督は受賞のスピーチで「この映画は4月公開。3月11日に大震災があって、家族が引き裂かれる話なのでどうだろうと思ったが、被災地の方がこの映画を見てがんばろうと思ったという話を聞いた。こんなふうに映画が人の役に立てると知って感動した」とコメントしました。
今年の優秀賞受賞者の皆さんと出席者の皆さんの胸には、震災で被災された皆さんによって大漁旗をベースに作られたコサージュとリボンが飾られました。また、授賞式の運営スタッフおよび進行をサポートした映画配給各社スタッフも、大漁旗の布きれを腕やボタンホール、IDカードなどに結び、被災地に向けてこころを一つにして授賞式に臨みました。今年の授賞式は、まもなく一年が経とうとしている震災から立ち直ろうと一致団結する気持ちに包まれながら、静かに幕を閉じました。
| ☆ぴあ特別会員による、授賞式に出席した感想 | ||||
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大内さん (女性/49歳/イラストレーター) 毎年、日本アカデミー賞授賞式を欠かさずテレビで見ていました。それはその年の受賞者や作品賞を知りたいためでもあったのですが、役を演じていない俳優さんの゛素゛の姿を見るのが楽しみだったからです。今回はその会場に自分がいられるなんて!目で耳で、その空気すべてを体感できて大興奮でした。特にテレビでは放送されない役者さん以外の方たちから発せられるメッセージには、創り手の熱意が感じられ胸を打たれました。そして何と言っても嬉しかったのは、自分の投じた1票がその中にあるということです。そんな重みをも肌で感じ、どれもこれもその場にいなければ味わうことのできない貴重な体験でした。 |
佐藤由美さん (女性/会社員) 3/2(金)、アカデミー賞授賞式に参加してきました。受賞された方々の晴れ晴れしいレッドカーペット入場を見て、それだけでこちらも胸が熱くなります。最優秀賞に選ばれる方はたった一人ですが、「作品」となって私達の目に触れるのには本当に多くの人が関わっている事を改めて実感しました。映画を観る時は必ずエンドロール終了まで席を立たないのですが、その目立たない箇所に名前がある方々もちゃんと表舞台に出す、大切な場所である事も伝わってきました(それでもごくごく一部ですけど・・・)。大切といえば、入場の際に頂いた、和紙の小さなリボンも私にとっては大切な物になりました。これは東日本大震災復興の取り組みとして、福島から関東地区に避難されている方々が作ってくださったそうです。私はぼかしの入った青いリボンをいただきましたが、アカデミー賞に関われたステキな記念品になりました。第36回のアカデミー賞も素晴らしい作品達が受賞することと思います。楽しみは尽きません。 |
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玉川上水の亀さん (男性/51歳/会社員) 夢のような一年間の締め括り、映画ファンにとっては、「桃源郷」のような授賞式でした。式典開幕時の優秀作品賞グループ毎の入場から心拍数が上がり、テンションがマックスになってしまいました。完成披露試写会や初日舞台挨拶で、有名俳優達を何度も見ていますが、この会場での彼等、彼女等は、華やかですが、緊張感をまとっているように見えました。 |
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