第10回日本アカデミー賞優秀作品一覧に戻る
日時: 1987(昭和62)年2月19日(木)
場所: 東京プリンスホテル
司会: 武田鉄矢/名取裕子

優秀作品賞
最優秀賞/優秀賞
(C)東映

最優秀作品賞 「火宅の人」


作家・檀一雄の自らの半生を語ったベストセラー小説を深作欣二監督が映画化。旅を愛し、酒を愛し、女を愛し、自由放奔に生きる男の壮大な浪漫と、その男を巡って巻き起こる様々な人間模様の切なさをみごとに描写。妻と5人の子供を持つ主人公、桂一雄の、新劇女優恵子との情痴と、行きずりの女葉子とのあてのない旅を通して、男の欲望と優しさが生々しく描かれた作品だ。(東映)

優秀作品賞 「植村直己物語」


偉大なる冒険家植村直己氏を偲んで作られた「植村直己物語」。故人の足跡を追って、8ヶ月に渡る海外ロケを敢行。佐藤純彌監督をはじめオールスタッフ、キャストが映画の極限に挑戦し、命を賭けて作られた感動作だ。巨大な自然と戦う探険家を西田敏行が、痛切な想いで夫を見守る公子夫人を倍賞千恵子が夫々熱演。2人の絆を織りまぜながら物語はドラマチックに展開する。(電通=毎日放送)

優秀作品賞 「キネマの天地」


キネマに青春を賭けた女優・田中小春。浅草の活動小屋の売り子から、大部屋女優へ、そして大作映画のヒロインに抜てきされた小春の生活を軸に、昭和初期の活気溢れる活動屋の世界をこの映画で再現。松竹大船撮影所開設50周年を記念して作られた大作だ。監督は、松竹映画に多大な功績を残している山田洋次。当時の松竹の名匠を彷彿させる人々も登場して映画ファンを愉しませる。(松竹)

優秀作品賞 「新・喜びも悲しみも幾歳月」


1957年、今から29年前に大ヒットした、灯台に生きる人々の喜びと悲しみの交錯を描いた作品を、リメイクではなく、新しい現代のドラマとして映画化。木下監督特有のヒューマニズムに溢れた名品である。「二十四の瞳」「楢山節考」をはじめ日本映画史に数々の名作を残した名匠の若々しい演出ぶりには深い敬意を表さねばならない。(松竹=東京放送=博報堂)

優秀作品賞 「人間の約束」


鬼才吉田喜重監督が、「戒厳令」以来、実に12年振りにメガホンをとった作品。テーマは、高齢化社会の持つ様々な問題と安楽死。吉田監督独自のクールな視点で、誰もが身近な問題として考えなければいけない現実を訴えた。老夫婦の愛情を通して、家族のあり方、人間のあり方をスリリングなタッチで描いた問題作だ。(西友〈西武セゾングループ〉=テレビ朝日=キネマ東京)
優秀監督賞
最優秀賞深作欣二「火宅の人」


「道頓堀川」以降「蒲田行進曲」、「上海バンスキング」と作品の幅に広がりを見せ、底知れぬ力量を発揮している深作監督。昨年の「火宅の人」は、映画化を考えてから10年の歳月を経て完成させた作品だ。原作の構成を大胆に入れ変え、また新しいエピソードを挿入する事によって真の浪漫人の精神をみごとに描き切った。深みのあるその演出は、みごとという他ない。(1930年 茨城県)
優秀賞市川崑「鹿鳴館」


「こころ」「おはん」「細雪」「ビルマの竪琴」など、雅やかな日本の格調美の演出には定評がある。「鹿鳴館」は、『金閣寺』(映画題名「炎上」)に次いで2度目の三島作品の映画化であるが、原作の持つ華麗な構成と溢れる詩想を独自の映像感覚で再構築して成功している。斬新な作風で戦後の日本映画を常にリードし続けたベテランで、日本が誇る名匠である。(1915年 三重県)
優秀賞佐藤純彌「植村直己物語」


「未完の対局」「空海」などの大作を手がけてきた佐藤監督だが、「植村直己物語」でまたスケールの大きな感動を見せてくれた。あくまで正攻法で描く力強いその演出は、単調になりがちな風景の中で、自然を愛しながら格闘する人間をドラマチックに見せている。マッキンリー、北極、モンブラン、ヒマラヤ、エベレストとロケの極限に挑戦した情熱的な映画作りには頭が下がる。(1932年 東京都)
優秀賞山田洋次「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」「キネマの天地」


「二階の他人」で監督デビューして以来、喜劇と人情劇を撮り続けている。大ヒットシリーズ「男はつらいよ」も昨年の“柴又より愛をこめて”で36作を数えるが、通俗に堕さず高水準を保ち続け、少しも息切れしていない。その語り口はますます鮮やかになってきており、大作「キネマの天地」でも、随所に散りばめられた笑いと涙は、まさに円熟した味わいがある。(1931年 大阪府)
優秀賞吉田喜重「人間の約束」


「人間の約束」は「戒厳令」以来、実に12年ぶりにメガホンを取った作品だ。老人問題、そして安楽死という社会性の強いテーマに真向から挑んでいる。あくまでも冷徹な眼と客観的態度をくずさず、硬質で鋭利なトーンは、かつて「エロス+虐殺」等で見せた映像的に特徴づけられた独特の演出に加え、一層厳しさを増したそのユニークな作風を示したものであり、見事な出来ばえである。(1933年 福井県)
優秀脚本賞
最優秀賞神波史男/深作健太「火宅の人」


「新・仁義なき戦い」「総長の首」など任侠ものを数多く手がけてきた神波史男。深作監督とは、デビュー作からの付き合いである。深作監督が原作の魅力に引かれ、念願の映画化が叶った「火宅の人」は“桂一雄”という無頼奔放の浪漫派作家の人間の本質に迫り、情緒ある深みを醸し出した。(1934年 東京都)(1930年 茨城県)
優秀賞井上ひさし/山田太一/朝間義隆/山田洋次「キネマの天地」


「キネマの大地」に描かれた人間群像。鋭い人間洞察と人間へのいつくしみに溢れた作品として、広い年齢層からの支持を得た。(1934年 山形県)(1934年 東京都)(1940年 宮城県)(1931年 大阪府)
優秀賞木下惠介「新・喜びも悲しみも幾歳月」


計算しつくされたカットを脚本の段階で、すでに作り上げてしまう、と名カメラマン岡崎宏三を驚かせた「新・喜びも悲しみも幾歳月」。前作から29年を経て、一変した現代の“灯台職員”の姿を美しい風光の灯台を舞台に、深刻なテーマを軽妙な語り口で進め、やがて、深い感動に観客を導く手法はみごとである。木下監督の分身ともいえる老父の卓抜したオリジナリティも鮮やかだ。(1912年 静岡県)
優秀賞倉本聰「時計 Adieu I'Hiver」


テレビドラマのシナリオ作家として数々の賞を受賞してきた鬼才。今回初めて、自らメガホンを取った作品「時計 Adieul'Hiver」は、長いテレビでの活動で磨きあげた感性を映画に導入し、新しい映像表現を開拓した。ドラマの基本プランとしての自然な日常表現を極めてリアルに描いて、倉本流人間ドラマをみごとに構築し、その実力を大いに発揮している。(1935年 東京都)
優秀賞森田芳光「ウホッホ探検隊」「そろばんずく」


若手映画監督として、1983年の話題作「家族ゲーム」以来、そのユニークな発想と斬新なアイデアとで、映画界にモリタブームを巻き起こした。去年は監督、脚本を兼ねた「そろばんずく」、森田と並ぶヤングシネマの旗手、根岸吉太郎監督と組んだ「ウホッホ探険隊」の2本を手掛けた。脚本家としても、その才人ぶりを発揮。常に気になる存在である。(1950年 東京都)
優秀主演男優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞緒形拳「火宅の人」


「仕事がこんなに楽しくていいのかね、バチが当りやせんかね?」と、「火宅の人」を撮影中に洩らしたという。日本縦断ロケというハードな撮影にもかかわらず、この彼の言葉通り、精力的な演技が光っている。 扮する小説家・桂一雄は実在の人物だっただけに、彼のリアルな演技は主人公とクロスオーバーさせた。魂にゆさぶられながら生きる男の心情を、悲しい程魅力的に演じている。(東京都出身)
優秀賞渥美清「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」「キネマの天地」


昨年で17年目、この「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」は、36作目にあたる。今や不滅のシリーズだ。寅さんが恋をしては破れ、また旅へと出発する。こんな単純なストーリーだが、いつも新鮮な演技で楽しませてくれる。なお、同監督作品「キネマの天地」にも出演。こちらも舞台は下町で、人情味あふれる主人公小春のお父さん役を好演した。(東京都出身)
優秀賞仲代達矢「熱海殺人事件」「道」


昭和29年「七人の侍」で映画デビュー以来、迫真の演技で数多くの大作に出演。威厳ある二枚目役が多いが、「熱海殺人事件」では、ユニークな部長刑事“ くわえ煙草の伝兵衛”を好演。独自のダンディズムを生かした歯切れのよい演技が印象的だった。また「道」では、長距離トラックの運転手に扮し、男と女の深い愛情を表現した。(東京都出身)
優秀賞西田敏行「植村直己物語」


今は亡き冒険家・植村直己氏の足跡を追って8ヶ月に及ぶ苛酷なロケに挑戦した。撮影終了後には、頬はこけ、体重も12kg減っていたという。TVドラマ、CMなどでは、持ち前の明るさでお茶の間を賑わしてくれる彼だが、この作品で、一段と役者としてのスケール感を打ち出し、映画への情熱を切実に感じさせた。(福島県出身)
優秀賞三國連太郎「人間の約束」


家庭からもつまはじきにされ、自分も惚けの症状を負いながら寝たきりの老妻を1人で見守ろうとする――そんなリアルな現実を描いた「人間の約束」。連日 3時間に及ぶメイクで老夫役に徹した彼の演技は、我々の日常にも振りかかってくる問題として、実に生々しかった。その気概に満ちた演技は、観る者に怖しさを感じさせるほどである。(群馬県出身)
優秀主演女優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞いしだあゆみ「火宅の人」「時計 Adieu I'Hiver」


主演した2作共に母親役だった。「火宅の人」では、自由放奔の夫に悩みながら、5人の子供たちと力強く生きる母親を。「時計」では、夫と離婚し、ひとり娘をフィギュアスケートの選手に育てあげようと奮起する母親を熱演。強い女と悲しい女を兼ね備えた独自の魅力で、性格の異なる母親役をみごとに演じ分けている。(大阪府出身)
優秀賞浅丘ルリ子「鹿鳴館」


大作「鹿鳴館」で、華族界の中心となる伯爵夫人を、気品に満ちた演技で演じきった。劇的な3 日間を描いたこの作品で、揺れ動く女性像をみごとに表現。鹿鳴館に乱入する壮士たちの前に立ちはだかった彼女の姿は、そのきゃしゃな体からは想像を絶する程の貫禄に満ちていた。今回が日本アカデミー賞初受賞とは信じられない日本映画界の大ベテランである。(満州国出身)
優秀賞岩下志麻「極道の妻たち」「鑓の権三」


“魔性”という言葉にふさわしい雰囲気を持った女優だ。優美な中にも、激情的な女の狂気を感じさせる。「鑓の権三」は、夫君篠田監督とともに、「心中天網島」以来、2度目の近松文学に挑戦したものだ。その映像美の中で、美しくも妖しい魔性の魅力を充分に放った。また、「極道の妻たち」でも、劇的な女の生きざまを貫禄溢れる演技で熱演した。(東京都出身)
優秀賞倍賞千恵子「植村直己物語」「旅路 村でいちばんの首吊りの木」「離婚しない女」


「男はつらいよ柴又より愛をこめて」をはじめ、「植村直己物語」、「旅路~村でいちばんの首吊りの木」、「離婚しない女」と、連続4作に出演し、実に多彩な活躍をみせた。人情味ある優しい女から、愛に全てを燃やす情熱的な女までみごとに演じ、大女優の器の大きさを遺憾なく発揮した。「離婚しない女」では実妹倍賞美津子との共演でも話題を集めた。(東京都出身)
優秀賞松坂慶子「火宅の人」「波光きらめく果て」


美人女優というと、常に引き合いに出される松坂慶子。もちろん、その美貌は言うまでもないが、演技派女優としても、この日本アカデミー賞の最多獲得記録を誇る実力の持ち主だ。昨年は「火宅の人」、「波光きらめく果て」に出演。愛に燃えながらも、ひたむきに生きる大人の女を、情感溢れるしっとりとした演技で楽しませてくれた。(東京都出身)
優秀助演男優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞植木等「祝辞」「新・喜びも悲しみも幾歳月」


持ち前のユニークなキャラクターに渋味も増して幅の広い役柄で活躍中だ。木下監督流の笑いと涙を誘う「新・喜びも悲しみも幾歳月」で、一人寂しく老後を送りながらも息子夫婦に暖かく見守られる父親役を好演。嫌味のない演技と、軽やかな存在感で、若い人たちにも絶大な支持を得ている。「祝辞」の、男やもめ役も、彼ならではの味を出していた。(愛知県出身)
優秀賞鹿賀丈史「キャバレー」


劇団四季時代に舞台で一躍脚光を浴び、1980年「野獣死すべし」で、スクリーン・デビュー。野性味溢れる風貌と重厚な演技で、デビュー当時より注目を集めた。以来、TV、映画等で、様々な役をこなしている。昨年の「キャバレー」では、冷酷で筋金入りのヤクザに扮し、過去の傷を背負い、現実をクールに直視する男をドラマチックに演じた。(石川県出身)
優秀賞柴田恭兵「道」「野蛮人のように」


彼もまた舞台出身だけあって、その軽快な身のこなしには芸域の広さを感じさせる。はにかんだような笑顔が印象的で、若い女の子たちの間で、理想の男性としても人気が高い。薬師丸ひろ子のパートナーで「野蛮人のように」に出演。また「道」では、ベテラン仲代達矢と共演した。喜劇からシリアスな演技まで幅広くこなせる柔軟な感性の持ち主である。(静岡県出身)
優秀賞すまけい「キネマの天地」


この人の長い俳優歴は、アングラ劇から始められた。演技者として認められていたにもかかわらず、1972年に活動を停止。当時から彼の実力を評価していた井上ひさしに説得されて1985年のこまつ座上演作品「日本人のへそ」で復帰。以来、地味ながらも魂の入った演技で活躍。昨年は「キネマの天地」に出演。井上作品を語る上で重要な人物である。(北海道出身)
優秀賞世良公則「極道の妻たち」「十手舞」「雪の断章-情熱-」


萩原健一、岩城滉一らと同じく、彼もまたロック・シンガーから役者へと進出した人のひとり。1984年、「Wの悲劇」で、その実力を認められ、役者としての地位を確立。今でも音楽業を続ける傍ら、演技力にも磨きをかけ、昨年は「雪の断章-情熱-」、「十手舞」、「極道の妻たち」と連続して出演。作品にも恵まれ、安定した活躍をみせた。( 広島県出身)
優秀助演女優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞原田美枝子「火宅の人」「国士無双」「プルシアンブルーの肖像」


15歳でスクリーン・デビュー以来、新しいタイプの演技派女優として注目され続けている。「火宅の人」における緒形拳粉する主人公の愛人役では、微妙な心情を表現した演技で、いしだあゆみ、松坂慶子と並んで、トップ女優の実力をみせつけた。「国士無双」、「プルシアンブルーの肖像」でも活躍。ひときわ輝く、質の高い演技を披露した。(東京都出身)
優秀賞大竹しのぶ「波光きらめく果て」


1979年、野村芳太郎監督の名作「事件」でも松坂慶子との共演だった。大竹が演じた愛に執念を燃やす妹役は今でも記憶に新しい。再び「波光きらめく果て」で、松坂と共演。またしても、松坂・大竹の愛憎物語が展開される。無邪気でひたむきな女が、時にぞっとするような狂気を漂わす。そんな女の心情をスリリングに演じている。彼女ならではの適役だった。(東京都出身)
優秀賞かたせ梨乃「極道の妻たち」


見事なプロポーションでモデルやタレントとして活躍中。TVドラマや映画などでの活動もあったが、今回「極道の妻たち」で、初めての大役にチャレンジ。その体当りな演技が認められ、女優としての新境地を開いた。極道の妻である姉を拒みながらも、自分も極道を愛してしまうという役を苦手な関西弁をみごとクリアして熱演した。(東京都出身)
優秀賞紺野美沙子「姉妹坂」「新・喜びも悲しみも幾歳月」


1978年、女子高校在学中に、コマーシャルのマスコット・ガールとして芸能界にデビュー。スレンダーな肢体と清楚な雰囲気で人気を集め、翌年には西村潔監督「黄金のパートナー」で、スクリーン・デビューをした。以来、TVドラマ、映画などでも活躍。昨年は「姉妹坂」、「新・喜びも悲しみも幾歳月」での落ちついた演技で好評を得た。(東京都出身)
優秀賞美保純「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」「キネマの天地」


「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」、「キネマの天地」と、山田洋次監督作品で大活躍をみせた。「男はつらいよ」は、今回で4回目の出演。彼女も、毎年盆と正月に日本中を賑わす“寅さんファミリー”の1人になりつつあるようだ。「おすまし女優にはなりたくないの」と、キュートなルックスで語る彼女は、これからも多くの人に愛される女優になるだろう。(静岡県出身)
優秀音楽賞
最優秀賞井上堯之「火宅の人」「離婚しない女」


1960年代のGSブームではザ・スパイダースのメンバーとして活躍。その後、自らのバンドを率いて沢田研二のバックを務める一方で、TVドラマ「太陽にほえろ」の主題歌をはじめ作曲家、アレンジャーとしても、その功績は大きい。映画音楽も数多く手掛け、今回も「火宅の人」、「離婚しない女」の2作を残した。現代的な叙情溢れる作風が好評である。(1941年 兵庫県)
優秀賞加藤和彦「幕末青春グラフティRonin・坂本竜馬」「野蛮人のように」


フォーク・クルセダーズでデビュー。サディスティック・ミカ・バンド、ソロ活動と長い音楽歴を持つ。常に時代を先取りした高感度な作品を発表。その洗練された音創りには定評がある。「幕末青春グラフィティRonin・坂本竜馬」では、日本のビッグ・アーティストの歌を全篇にちりばめた構成で話題を呼んだ。「野蛮人のように」でも、都会的なセンスのよさを発揮した。(1947年 京都府)
優秀賞坂本龍一「子猫物語」


音楽ファンから若い女の子たちにまで、絶大な支持と人気を誇る“教授”こと坂本龍一。1983年、大島渚監督「戦場のメリークリスマス」では、出演と同時に音楽監督も兼ね、その独特な演技と先鋭的な旋律で世間を賑わした。「子猫物語」は、それに続く2度目の音楽監督である。ファンタスティックな音創りで、映像にイメージ豊かな立体感を与えて、効果をあげた。(1952年 東京都)
優秀賞武満徹「鑓の権三」


現代音楽家として著名な武満徹だが、映画音楽歴も長く、1956年の故中平康監督作品「狂った果実」以来、日本映画史上に残る多くの名作を手掛けている。一昨年は、黒澤明監督の「乱」で、その実力を高く評価された。連続しての受賞となる「鑓の権三」では、日本の古典文学における美意識を音で追求した。(1930年 東京都)
優秀賞山本直純「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」「キネマの天地」


クラシック音楽の指揮者としての功績は大きい。ポピュラー音楽においての活躍も目覚ましく、映画音楽も数多くこなしている。最近では「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」、「キネマの天地」を手掛けた。日本人の心にフィットする、暖みのある作風で好評を得た。大らかな人柄は親しみやすく、映画ファンからの支持も大きい。(1932年 東京都)
優秀撮影賞
最優秀賞木村大作「火宅の人」


大作・話題作にはかかせぬ撮影監督としてその実力は広く映画界に知られている。日本カデミー賞では第1・4・5・6・9回の受賞歴を誇る。今回の受賞対象作となった「火宅の人」は、「復活の日」以来の深作作品。憧れの京都撮影所作品ということもあって、その張り切り様は、この作品の成果を予感させるものだった。「男女の心の微妙な綾を詩情豊かに映像化」する企ても成功した。(1939年 東京都)
優秀賞小林節雄「鹿鳴館」


前回に引き続き市川監督作品での受賞である。市川監督のこの人に寄せる信頼は、古くは「野火」「雪之丞変化」から前作「ビルマの竪琴」をへて、今回の受賞作「鹿鳴館」に至るまで一貫したものだ。一朝一夕には出来ない映画の現場での相互信頼の厳しさは、それ自体が美しく映画的と言える。ベテランならではのカメラの冴えが堪能出来る、華麗な仕事ぶりである。(1920年 静岡県)
優秀賞並木宏之/阿久津悦夫「植村直己物語」


並木氏は、電通出身でドキュメンタリー作品が多いカメラマンである。「植村直己物語」でも、ドキュメンタリー畑で鍛えたタッチが映像に横溢していて素晴しい。阿久津氏は、山岳カメラマンとして知られ、今回、特に請れて、山岳撮影班を担当した。劇映画への参加はこれがはじめて。故植村氏と並ぶ山のプロでもある。(1937年 東京都)(1938年 東京都)
優秀賞宮川一夫「鑓の権三」


「撮影の神様」との形容は、誰も異議のないところであり、日本映画の歴史がそのまま映像美の中に息づいている。溝口健二監督作品「雨月物語」「山椒太夫」あるいは黒澤明監督の「羅生門」等々の映像が、今も若き映画ファンの胸をときめかせていることは、映画の持つ普遍性、力強さを感じさせ、感動的である。受賞作「鑓の権三」もこの超ベテランの尽きぬエネルギーを再確認させた。(1908年 京都府)
優秀照明賞
最優秀賞増田悦章「火宅の人」


五社英雄監督との仕事が印象的だったが、今回は深作欣二監督作品「火宅の人」での受賞である。濃密な色彩を生み出す照明設計で、情念のほとばしりを表現し、十二分に独自のスタイルを発揮した。大正・昭和期の日本という時代を描写する色艶は、前作「櫂」での成果を受けて、この作品にもしっかりと受け継がれている。(1931年 京都府)
優秀賞下村一夫「鹿鳴館」


「ビルマの竪琴」での仕事は、市川崑監督から高い評価を得、受賞作「鹿鳴館」はその信頼に応える優れた作品となった。照明歴40数年、照明一筋の人である。代表作に「あゝ野麦峠」、その他「華麗なる一族」「いのちぼうにふろう」「なつかしき笛や太鼓」などがある。誇り高き活動屋、職人に徹して生きた人のみがもつ風格を漂わす人である。(1921年 神奈川県)
優秀賞川島晴雄「植村直己物語」


第7回の「南極物語」に続く受賞作はアラスカのマッキンリー山単独登頂に成功し、消息を絶った冒険家の物語「植村直己物語」。厳しい自然と闘いながらの作品であった。今回も高山病順応トレーニングを兼ねた26日間のキャラバンも含め、激しく辛い仕事であったろうことは想像に難くない。風貌はそのまま探検家のそれである。(1934年 東京都)
優秀賞佐野武治「鑓の権三」


近松ものの悲劇の様式美を見事に導き出す卓越した照明技術が感動を呼んだ「鑓の権三」。最優秀照明賞に輝いた「瀬戸内少年野球団」、そして前回の「乱」に続いての連続受賞である。豊かな想像力と確かな技術が、映像の深みとなって観るものを圧倒する。映画作品における照明の役割と意味についての問いかけがこの人の仕事から発せられているように思われる。(1930年 東京都)
優秀美術賞
最優秀賞村木忍「鹿鳴館」


映画美術界の重鎮であり、創造性に満ちた美術の美しさは、芸術の名に値するものである。過去の受賞作「細雪」「おはん」に引き続き、今回の「鹿鳴館」も市川崑監督とのコンビ作。両者の芸術性と、映画的創造性が、優れた美的世界を創出している。知性と娯楽性がみごとに融け合った「鹿鳴館」から観客が受ける深い感動に果した功績の大きさには計り知れないものがある。(1923年 東京都)
優秀賞粟津潔/西岡善信「鑓の権三」


「はなれ瞽女おりん」をはじめ、篠田正浩監督作品の美術ではすでにお馴染みの粟津潔。西岡善信は「鬼龍院花子の生涯」「陽暉楼」を含め、映画美術の様式美を築き上げた。このベテラン二人が結集して創造した近松文学の世界は、古典美術への両者の造詣の深さに裏打ちされた素晴しいものだった。(1929年 東京都)(1921年 奈良県)
優秀賞今村力「ア・ホーマンス」「キャバレー」


「キャバレー」「ア・ホーマンス」の美術は、ハードボイルド・タッチの作品世界にふさわしく壮大なスケールの中にも都会の猥雑な雰囲気を漂わせ好評を得た。「キャバレー」では、1950年代のニューヨークのブルックリンを彷彿とさせ、バーやキャバレーのひしめく街の気分を。「ア・ホーマンス」では近未来的都市風景を表現した。(1943年 東京都)
優秀賞佐野義和「火宅の人」


東映時代劇セットで培ったディテールに対する繊細な目配りとスケール感のある構成技術は、現代風俗を描いてもすみずみまで輝いている。前回の受賞作「魔界転生」とは趣きを異にするものの、今回の「火宅の人」では昭和30年代の日本の情感を漂わせて、失われた何かを観るものに思い起こさせた。この人の美術の基礎には、長年の経験と教養が生きているのである。(1939年 大阪府)
優秀賞出川三男「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」「キネマの天地」


山田組のスタッフとして“寅さん”シリーズの美術を初期段階から担当してきた。大学時代から映画の美術を志し、アルバイトをへて松竹に入社。以来美術一筋である。今回「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」「キネマの天地」の二本の山田監督作品で受賞となり喜びもひとしお。資料収集等、困難を極めた「キネマの天地」での美術は完成度の高い、みごとなものである。(1936年 神奈川県)
優秀録音賞
最優秀賞橋本文雄/橋本泰夫「植村直己物語」


苗字は同じだが、血縁はない。橋本文雄氏は、大映京都以来、220数本の作品歴を持つベテランで、この「植村直己物語」では、若い橋本泰夫氏が現場で録り上げた音の仕上げを行なった。録音も含め、現場のスタッフへの関心の高まりが嬉しいが、まだ米映画の音づくりには学ぶべき所多しと謙虚である。(1928年 京都府)(1944年 宮崎県)
優秀賞大橋鉄矢「鹿鳴館」


「東京オリンピック」からのコンビを組む市川作品「鹿鳴館」での音づくりが評価された。受賞は同じく市川作品「細雪」につぐ二度目。三島由紀夫の知的に様式化された台詞がどのように観客の耳に届くかは、作品の構成上、重要なファクターである。そうした市川監督の要請に見事応える形となった、美的で繊細なサウンドはこの賞にふさわしい。(1927年 群馬県)
優秀賞小野寺修「ウホッホ探検隊」「時計 Adieu I'Hiver」「野蛮人のように」


気鋭の登場である。オーディオが激しく進歩を遂げた時代に鍛えられた感性に期待が寄せられている。「ウホッホ探険隊」「時計 Adieul'Hiver」「野蛮人のように」が受賞対象作品。1970年に日活入社。1979年「赤い暴行」で録音チーフとなり、以後「家族ゲーム」「メインテーマ」「TANTANたぬき」等、若手監督との作品で注目される。ニュー・ウェーブの到来と言えそうだ。(1949年 宮城県)
優秀賞鈴木功/松本隆司「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」「キネマの天地」


松竹録音部に籍を置く二人の、山田組での仕事は長く、この二人に寄せる山田監督の信頼は厚い。「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」「キネマの天地」は共に山田作品であり、ここでも、録音の鈴木、調音の松本のコンビネーションは、完壁な効果をあげている。(1927年神奈川県)(1928年 東京都)
優秀賞吉田庄太郎「旅路 村でいちばんの首吊りの木」「鑓の権三」


この賞の常連のひとりとして、昨年も大活躍だった。「旅路 村でいちばんの首吊りの木」「鑓の権三」というテーマも時代も違う二本の作品を、生々しく録り上げたのはベテランの腕というものだ。映画は光と影とそして男の芸術である。効果音や音楽が、映画の成否に関わる要素として、広く認識されている昨今、活躍が期待される。(1925年 東京都)
優秀編集賞
優秀賞井上治


長年編集業務に携わった実績の上に立ち、異色作品“海と毒薬”において、編集技術が高く評価され、その功績に対して贈られる。
優秀外国作品賞
最優秀賞バック・トゥ・ザ・フューチャー


製作総指揮のスチーブン・スピルバーグと監督のロバート・ゼメキスがコンビを組んだ「1941」「ユーズド・カー」に続く作品。タイム・マシンに乗って 1955年にタイム・スリップしてしまった少年が高校生時代の自分の両親に出会って繰り広げるコメディータッチのSF映画だ。30年前というまだ記憶に残っている時代の、目を瞠るようなディテールの再現もすばらしい。(UIP)
優秀賞愛と哀しみの果て


20世紀初頭、ヨーロッパ諸国の植民地化が進むアフリカへ渡った女の愛と哀しみに彩られた日々を、美しいケニアの大自然をバックに華麗な映像で描いた話題作。アイザック・ディネーセンの回想録「アウト・オブ・アフリカ」が原作で、監督は、10年前から映画化を考えていたというシドニー・ポラック。数多くのラヴ・ストーリーを撮ったポラック監督の集大成とも言える完成度の高い作品だ。(UIP)
優秀賞エイリアン2


SFホラーの傑作「エイリアン」の続篇。監督は、「ターミーネーター」のジェイムズ・キャメロン。公開と同時に全米で大ヒット、多くのホラーファンを熱狂させた。監督自ら脚本も手がけ、スピード感あふれる直線的な物語の展開とツボを心得た演出は、ストーリーテラーとしても超一流だ。また、小道具にまで気をくばり、凝ったSFXの映像もすばらしい。(FOX)
優秀賞カラーパープル


SFXを撮り続けているスチーブン・スピルバーグ監督が初めて社会派にチャレンジして、昨年全米で最も話題を呼んだ作品。人種差別の残る今世紀初めのアメリカ南部を舞台に、一人の黒人女性が自我に目覚め自立してゆくこの作品は、差別問題を正面から捉えながら、主人公の女性を通して、スピルバーグ監督の人間と生命に対する愛とやさしさの哲学がみごとに描かれている。(ワーナー)
優秀賞コーラスライン


ブロードウェイの明日のスターを夢見る若きダンサー達の熾烈なオーディションの模様を描いたミュージカル映画。1975年からスタートし現在も上演中の同名舞台劇の映画化作品で、監督は「ガンジー」のリチャード・アッテンボロー。華やかなダンスシーンのすばらしさを、オーディションを受ける一人一人の素顔を浮き彫りにしていく人間のドラマによっていっそう盛り上げている。(松竹富士)
新人俳優賞
優秀賞清水宏次朗「ビー・バップ・ハイスクール」


「ビー・バップ・ハイスクール」シリーズでの加藤浩志役で一躍脚光を浴びた彼だが、1984年に東京音楽祭国内大会でグランプリ、同世界大会で作曲賞を受賞するなど、先に音楽界で実力を認められた人だ。今回のアタリ役で役者としても開花し、音楽活動とともに多方面での活躍が目覚しい。徹役の仲村トオルと共に、早くも3作目が、今年の3月に公開される。(東京都出身)
優秀賞仲村トオル「ビー・バップ・ハイスクール」


清水宏次朗とともに「ビー・バップ・ハイスクール」シリーズで人気を集めた。彼演じるツッパリ高校生中間徹は、まさに適役で、身長184cm、体重 72gのダイナミックな体で演じるアクション・シーンは、ハラハラドキドキの迫力あるものだった。手に負えない不良だが、意外に正義感ある、涙もろいツッパリ少年を新人らしいパワー溢れる演技で熱演した。(東京都出身)
優秀賞柳葉敏郎「南へ走れ、海の道を!」


パフォーマンス集団一世風靡SEPIAのメンバーとして、その男臭い華麗な身のこなしには定評がある。TVでは、ドラマやバラエティ番組で、すでに活躍中だが、今回「南へ走れ、海の道を!」で映画初出演。ハードなアクションタッチのこの映画に、彼のキャラクターはすんなり溶け込んだ。今後は映画でも多彩な活動をみせそうだ。(秋田県出身)
優秀賞有森也実「キネマの天地」


松竹大船撮影所開設50周年を記念して作られた山田洋次監督の大作「キネマの天地」で、渥美清、倍賞千恵子、松坂慶子ら、大勢の豪華キャストと並んで、みごと主役の田中小春を演じた。物おじしないハツラツとした演技は、新鮮な感動を与えた。有森の抜てきは、劇中のヒロインともだぶり、そのストレートな演技と共に映画に夢を与えた。(神奈川県出身)
優秀賞黒木瞳「化身」


作家・渡辺淳一のベストセラー作品「化身」を、東陽一監督が映画化。藤竜也扮する主人公・文芸評論家の秋葉と知りあい、彼の好みにあう洗練された女性へと育てあげられてゆく霧子役を演じた。宝塚の娘役出身だけあって、その“化身”していく様子を、新人らしからぬ演技でみごとに表現。霧子同様、女優・黒木瞳としても一層魅力的になったようだ。(福岡県出身)
優秀賞斉藤由貴「雪の断章-情熱-」


ベストテン歌手として、数々のヒット曲を生み出し、そのアイドル性はもちろん、本格的に女優としても活動。「雪の断章-情熱-」では、ヒロイン・伊織役で、少女が大人の世界に踏みこもうとする微妙な心のゆらめきを表現。去年はNHKの連続ドラマ小説「はね駒」でも驚異的視聴率を獲得。女優としても一段とグレード・アップ。今後の活躍が期待される。(神奈川県出身)
特別賞企画賞
優秀賞“海と毒薬”制作委員会/遠藤周作/大塚和/熊井啓/瀧島恵一郎「監督」


企画に10年もかけ、予算的にも興行的にもメドが立たない中で、大変な努力と苦労で映画化を実現させ、昨年発表された作品の中でも異色作として大きな話題を提供した功績による。
話題賞

作品部門:「子猫物語」


俳優部門:とんねるず