第7回日本アカデミー賞優秀作品一覧に戻る
開催日: 1984(平成-4)年2月16日(木)
場所: 東京プリンスホテル
司会: フランキー堺/沢田亜矢子
優秀作品賞
最優秀賞/優秀賞
(C)東映・今村プロダクション

最優秀作品賞 「楢山節考」


今村節“人間の生と性”。カンヌでグランプリに輝く日本を代表する作品だ。小さな日常の積み重ね、ちりばめられた自然の営みのシーン。厳しい自然の中では人もまた、単なる動物でしかないことが自ずと伝わってくる。姥捨て伝説を扱いながら、暗さ、悲しさとしてではなく、大らかさとして描ききった。今村監督の集大成ともいえる作品だ。(東映=今村プロ)

優秀作品賞 「家族ゲーム」


題材はあくまで平凡な“ホームドラマ”。落ちこぼれ受験生と無骨な家庭教師の奇妙なコミュニケーションを軸に風変わりで、大真面目な家族がくり広げるすれ違いがコミカルに、しかし決してドタバタに終わらず展開していく。新鋭森田監督ならではの、ライトタッチで描かれた、重い内容の新しいタイプの傑作だ。(にっかつ撮影所=NCP=ATG)

優秀作品賞 「細雪」


この映画に出会い、市川映画の“美”に改めて感嘆した人も多いだろう。「花と染まれ、女たちよ」のコピー通り、美しさを競う女優陣。その美しさに頼ることなく、監督持ち前の新鮮なセンスで華麗なる谷崎文学の世界を完璧なまでの映像で演出、観客をぐいぐいひき込んだ。映画ならではの醍醐味ある作品だ。(東宝映画)

優秀作品賞 「戦場のメリークリスマス」


戦争を語らずして戦争を語った“男騒ぎのする”作品。「戦メリ」という愛称で呼ばれるほど若者の支持を得た。デビッド・ボウイ、坂本龍一、ビート・たけしといった特異なキャラクターを持つ当代の人気者を、映画の一部として使いこなしてしまった大島監督の力量が十分に発揮された。(大島渚プロ=ザ・レコーディッド・ピクチュア・カンパニー)

優秀作品賞 「南極物語」


南極観測犬タロとジロの物語が昨年、日本中の涙を誘った。蔵原監督はじめスタッフの努力の結晶の壮絶な極寒下のロケ。懸命に生きる人間と犬たちの自然との闘いが見事に描かれた。邦画史上第1位の配収を記録し、スタッフ、俳優陣一丸となって、上向きはじめた日本の映画界に拍車をかけた素晴らしい作品だ。(フジテレビ=学研=蔵原プロ)
優秀監督賞
最優秀賞五社英雄(陽暉楼)


「鬼龍院花子の生涯」に続く宮尾文学「陽暉楼」を、さらにその演出の技術に磨きをかけて表現した。激しくも美しく、もの悲しい女たちの世界が彼の手にかかると魔法のように見事に写しだされる。俳優陣、そしてスタッフの人びととのチームワークもしっかりと、昨年最もセンセーショナルな映画作りに成功した。(昭和 4年 東京都)
優秀賞市川崑(細雪)


「こころ」「ビルマの竪琴」「おとうと」「横溝正史シリーズ」など、日本の映像美を撮らせては、最高の人だ。芦屋の格調高く、雅やかな世界「細雪」を豪華絢爛、華麗に演出し、期待に応えてくれた。谷崎文学の匂いたつ美しさを、ベテランならではの細かいところにまでいき届いた心使いで、市川流谷崎に完璧に仕上げた。(大正 4年 三重県)
優秀賞今村昌平(楢山節考)


今村監督は人間を描く。「日本昆虫記」「神々の深き欲望」「復讐するは我にあり」「ええじゃないか」。代表作を列挙しただけでその精神が見いだせる。徹底したリアリズムで厳しい自然の中での人間の営みを描いた「楢山節考」は世界中で絶賛をあびた。自ら、予告編まで作ったほどの熱意が画面いっぱいに感じられ、彼らしさを出せた昨年といえる。(大正15年 東京都)
優秀賞大島渚(戦場のメリークリスマス)


20代でデビュー、「青春残酷物語」「日本の夜と霧」など衝撃的な作品を次つぎと発表。そして「愛の亡霊」ではカンヌ・グランプリを獲得した。昨年の「戦場のメリークリスマス」もまた、世界中に話題をふりまいた。反骨の作家精神をつらぬく姿勢をもって、若者の間にもっとも人気のある人物の1人でもある。(昭和 7年 京都府)
優秀賞森田芳光(家族ゲーム)


若手ナンバー1の名に恥じない「家族ゲーム」で映画の新時代へまた一歩進んだ。“大画面では地を見せたくない。役者は嘘をついて欲しい。”という彼の姿勢が、軽妙なタッチで描いたヘビーなこの新・ホームドラマで大輪の花を咲かせた。「の・ようなもの」以来、好調続き。これからどう年輪を重ねていくか楽しみな監督だ。(昭和25年 神奈川県)
優秀脚本賞
最優秀賞高田宏治(陽暉楼)


昭和38年の「柳生武芸帳」でのデビューから、「眠狂四郎」など時代物を得意とする一方、「緋牡丹博徒」「やくざ戦争・日本の首領」など任侠もので、男のアクションロマンの作風を樹立。一昨年の「鬼龍院花子の生涯」、昨年の「陽暉楼」と、任侠ものにも似た女の情念、執念の世界は最も彼の才能を発揮できる場となった。(昭和 9年 大阪府)
優秀賞今村昌平(楢山節考)


今村作品の集大成といえる「楢山節考」を監督自ら、シナリオのペンを執った。一作家として、レンズを通して、あらゆる方向から注ぎ込んだ情熱がこの作品を、独特のリアリズムで人間の本質、自然の営みを描いた完璧なものにした。シナリオの完成度の高さが、作品と共鳴し助けたといっても過言ではないだろう。(大正15年 東京都)
優秀賞大野靖子(居酒屋兆治)


原作さえ面白ければ、すべて得意なジャンルと語るこの人に、昨年の「居酒屋兆治」は格好の題材だったに違いない。人と人の心のヒダを優しくくすぐるシナリオ・ワークは水を得た魚のようにすばらしく勢いがあった。NHKの大河小説、日中合作の大作「未完の対局」「櫛の火」など心に残る多くの名作を手掛けてきた作家ならではの仕事振りを見せてくれた。(昭和 3年 東京都)
優秀賞田中陽造(魚影の群れ)


手がけてきた作品は「地獄」「ツィゴイネルワイゼン」「仕掛人・梅安」「女教師・汚れた放課後」など、その守備範囲は驚くほど広い。そして昨年の「魚影の群れ」。質の高い、濃い味わいのある脚本で、すぐれた佳作をさらに奥の深いものにした。彼のズバ抜けた構成力、映像に対する真摯な態度が作品に表われ、盛りあげるのだろう。(昭和14年 東京都)
優秀賞森田芳光(家族ゲーム)


新・映画とでも表現したい森田作品の飄々とした面白味はやはり、自らシナリオまで手がけたからこそ生命を持ったのかもしれない。単に面白さだけで終わらず、恐しさを残してエンドマークとなるのも、あらかじめしっかりと彼の手によって組み立てられているからこそだったのだろう。アドリブのように思えてしまう生きたセリフは最高のできだった。(昭和25年 神奈川県)
優秀主演男優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞緒形拳(楢山節考/陽暉楼/魚影の群れ)


脂ののりきった実にいい役者だ。この賞にも、おなじみの人でもある。「鬼畜」「復讐するは我にあり」「富獄三十六景」そして、昨年の「楢山節考」「陽暉楼」「魚影の群れ」と全く違った性格づけされた役に、なりきってしまう。各々の映画の中で、鍵ともいえる重要なシーンを鮮やかに印象づけた。(東京都出身)
優秀賞加藤嘉(ふるさと)


「ふるさと」で昨年はモスクワ映画祭最優秀男優賞も獲得。長年連れ添った妻を亡くして、急にボケてしまう老人を淡々と演じた。昭和32年にデビューしてから、銀幕で、ブラウン管で活躍、正に演技が熟してきたといえる。彼独特の円熟味あふれるキャラクターは日本映画に欠かせない存在だ。(東京都出身)
優秀賞松田優作(家族ゲーム)


「人間の証明」「蘇える金狼」など動のイメージを持っていた彼も、男の乾いた味の出せる役者となった。森田監督のライトタッチの新しいタイプの作品「家族ゲーム」で、一風変わった普通の家庭教師を好演。アドリブの様なセリフまわしを絶妙にこなし、飄々とした役者ぶりで映画のカラーにぴったりとはまった。(山口県出身)
優秀賞森繁久彌(小説 吉田学校)


昭和22年「女優」での映画デビュー以来、彼の芸を愛し、涙し、腹をかかえて笑った観客は数知れない。実名の次つぎと登場する「小説・吉田学校」では故吉田茂になりきり、またしても観客をうならせた。また、当協会の副会長をはじめ、多くの要職を務める日本の映画界の重鎮ともいえる存在だ。(大阪府出身)
優秀賞渡瀬恒彦(泪橋/時代屋の女房)


一見、幸福そうな家庭を持ちながらも、現実にシラケ、何かにじっと耐えている男。何とも暖かい表情をたたえている“時代屋”の主人。昨年の「泪橋」「時代屋の女房」の 2作品に主演、いわば男の光と影の世界で多くの人々に感動を与えた。いま、最ものっている役者のひとりといわれる彼が、見事に期待に応えてくれた。(兵庫県出身)
優秀主演女優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞小柳ルミ子(白蛇抄)


映画初出演の「誘拐報道」では最優秀助演女優賞受賞。生活感あふれる役柄をこなしたかと思えば、昨年の「白蛇抄」ではエロチシズムの世界を艶じた。伊藤監督に見いだされた女優の蕾が開いたといえる。歌い手としてもベテラン実力派ならば、宝塚で基礎を固めているだけあって女優としても実力派。ひたむきな彼女の芸への姿勢がうかがえる。(福岡県出身)
優秀賞池上季実子(陽暉楼)


昨年もっとも活躍した女優のひとりが彼女。「はだしの青春」でデビューし、その後、舞台、テレビ、映画と、女優として磨き続けてきた芸が、一挙に花開いたといっても過言ではない。宮尾登美子の「陽暉楼」での、女の情念、執念の浪々たる世界を華麗に熱演。育ちのよさから出る美しさと、役への情熱で観客を魅了した。(ニューヨーク出身)
優秀賞坂本スミ子(楢山節考)


歌手としても、役者としてもすばらしい素質を持った人だ。今村監督に、そして作品にホレこんで熱演。前歯を抜いてまでの「楢山節考」でのフケっぷりには観客を驚かせた。「悪名シリーズ」や「人類学入門」など映画も長く、ブルーリボン賞や映画記者賞など数多くの賞歴がある。“楢山参り”のクライマックス、鬼気せまる演技は正に白眉ものだった。(大阪府出身)
優秀賞田中裕子(天城越え/男はつらいよ 花も嵐も寅次郎)


独自のキャラクターを保ちながらも、女優としての深さ、幅広さを増していく。一昨年の助演女優賞に続き今回の受賞となった。「男はつらいよ、花も嵐も寅次郎」では、ちょっぴりセクシーで可愛い現代っ娘を、また「天城越え」では、犯人に仕立てあげられる心優しい娼婦と、彼女からひき出される魅力で観客を楽しませた。(大阪府出身)
優秀賞夏目雅子(魚影の群れ/時代屋の女房)


18歳の時にモデルとしてデビュー。昨年の11月に一時休業宣言をするまで、休みなしのスケジュール。しかし、その忙しい中でも一作ごとに実力をつけている女優だ。一昨年の「鬼龍院花子の生涯」で女優としての大きな節を迎え、昨年の「時代屋の女房」「魚影の群れ」と、まったく違うタイプの女を熱演。成長した演技の程を見せた。(東京都出身)
優秀助演男優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞風間杜夫(陽暉楼/人生劇場)


一昨年の「蒲田行進曲」で注目を集めて以来、テレビで映画で、若い女性にもっとも人気のある役者のひとりとなった。昭和51年からつかこうへい劇団に参加、その芸域をどんどん広げていった。昨年は「陽暉楼」「人生劇場」とワキながら含みのある役柄を好演、さらに人気を高めた。昨年、最優秀助演男優賞に輝く。(東京都出身)
優秀賞伊丹十三(家族ゲーム/居酒屋兆治/細雪/迷走地図)


エッセイストとしてキラリと光る知性を知られながら、もっぱらワキにまわって柔軟な演技を見せる彼のキャラクターが昨年も活躍した。「居酒屋兆治」「家族ゲーム」「細雪」「迷走地図」と普通で自然な雰囲気で知的に役をこなせるのは彼をおいて他にいないだろう。観る者の心に残る彼は、曲者役者の感さえうかがえる。(京都府出身)
優秀賞佐藤浩市(魚影の群れ/日本海大海戦 海ゆかば)


新人賞を「青春の門」獲得したのは一昨年。以後、期待通りに、のびのびと育ってくれた。「魚影の群れ」や「日本海大海戦・海ゆかば」で見せた、日本男児を感じさせる骨太な演技で父である名優・三国連太郎離れを見せた。素材の良さに、本人の役づくりへの努力や精神力の強さがプラスされ、荒けずりながら見どころのある役者となった。(東京都出身)
優秀賞田中邦衛(居酒屋兆治/三等高校生/逃がれの街)


「若大将シリーズ」の“青大将”はますます味わいを深める役者となってきた。微妙な演技のタッチは、オツな心意気を見せるが、どこか憎めないワルというユニークなキャラクターは磨きに磨かれ、衰えるところを知らない。昨年の「居酒屋兆治」「三等高校生」「逃がれの街」では、それぞれの作品にひとクセ加えた。(岐阜県出身)
優秀賞ビートたけし(戦場のメリークリスマス)


MANZAIブームにツービートでデビューし、いまや国民的アイドルである“タケちゃんマン”がスクリーンに写しだされると“殺気のある男”になってしまう。「戦場のメリークリスマス」で彼が演じた典型的日本兵ハラ軍曹は、この作品のなくてはならない要であり、ラストシーンで叫ぶ顔の笑顔がこの作品を傑作にした。(東京都出身)
優秀助演女優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞浅野温子(陽暉楼/汚れた英雄)


プライベートでは、結婚という女性にとって人生の大きな節目を迎えた昨年だった。しかし、それを女優としてのコヤシにしてしまった。池上季実子と美を競った「陽暉楼」、オートバイ中心の映画に真紅の花を咲かせた「汚れた英雄」いずれも激しい女を熱演。立体感、透明感のある役者となってきた。次にどう変るか見ものだ。(東京都出身)
優秀賞加藤登紀子(居酒屋兆治)


「おトキさん」が役者としても才能を見せた。“ほろ酔いコンサート”の彼女にとって「居酒屋兆治」は、すっかり居心地のよい場所になってしまったに違いない。フィリピンに、中国に、パレスチナにと、歌の輪を広げながら、役者の基礎である自分自身に磨きをかけていたのだろう。新しいLP「夢の人魚」にもそんな人柄がうかがえる。(満州出身)
優秀賞十朱幸代(魚影の群れ/この子を残して)


スクリーンに、テレビに、舞台にと彼女の顔を見ない日はないほどの売れっ子ぶりだ。お嬢さん役を可愛いらしく演じていたのが、舞台では座長まで務め、ゆるぎない演技力をつけてきた。昨年の「魚影の群れ」や「この子を残して」では、ぐっと生活感のある役をこなし、大物女優の名にふさわしい演技を見せた。(東京都出身)
優秀賞倍賞美津子(陽暉楼/楢山節考)


「楢山節考」「陽暉楼」と、体当り熱演はまことにあっけらかんと大らかで、気持ちがいい。昭和55年には「復讐するは我にあり」でやはり助演女優賞を獲得しているが、あの頃に増して、さっぱりとした円熟味、豊満さが強くなっていくようだ。最近では、テレビ CMなどでもその“いい女”ぶりを発揮し、人気を集めている。(東京都出身)
優秀賞由紀さおり(家族ゲーム)


レコード大賞に輝き“夜明けのスキャット”の美しい歌声で人の心に語りかけた彼女が、ひとたび演技にまわると、なんとも面白い芝居をうってみせる。「家族ゲーム」での非日常的な普通の母親役は、彼女のためにあった、といってもいいほどのできだった。芸達者で、現在、司会をはじめ週3本のレギュラーをこなしている。(群馬県出身)
優秀音楽賞
最優秀賞佐藤勝(陽暉楼/海嶺/せんせい)


この音楽賞になくてはならない顔になってしまった。27歳の時に黒沢監督の「生きるものの記録」の途中で、故早坂文雄氏のピンチヒッターを務め成功をおさめ、以後映画はもちろん様ざまなメディアで大活躍。「陽暉楼」「海嶺」「せんせい」と、話題作をベテランらしく、しっとりとした雰囲気の落ちついたものに仕上げた。(昭和 3年 北海道)
優秀賞池辺晋一郎(楢山節考/OKINAWAN BOYS オキナワの少年)


日本の音をカンヌに、そして世界中に響きわたらせた「楢山節考」。沖縄の哀しみを日本中に奏でた、「OKINAWAN BOYS オキナワの少年」。「佐渡の国鬼太鼓座」など手がけてきた作品は、土の匂いを音づくりといった面から感じさせてくれる。1980年にも「復讐するは我にあり」などで音楽賞を獲得している。(昭和18年 茨城県)
優秀賞加藤和彦(だいじょうぶマイフレンド/探偵物語)


音楽イコール生活することというこの人の名を知らない人はいないだろう。「だいじょうぶマイフレンド」「探偵物語」でも、独得なファッションセンスで音づくりに臨み、モダーンなイメージで作品を包み込んだ。音楽だけにとどまらず、そのライフ・スタイルも感受性の強い人たちの間に多大な影響を与えている。(昭和22年 京都府)
優秀賞坂本龍一(戦場のメリークリスマス)


いわずと知れたY.M.O.(1983年12月に解散)のメンバーのひとり。その音楽的才能は世界中で認められ、自らの活動はじめ、編曲、プロデューサーととどまるところを知らない。彼自身、自分の中の振幅が大きくなったと語る「戦場のメリークリスマス」に出演及び音楽監督を担当。乾いた映画の中に、人の琴線にふれるメロディーを作りだした。(昭和27年 東京都)
優秀賞ヴァンゲリス(南極物語)


一昨年は「炎のランナー」でアカデミー賞最優秀オリジナル作曲賞を受賞。青春時代にはアートスクールで絵画を学び、またクラシックも学んだ。そのすべての経験が彼の音作りに表れているといえる。「南極物語」で大自然をバックに音の1つ1つに想像力豊かな絵画でも見るような感動を加え、その立体的な音のスクリーンとの相乗効果は素晴しかった。(1943年 ギリシャ)
優秀撮影賞
最優秀賞森田富士郎(陽暉楼/伊賀忍法帖)


「陽暉楼」「伊賀忍法帖」で見せた妖しの世界は一昨年の「鬼龍院花子の生涯」での“絵のなる場面の積み重ね”により艶やかに、より美しく、そしてより人間のおどろおどろしさを加えて見事な映像づくりだった。特に対称的な映像―愛と憎、動と静、華麗さと力強さを巧みに描きだす手法は、映像を芸術にまで高めたといえる。(昭和 2年 京都府)
優秀賞椎塚彰(南極物語)


「南極物語」は極寒地での過酷な条件下の撮影で最高のできを見せた作品だ。テレビ映画など数多く手がけ、また映画ではやはり厳しい条件での自然を捉えた「キタキツネ物語」を担当した経験がすべて実力として畜積されている。氷上を走るタロとジロを捉えた美しいカメラワークは日本映画史上に残るものとなるだろう。(昭和10年 新潟県)
優秀賞栃沢正夫(楢山節考)


今村監督とのコンビネーションは「神々の深き欲望」にまでさか昇る。北北海道でロケを行った「キタキツネ物語」で得た技術と長年の気心の知れたチームワークでの「楢山節考」はもっとも腕の見せどころだった作品に違いない。人間や動物たちの“日常”描写のリアリズムは正確なカメラワークあってこそ人の心に語りかけてくる。(昭和 7年 岩手県)
優秀賞羽方義昌(天城越え)


デビュー作とは思えないほどの出来栄えを見せた「天城越え」。本賞でもおなじみの川又昂氏の下で長年助手を務めた経験と努力の積み重ねで培われた鋭い感性の賜だろう。清張版「伊豆の踊り子」ともいえる本篇では、甘く切ないトーンでイメージを作りだし観客を魅了した。将来に期待できる名カメラマン登場だ。(昭和15年 高知県)
優秀賞長谷川清(細雪)


「社長千一夜」で映画デビュー。市川崑監督、照明の佐藤幸次郎氏とのつきあいも長く、市川映画の鮮やかなまでの美しさを、絶妙に表現する。昨年の「細雪」は文学作品の映像化であり、原作のイメージと監督のイメージを共存させ、関西の独得でやわらかなトーン作りを成功させ、メリハリの効いた作品となるのを助けた。(昭和 6年 千葉県)
優秀照明賞
最優秀賞増田悦章(陽暉楼/伊賀忍法帖)


華麗な中に渦まく醜い人間の欲望を描いた「陽暉楼」、激しいアクションシーンを盛り込みながら、忍者の壮絶な闘いを見せた「伊賀忍法帖」。昨年は、“情のからんだ闘いの映画”のライティングを一手にひきうけた。入念で、 計算されつくしたライティングあってこそ撮影の技術をささえた。一昨年の「鬼龍院花子の生涯」を越える働きを見せた。(昭和 6年 京都府)
優秀賞川島晴雄(南極物語)


気まぐれな大自然相手の南極、北極ロケ。マイナス35度に耐えた晴海の冷凍倉庫。「南極物語」は、まさに身も縮む思いで担当した大仕事だったに違いない。しかし、画面はあくまで美しく、努力の後をみじんも感じさせず、全く自然である。「赤ちょうちん」はじめ数多くの作品を手がけてきたベテランの業といえよう。(昭和 9年 東京都)
優秀賞岩木保夫(楢山節考)


今村作品は人間を描きだす。今村監督の全信頼をうけて「にっぽん昆虫記」「神々の深き欲望」「復讐するは我にあり」、そして昨年の「楢山節考」と、もっぱら人間を愛情深く、しかし決して過保護にならないように照し続けてきた。猥雑になりがちなシーンも持ち味を壊さず、あっけらかんと描きだすことに成功したのは彼の働きといえる。(昭和 2年 兵庫県)
優秀賞宮原敬(天城越え)


犯人に仕立て上げられる心優しい娼婦、家庭に嫌気がさし家出した少年、殺された男、天城のうっそうとした景色。「天城越え」は小品ながらもすぐれた出来栄えを見せたが、瞬間、瞬間をドキリとする映像に、闇と光の印象的なシーンがくり広げられる。鋭い感性と、手堅い仕事ぶりがうかがえ、見事だった。(昭和13年 神奈川県)
優秀賞佐藤幸次郎(細雪)


「ニュージーランドの若大将」でデビュー、「青春の門」などを手がける。また、映像美を誇る市川作品にはなくてはならない人だ。関西を舞台とした文芸作品「細雪」の映像化にあたって、やわらかさ、強さのコントラストをトーンやアングルに工夫を加えて写しだし、市川チームの息のあったところを見せた。(大正13年 東京都)
優秀美術賞
最優秀賞西岡善信/山下謙爾(陽暉楼)


時代ものを多く手がけ、作品に風格を与えてきた西岡氏の美術感覚と、明治時代の作品を得意とする山下氏の感覚のハーモニーが昨年の「陽暉楼」に厚みを加えた。華麗でありながらもの哀しい“陽暉楼”をつくりあげ、その仕事の確かさを見せてくれた。部屋に置かれる小物、蛇口などの装置など一つひとつにベテランらしい心使いがうかがえる。(大正11年 奈良県)(昭和11年 京都府)
優秀賞桑名忠之(白蛇抄)


昨年の「白蛇抄」といい、一昨年の「ダイヤモンドは傷つかない」といい話題作づいている。水上文学のエロティシズムの極致を非常に緊張感の伴った映像に仕上げたのは見事。非日常的な内容をリアリズムで描く中で、最も現実的な部分を担当する彼の努力がうかがえる。幻の世界へ観客を導く水先案内人としてこの作品を盛り立てた。(昭和 9年 福島県)
優秀賞戸田重昌(戦場のメリークリスマス)


「愛のコリーダ」「愛の亡霊」と、大島作品を数多く手がけ、なくてはならない存在だ。昨年の「戦場のメリークリスマス」でも、捕虜収容所での兵舎など見事につくりあげ、男だけの乾いた世界を淡々と描いたこの作品をさらに完成したものにした。ディテールをおろそかにしないセットは素晴らしかった。(昭和 3年 東京都)
優秀賞村木忍(細雪)


華麗なる女性映画「細雪」。奥行のあるリリカルな映像を女性ならではの細いところにまで気の配られたセットで、その完成度を高めた。冒頭の京都嵯峨にある料亭の奥座敷のシーンの雅やかな美しさ、漂う上品さは、「地獄変」「忍ぶ糸」などを手がけた頃から磨き続けた技術、センスがうかがえる。努力を惜しまない姿勢がうれしい。(大正12年 東京都)
優秀賞芳野尹孝(楢山節考/時代屋の女房/この子を残して)


土木工事までして“ナガサキ”を再現した「この子を残して」。雨戸一枚に至るまで時代考証した「楢山節考」。盛岡ロケでの傑作なしもた屋を作った「時代屋の女房」。過去に「雪国」「日蓮」など、大作を手がけてきた彼だが昨年の作品でまたその技術、知識の域がぐっと広がった。※「楢山節考」は稲垣尚夫氏との共同美術。(大正15年 神奈川県)
優秀録音賞
最優秀賞紅谷愃一(楢山節考/居酒屋兆治)


人間そのものを扱った「楢山節考」「居酒屋兆治」の臨場感あふれる音は、映画館内に感動と安定感をもたらした。「黒部の太陽」「日本の熱い日々 謀殺・下山事件」など、ドキュメンタリータッチの迫力あるシ一ンにリアルな音作りで臨んだ成果が1982年の本賞であり、今回につながった。自然の音を素直に表現して、両作品を盛りあげた。(昭和 6年 京都府)
優秀賞大橋鉄矢(細雪)


市川監督とは「東京オリンピック」以来のコンビネーションを誇る。しかし、逆に市川作品が一番神経を使うともいう。昨年の「細雪」では関西は芦屋の独特な柔らかさを持った音作りに臨んだ。谷崎文学の世界を描きだすには耳から感じる“美”も大きな要因となり、彼はその期待に繊細な音感で応えてくれた。(昭和 2年 群馬県)
優秀賞小野寺修(家族ゲーム/みゆき)


若い監督とコンビを組むことが多く、森田監督とは「の・ようなもの」からのつきあいという。また「マタギ」にも参加。にっかつロマンポルノなどで磨いてきた技術は「家族ゲーム」のキイサウンドともいえるヘリコプターの爆音。「みゆき」での若いムンムンとした活気を伝える効果。若い感性の冴えが感じられた。(昭和24年 宮城県)
優秀賞林鑛一(白蛇抄)


念入りな仕事で伊藤作品を盛り上げる立て役者。「誘拐報道」に続き、「白蛇抄」で2度目の録音賞に選ばれた。ドキュメンタリータッチで進む前回と比べて、エロティシズムの世界を日常的リアリズム風に描いた今回の作品の方がより技術を要求され、やりがいがあったに違いない。オートバイ、電話、滝、サイレン…。要所を締める音づくりだった。(昭和10年 東京都)
優秀賞平井清重(陽暉楼)


静と動の対比がその作品の命ともいえる任侠ものを手がけて右に出るもののないほど現在、絶好調。一昨年の「鬼龍院花子の生涯」では張りつめたトーンを、丁寧な音づくりで聴かせた。そして、昨年の「陽暉楼」では、女同志の争いを壮絶に表現した。音のコントラストの妙技を耳に刻みこんだ人も多かっただろう。(昭和16年 滋賀県)
優秀外国作品賞
最優秀賞愛と青春の旅だち


久々の正攻法で描く人間ドラマを新鋭テイラー・ハックフォードが見事に演出した。影のある主人公役に人気上昇中のリチャード・ギア。士官養成所で過酷な訓練に耐えながら真実の人間愛に目覚めていく感動のドラマである。恋人役のデブラ・ウィンカー、鬼軍曹に「ルーツ」のルイス・ゴセット・Jr.などワキまでも光る。(CIC)
優秀賞ガンジー


昨年のアカデミー賞を一挙にさらってしまったのがこの作品。名優でもあるリチャード・アッテンボローの指揮下に、全世界の良心が注目した。“偉大なる魂 ”で知られるガンジーのドラマチックな愛と勇気の大ロマン。新鋭ベン・キングスレーを得て、英米のオール・スター・キャストで見事に愛を歌い上げた。(コロムビア)
優秀賞ソフィーの選択


戦場の傷を背負ってなお生きなければならない女性の悲劇を繊細なタッチで描きあげた秀作。メリル・ストリープが各賞を独占する演技を見せた。戦争は終わっても、人々の中に続く戦争をユダヤ青年、アメリカ青年、ポーランド女性の3人が織りなす人間関係を通して表現。女性映画であると同時に、戦争映画でもある。(CIC)
優秀賞隣の女


大人の恋愛を巨匠フランソワ・トリュフォーが手慣れたタッチで淡々と演出。“あなたと一緒では苦しすぎる。でも、あなたなしでは生きていけない。”こんな言葉もトリュフォーにかかればフランス中流家庭の雰囲気を織り込み、自然と身近なものになってしまう。若い女性の熱い視線をさらって、ロングラン上映された。(東映ユニバースフィルム)
優秀賞フラッシュダンス


プロダンサーになる夢を抱く若い女性の青春映画。新鮮な映像感覚と音楽、それにパワフルでダイナミックなダンスシーンを見事に織り込み絶賛された。主演は、日本でも人気爆発のエール大学1年生、ジェニファー・ビールズ。アイリーン・キャラらの主題曲も全てヒットチャート入りし、興行実績もE.T.に次ぐ勢いだ。(CIC)
新人俳優賞
優秀賞金子正次(竜二)


自分の生活にふと虚しさを覚え、足を洗おうとするヤクザ竜二の“30代の男の迷い”を演じて妙だった「竜二」。脚本も務め、情熱を傾けたこの作品のヒット中に、1983年10月 6 日、33才の若さでガン性腹膜炎のために死去した。次作の準備も進められている際中だったというだけに、その才能が惜しまれる。(愛媛県出身)
優秀賞杉本哲太(白蛇抄)


ロックバンド「紅麗威蘇」のリードボーカルを担当する彼が、うって変わって、「白蛇抄」では住職の息子という役柄をこなした。テレビではおなじみだが、映画は初出演。胸の奥にくすぶる恋心に悩み、ひとり耐え苦しみ、思いつめる“男”の演技に、未来の大物ぶりがうかがえた。次作が楽しみだ。(神奈川県出身)
優秀賞宮川一朗太(家族ゲーム)


全くの新人ながら「家族ゲーム」でラッキーな“役者”としてのスタートをきった。落ちこぼれ受験生役での松田優作との絶妙なやりとり、そして現代っ子らしいシラケと繊細を兼ね備えた演技で、ワキを固めた名優陣に一歩もひけをとらなかった。実生活では、今年、早稲田大学に入学が決定しており、充実した日々を送っている。(東京都出身)
優秀賞仙道敦子(細雪/白蛇抄)


子役として重ねた経験が「白蛇抄」での少女から女へと移りゆく微妙な心の揺れを見事にものにしたのだろう。一昨年は「鬼龍院花子の生涯」で夏目雅子の少女時代を演じた。持って生まれた素材の良さと、度胸の良さは彼女独得のものがあり、これに経験や女性としての年齢がプラスされれば素晴らしい役者に育つことだろう。(愛知県出身)
優秀賞原田知世(時をかける少女)


大林監督をして「ジュディ・ガーランドの生まれ変わり」と言わしめた“天性の女優”ぶりが「時をかける少女」でも十二分に発揮され、大人気を博した。歌手としてもヒットチャートに名を連ね、テレビにも主演。また舞台でもミュージカルをこなすといったマルチタレントだ。息の長い女優になって欲しい。(長崎県出身)
優秀賞渡辺典子(積木くずし)


大変だったけれど、本当に出演してよかったという「積木くずし」での彼女の体当りの熱演は素顔の可愛さからは少しもうかがえない。いしだあゆみとの乱闘シーンでは、脳震盪を起させてしまったほど役にのめり込み、時々ドキリとするほど女を感じさせる視線を見せた。この刺激をバネにもっと伸びていける女優だ。(福岡県出身)
話題賞

作品部門:「戦場のメリークリスマス」


俳優部門:タロ、ジロ(「南極物語」)