第9回日本アカデミー賞優秀作品一覧に戻る
開催日: 1986(平成-2)年2月20日(木)
場所: 東京プリンスホテル
司会: 武田鉄矢/檀ふみ
優秀作品賞
最優秀賞/優秀賞
(C)東映

最優秀作品賞 「花いちもんめ」


高齢化している日本で、今、老人問題が社会的関心を呼んでいる。「花いちもんめ」は、ある日突然「ボケ」てしまった老人をとりまく家族間のトラブル、その悲喜劇を描いた、優れて今日的テーマによる問題作だ。伊藤俊也監督は、そうした問題の大きさを踏まえながら、重さ、深刻さをうまくかわしたユニークで前向きなホーム・ドラマを演出し、幅広い層の支持を得ることとなった。(東映)

優秀作品賞 「恋文」


夫婦とその子供、どこにでもある平和な風景に迷い込んで来た夫のかつての恋人。白血病を病み、余命わずかな彼女の残された日々を、夫は共に生きようと決意する……。新しい女と男の愛のあり様を描いた連城三紀彦の直木賞作品の映画化である。演出は、「もどり川」等で、既に連城作品には馴染み深い神代辰巳監督。神代流メロドラマ世界が新鮮だ。(松竹富士=廣済堂映像=ケイ・エンタープライズ)

優秀作品賞 「それから」


日本映画界の最先端を走る、俊英・森田芳光監督と、夏目漱石の古典文学の融合が、広く話題を呼んだ作品だ。明治後期の東京を舞台に、親友との友情と、その妻への愛をかかえて、悩み葛藤する青年の姿を、極めてオーソドックスな演出設計と、細部に織り込んだ現代的感性をもって、ヴィヴィッドに描いて注目を集めた。(東映)

優秀作品賞 「Wの悲劇」


夏木静子原作の「Wの悲劇」が舞台で演じられようとしているその裏で、もうひとつ、現実の〈悲劇〉が静かに進行していた――、そんな奇抜な二重構造をもつ映画が「Wの悲劇」である。舞台で演じられるドラマ展開と、映画内容の展開がそっくりダブるという大胆な発想を、澤井信一郎監督は、本格的なバック・ステージ・ムービーの形式の中に表現し、豊かな映像空間を創造した。(角川春樹事務所)

優秀作品賞 「ビルマの竪琴」


平和とヒューマニズムを謳いあげた竹山道雄の名作を、世界的評価を得た前作(昭和31年)に続き、市川崑監督自ら再映画化。前作が白黒作品にならざるを得なかっただけに、夫人の故・和田夏十によるカラー映画用の脚本の映像化は念願であったと言われる。「ナットさんの鎮魂歌にしたい」と語った市川監督が情熱的にとり組んだ名作である。(フジテレビジョン=博報堂=キネマ東京)
優秀監督賞
最優秀賞澤井信一郎(早春物語/Wの悲劇)


「野菊の墓」で悠々の監督デビューを果たし、マキノ雅弘監督の助監督時代から期待されつづけた大器は、今まさに絶好調の波に乗っている。「Wの悲劇」では薬師丸ひろ子を、「早春物語」では原田知世をアイドルの枠を越えた大人の女優として育てあげたことで、この人の評価はいやがうえにも高まるのである。名脚本家でもあり、今後の活躍が期待される。(1938年 静岡県)
優秀賞市川崑(ビルマの竪琴)


50年に及ぶ監督生活で、初めての自作の再映画化である「ビルマの竪琴」は、期待通りの作品として大ヒットした。文学作品、風刺喜劇、そして近年の横溝シリーズ、「細雪」に始まる女性映画シリーズというバラエティーに富んだ作品群にはどれも、「東京オリンピック」に代表される、実験精神が一貫して流れている。国際的評価も高い、わが国の誇る映像作家である。(1915年 三重県)
優秀賞伊藤俊也(花いちもんめ)


デビュー作「さそり」の爆発的ヒット以来、寡作ながら、ファンの根強い支持を得ている作家である。今回の「花いちもんめ」は、最近の「誘拐報道」「白蛇抄」という2本の作品歴からみると、異質とも思えるテーマの作品だが、ボケ老人をめぐる家族の悲喜劇をみつめる視線には、シャープさと、暖かい人間観が同居しており、伊藤作品らしい人間観察のドラマとして成功している。(1937年 福井県)
優秀賞五社英雄(薄化粧/櫂)


TVの人気番組「三匹の侍」を、映画の世界でも開花させ、そのダイナミックな演出が注目され、活力溢れる娯楽時代劇の作家として独自の境地を開いた。その後、「鬼龍院花子の生涯」の大ヒット「陽暉楼」などめざましい活躍が続いている。久しぶりの松竹作品「薄化粧」、宮尾登美子三部作の一本「櫂」という本年度の作品をみてもその充実ぶりがよくうかがえる。(1929年 東京都)
優秀賞森田芳光(それから)


ニューウェーブの名がいかにも似つかわしく、若さに光り輝いていたこの人だが、「それから」ではその確かな演出力を見せつけ、底知れぬ才能の存在を人々に思い知らせる結果となった。自主映画からスタート、8ミリの名作「ライブイン茅ヶ崎」等を経て、「の・ようなもの」で劇場映画デビュー。次々と打ち出される新感覚の作品群は、日本映画の将来に希望をつなぐものだ。(1950年 神奈川県)
優秀脚本賞
最優秀賞松田寛夫(花いちもんめ)


伊藤俊也監督との仕事は、「誘拐報道」につづくものだが、このコンビネーションは、かつての名作「さそり」シリーズから始まっている。「花いちもんめ」は、そうした気心の知れた監督と2人で行なわれる取材、シナリオ・ハンティングを経て、執筆された。徹底的に話しあい、相互に刺激しあいながらシナリオを練り上げていくパターンは、「さそり」時代以来のものである。(1933年 京都府)
優秀賞荒井晴彦(Wの悲劇/ひとひらの雪)


絶讃された「Wの悲劇」は澤井信一郎監督と共同脚本だった。2 つの同時進行するストーリーという意表をつく発想を、すぐれた脚本に結実させて評価された。「ひとひらの雪」は、渡辺淳一の同名ベストセラー小説の映画化である。身勝手で自由な愛に生きつつも、女たちに翻弄される男。「不倫」が流行語ともなった昨年の世相がよく反映されたものでもあった。(1947年 東京都)
優秀賞澤井信一郎(Wの悲劇)


澤井信一郎にとって、脚本は本職でもある。マキノ雅弘監督に最後の弟子として師事した後、「捨て身のならず者」で脚本家としてデビュー、数多くの名作をものにしているからだ。昨年の、和田誠監督作品「麻雀放浪記」での、和田氏との共同脚本も記憶に新しい。今回も「Wの悲劇」における、荒井晴彦氏との共同脚本により受賞した。(1938年 静岡県)
優秀賞高田宏治(櫂/春の鐘)


昭和38年「柳生武芸帳」がデビュー作のベテランである。そして、「緋牡丹博徒」「仁義なき戦い・完結篇」等々に代表される、東映任侠映画の黄金時代の一翼を担った人である。最近は、五社英雄監督とのコンビ作品も多く、「櫂」を含め、宮尾登美子三部作の全ての脚本を手がける一方で、昨年は「春の鐘」も担当し、ベテランの力量を大いに発揮している。(1934年 大阪府)
優秀賞筒井ともみ(それから)


TVアニメ「ドン・チャック物語」でデビュー。その後、“必殺シリーズ”「柳生一族の陰謀」等の時代劇、「東芝日曜劇場」等々のテレビ番組でシナリオを担当、劇場映画は共同脚本の「ヘッドホン・ララバイ」に続く「それから」が第2作である。夏目漱石の名作を前に、一番考慮したのは、時間の流れの掴み方と台詞だった、という。(1948年 東京都)
優秀主演男優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞千秋実(花いちもんめ)


志村喬、藤原釜足と共に、“黒澤3人男”と呼ばれ、デビュー作「野良犬」以降、黒澤作品に多数出演している。「花いちもんめ」は、10年前の脳卒中を、見事に克服したこの人を主役に据えたことで、その説得力を増したと言えるだろう。シナリオに惚れ込んだという役柄への没入にはすご味すら感じさせ、病後の体をいとわぬ熱演には、頭の下がる思いがする。(北海道出身)
優秀賞緒形拳(薄化粧/櫂)


その原作者のファンであり、映画化の話を聞いた時、“体を電流が走ったように感じた”と語った「薄化粧」。昨年は、同じ五社英雄監督による「櫂」にも出演し、気をはいた。ともかく、このところの活躍には目をみはるものがある。日本映画界における実力派スターとして、今後の動向には目が離せない人と言えるだろう。(東京都出身)
優秀賞北大路欣也(春の鐘/火まつり/夢千代日記)


「春の鐘」「火まつり」「夢千代日記」と昨年も多彩な役柄を演じて、安定した活躍をみせた。市川右太衛門の二男として生まれ、映画デビューは「父子鷹」。舞台では「探偵」で芸術選奨文部大臣新人賞を受けている。素質、芸歴、芸の確かさ、どれをとっても、抜きん出ていると言える。精悍さと都会的センスを合せ持つ得がたいキャラクターの持ち主である。(京郡府出身)
優秀賞萩原健一(カポネ大いに泣く/恋文/瀬降り物語)


痛快無比の清順ムードが横溢する「カポネ大いに泣く」、まさに適役、原作者・連城三紀彦が彼をモデルとして書き起した「恋文」、そして、寡黙な山男を演じて男っぽい「瀬降り物語」と、どれをとっても萩原健一の映画のほかの何ものでもない。その存在感、男の色気すら漂よう作品に昨年は恵まれた。破滅的なイメージの持ち主で、男女を問わずその支持を集めている俳優である。(埼玉県出身)
優秀賞松田優作(それから)


「探偵物語」の大ヒット以後、じっくり好企画にめぐり逢うまで待ち続けたという待望の作品「それから」は、“最高に官能的な大人の世界をテンション高く描いてみた”の言を待つまでもなく、貯めこんだエネルギーを一気に噴出させた素晴らしいものであった。「家族ゲーム」における飄々とした役どころとは違うものの、森田監督作品の中で、この人は実に魅力的である。(山口県出身)
優秀主演女優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞倍賞美津子(生きているうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言/恋文/友よ、静かに瞑れ)


おおらかで、さっぱりとした気質、倍賞美津子は掛け値なしの“いい女”である。女の持つ、生来のたくましさを、この人はごく自然に演技ににじませて、気持ちの良い女優さんなのである。したがって男っぽい作風の監督さんに好まれることになるが、「生きているうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」「恋文」「友よ、静かに瞑れ」のラインアップがそれを証明している。(東京都出身)
優秀賞岩下志麻(食卓のない家/聖女伝説/魔の刻)


「食卓のない家」「聖女伝説」「魔の刻」の3作に出演、日本の代表的女優としての貫禄を遺憾なく発揮した。夫君の篠田正浩監督との仕事も数多く、第1回日本アカデミー賞を受けた「はなれ瞽女おりん」等、高い評価を得ている作品が多数ある。最新作に「鑓の権三」があり、「心中天網島」に続く、篠田=岩下コンビによる近松ものである。(東京都出身)
優秀賞十朱幸代(櫂/花いちもんめ)


かつての日活や、東映の時代劇、やくざ映画といった男性映画の中にあって、可憐な娘役を演じつづけていた人も、大物女優としての重みが増して来た。「魚影の群れ」でひとつの転機を迎えたと本人も言うように、その後の活躍はめざましい。昨年は「櫂」「花いちもんめ」での演技が話題となった。大人の映画の大人の女優としていよいよその真価が問われてきている。(東京都出身)
優秀賞薬師丸ひろ子(Wの悲劇)


20歳になってはじめての作品として、やはり20歳の舞台女優の卵を演じた「Wの悲劇」。澤井監督の意図したとおり、“大人の女”を演じきり、アイドルという冠をはずした、女優・薬師丸ひろ子の誕生を、私たちは見ることが出来た。この作品の後、彼女は、念願のハード・アクション映画「野蛮人のように」を撮り、アイドル脱皮後の、大人の女優の道を歩みはじめている。(東京都出身)
優秀賞吉永小百合(夢千代日記)


日本映画の歴史に、その名をとどめて、決して忘れ去られることなく、常にある種の感傷をともないながら想い起こされるであろう女優として、この人は既に永遠の存在なのである。どんなに汚れ役を演じても、私たちには光り輝いて見える。「スター」という言葉は、この人にこそ似つかわしいのではないか。「夢千代日記」での彼女も、はかなく、そして美しかった。(東京都出身)
優秀助演男優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞小林薫(恋文/それから)


無口な、翳りを感じさせる青年を演じて好評である。「恋文」「それから」で、押さえた渋い演技を見せた。唐十郎の「状況劇場」では根津甚八と並ぶ看板俳優だったが、10年間在籍し、退団。その後の映画、TV等各方面での活躍は周知の事実であり、若干ながら、出色の個性派演技者として注目を集めている。(京都府出身)
優秀賞植木等(俺ら東京さ行ぐだ/刑事物語・くろしおの詩/乱)


お笑いの世界に偉大な足跡を残したクレージーキャッツのメンバーとして、「スーダラ節」を歌い、洗面器で人の頭をこづいていた“無責任男”は、年齢を重ねる内に渋さを増して、日本映画に欠くことの出来ない存在となった。軽さと渋さを自在に使いわける性格俳優として、「俺ら東京さ行ぐだ」「刑事物語・くろしおの詩」「乱」での演技が光っていた。(愛知県出身)
優秀賞川谷拓三(薄化粧/ビルマの竪琴)


東映やくざ映画の斬られ役、殺され役専門の大部屋俳優のひとりとして数限りなく、スクリーンの中で死んでいく内に、ファンによって、そのユニークなキャラクターが発見された。「まむしの兄弟・懲役太郎」以降、「仁義なき戦い」などの東映実録路線に重要な役どころで出演し、その評価が確立した。昨年は「薄化粧」「ビルマの竪琴」で、川谷ファンを満足させた。(旧満州出身)
優秀賞津川雅彦(ひとひらの雪)


何かと「不倫」が話題となった昨年に、タイミング良く発表された「ひとひらの雪」だった。建築家で、暮らしにも余裕のあるリッチなムードの漂よう中年プレイボーイという役どころは、この人に適役だ。しかし、それにしても、こうした雰囲気を持つ男優が、現在あまりに少ない。大人の俳優、大人の映画が求められている時に、この人の存在は貴重と言えるだろう。(京都府出身)
優秀賞ビートたけし(夜叉)


「戦場のメリークリスマス」での名演は、今も鮮明に思い出されるが、ともかく相当に魅力的な俳優であることは誰しも認めるところだ。「夜叉」には、“健さんと共演できる、というので自ら買って出た”由。世代的に言っても、東映やくざ映画に親しんだであろう人のコメントとして印象的である。今後も未知数の魅力を体当りの演技で花咲かせて行って欲しい。(東京都出身)
優秀助演女優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞三田佳子(Wの悲劇/春の鐘)


「Wの悲劇」における、もう一人の主役とも言える重要な役柄を、多彩な経験をもとに鮮やかに演じ、そのもてる力量を十二分に発揮、今さらながら、女優としての器の大きさを見せつけた。「春の鐘」では、都会的な美しい人妻役をあでやかに演じ、ここでの存在感もまた見事なものだった。映画・TVの他、芸術座、帝劇、三越劇場での舞台活動も充実したものである。(大阪府出身)
優秀賞樹木希林(夢千代日記)


「夢千代日記」では、日ごとに死に近づいてゆく夢千代を、どうすることも出来ぬまま見守る芸妓菊奴を演じた。映画に、TVに、そしてCMにと大活躍だが、この人の特異なキャラクターがあるだけで、作品の奥行きが増してくる。文学座出身。かつてのTVドラマ「七人の孫」でこの人が扮した東北弁まる出しのお手伝いさん、おとしさんは今だに語り草である。(東京都出身)
優秀賞田中裕子(カポネ大いに泣く/夜叉)


いま最も輝いている女優と形容され、人気・実力ともに若手の中で、群を抜いた存在である。華奢とも言える細い体つきながら、全体に漂ようものは、キリリとした明快さそのものだ。それでいて、顔だちには、優しく、古風とも言える日本的なものがある。「カポネ大いに泣く」では前者の、「夜叉」では後者のイメージが、よく表現されていて興味深い。(大阪府出身)
優秀賞藤真利子(薄化粧)


10本目の記念すべき作品となったのが、五社監督の「薄化粧」。緒形拳扮する主人公に、身も心ものめり込んでいく娘、ちえを演じた。シナリオを読んで、「役者をしていてよかった」と思えたという役を得て、みなぎる熱意を全身で表現した。デビュー作品はATG作品「北村透谷――わが冬の歌」。みかけよりはずっとおキャンだというこの人のこれからが楽しみである。(東京都出身)
優秀賞藤田弓子(さびしんぼう/瀬降り物語)


「さびしんぼう」は「転校生」「時をかける少女」に続く、大林宣彦監督による“尾道三部作”の最新作。そして中島貞夫監督にとって20年の執念が実った「瀬降り物語」。この2本の作品で演じた役どころは奇しくも、母親であった。平凡でやさしい母親像と、激しい女の部分を残した母親像と、うまく演じ分けて、印象的であった。(東京都出身)
優秀音楽賞
最優秀賞武満徹(食卓のない家/火まつり/乱)


日本の誇る現代音楽家であるのは勿論、非常に映画的感性にあふれた映画音楽の作家として、数多くの名作を放ち、それらは作品集としてまとめられてもいる。「食卓のない家」は小林正樹監督作品だが同監督の「怪談」での武満作品は映画音楽史上、屈指の名作であった。「火まつり」そして「乱」と続いた昨年は、武満徹ファンにとって至福の年であったようだ。(1930年 東京都)
優秀賞井上堯之(カポネ大いに泣く/恋文/瀬降り物語)


長い音楽歴は、グループ・サウンズのザ・スパイダース時代に始まった。ギタリストとしてのテクニックには定評があり、自らグループを率い、沢田研二のバックを務めたり、TVの「太陽にほえろ」の主題曲の作曲を手はじめに、映画音楽の作曲家としても活躍中である。今回、「カポネ大いに泣く」「恋文」「瀬降り物語」の作品が評価された。(1943年 兵庫県)
優秀賞梅林茂(それから/友よ、静かに暝れ)


九州で音楽活動中に、内田裕也と出合い、その後、ほかの2名とともに「EX」を結成し、レコード・デビューした。グループとしての活動を続けながら、多くのCMソングや、「それから」「友よ、静かに瞑れ」等の映画音楽を精力的にこなしている。また、松田優作とEXとの共同作業によるレコードも発表し、意欲的な仕事が続いている。 (1951年 福岡県)
優秀賞佐藤勝(薄化粧/櫂)


「薄化粧」「櫂」は、ともに五社監督作品である。これで、9本の五社作品の作曲を担当したことになるが、そもそも、このコンビは、フジテレビ・ディレクター時代の「トップ屋」から始まり、既に25年の長きに渡って続いているのである。24歳から、映画音楽を手がけ、黒澤明作品の作曲も数多い、日本の代表的な映画音楽作家である。(1928年 北海道)
優秀賞山本直純(男はつらいよ 寅次郎真実一路/男はつらいよ 寅次郎恋愛塾/ビルマの竪琴)


「男はつらいよ寅次郎真実一路」「男はつらいよ寅次郎恋愛塾」のシリーズの作曲と、昨年は「ビルマの竪琴」での作曲もこなし、充実した仕事を残した。日本でもっともポピュラーな指揮者の1人として、クラシック音楽の普及に果たした功績は多大なものがある。映画音楽のみならず、TVやCMソングにまで及ぶ、旺盛な作家活動はつとに知られるところである。(1932年 東京都)
優秀撮影賞
最優秀賞前田米造(それから/CHECKERS in TAN TAN たぬき)


「八月の濡れた砂」の撮影助手をスタートに、「たそがれの情事」「帰らざる日々」「赫い髪の女」等多数のチーフ作品がある。「それから」は森田監督とのコンビとして、4作目にあたる。時代設定が明治ということで、光量をおさえたセットだったが、シャープなしかもしっとりとした映像が美しい。「CHECKERS in TAN TAN たぬき」での現代的なセンスも光っていた。(1935年 東京都)
優秀賞上田正治/斎藤孝雄(乱)


黒澤明監督作品「乱」では、黒澤組のスタッフの渾身の映画創造の現場が、華麗に展開されていた。斎藤孝雄は、「素晴らしき日曜日」から中井朝一に師事し、「蜘蛛巣城」からBカメラ、「椿三十郎」から撮影技師を担当した最古参の1人であり、上田正治は「影武者」以来のスタッフである。黒澤作品にふさわしい堅実で、力強い見事な映像であった。(1938年 千葉県)(1929年 京都府)
優秀賞木村大作(魔の刻/夜叉)


昨年は 2 本の降旗作品「魔の刻」「夜叉」で、作品のイメージを見事に映像に定着し、監督の信頼に応えた形となった。コンビ作の多い降旗作品では、厳しい気象条件下での撮影も度々で、この人の頑張りが、全てを支えている。「夜叉」では、若狭湾に面した漁村と、大阪・ミナミにロケを敢行、荒涼とした日本海と、ネオン渦巻く都会の風景の対比が効果をあげた。(1939年 東京都)
優秀賞小林節雄(ビルマの竪琴)


旧日活から大映に移りカメラを回しつづけ、その間、市川崑監督作品の多くに関わり、「野火」「黒い十人の女」「私は二歳」「雪之丞変化」を含む、多数の話題作を撮りあげた。昨年の「ビルマの竪琴」は、市川監督念願のカラー作品としての再映画化であり、タイに1ヶ月のロケを敢行した。「股旅」以来、10数年ぶりの市川作品であった。(1920年 静岡県)
優秀賞森田富士郎(櫂)


「陽暉楼」「鬼龍院花子の生涯」に見た、女の情念を緻密な筆致で描く宮尾登美子の世界を艶やかに映像化した美しいカメラワークは、この「櫂」にも引き継がれている。大正初期から昭和に至る時代を生きる女衒一家とそれに関わる人々の生き様を、優れた構成力と、濃密な色彩設計で描写した。その豊かな映像感覚はパワフルな力に満ちている。(1927年 京都府)
優秀照明賞
最優秀賞矢部一男(それから/CHECKERS in TAN TAN たぬき)


日活は昭和30年の入社である。助手生活をへて技師としての第1作は武田一成監督作品「青い獣ひそかな愉しみ」だった。以来、50数本の作品がある。森田芳光監督作品のほとんどに参加しており、「それから」では、明治という時代の雰囲気を、アンバー系の照明で表現した。一方、「CHECKERS in TAN TAN たぬき」では、若いファンを意識した明るさ、楽しさの配慮が見られる。(1936年 東京都)
優秀賞佐野武治(乱)


「瀬戸内少年野球団」の、明るい瀬戸内の陽光と、それとは相反して、苦悩する少年たちの心象を、的確に柔かな陰影で包み込むようにライティングし前回の「最優秀照明賞」に輝いた。黒澤作品では「影武者」に続く2 本目の作品である「乱」でも、日本屈指の技術と評価される力を発揮、映像の奥行きに多大な貢献がなされた。(1930年 東京都)
優秀賞安河内央之(魔の刻/夜叉)


新進気鋭の照明マンである。極めて厳密にリアリティーを重んずる一方、イマジネーション豊かな表現力にもたけている。作品歴としては、デビュー作の「居酒屋兆治」そして、今回対象作となった「魔の刻」「夜叉」の 3本がある。その作品数こそ少くないものの、チーフ時代を含む長い現場での経験に培われた、柔軟で堅実な仕事ぶりには高い信頼が寄せられている。(1946年 東京都)
優秀賞下村一夫(ビルマの竪琴)


照明一筋に歩んだベテランである。映画は光と影の映像芸術、どんなに優秀なカメラマンでも、優れた照明マンなしには、美しい映像を得ることが出来ない。照明歴40数年になるこの人の作品の数々がそれを如実に物語っている。「ビルマの竪琴」では、市川崑監督から高い評価を受け、現在製作中の同監督「鹿鳴館」でも腕をふるっている。(1921年 神奈川県)
優秀賞増田悦章(櫂)


「鬼龍院花子の生涯」での名場面の数々にこの人の入念な照明効果が光っていた。そして「陽暉楼」では、濃密な色彩で描かれる情念のほとばしりを、計算されつくした照明設計が支えた。昨年も、気心の知れた五社英雄監督作品「櫂」で、その手腕を発揮し、大正から昭和にかけての時代の空気を、色彩の中に表現して優れた成果をあげた。(1931年 京都府)
優秀美術賞
最優秀賞村木与四郎/村木忍(乱)


「生きものの記録」以降、「デルス・ウザーラ」を除く全ての黒澤作品の美術を担当して来た村木与四郎。日本映画界の誇る超ベテランである。四億円をかけた城の大オープン・セットを組んで話題を呼んだ「乱」の美術は、夫人でもある日本美術界の重鎮村木忍と共同であたっている。ちなみに、夫妻共同の美術は、「どですかでん」以来のものである。(1924年 東京都)(1923年東京都)
優秀賞井川徳道(最後の博徒/夢千代日記)


時代劇、任侠映画の美術の第一人者として、代表作に「一心太助」「真田風雲録」「日本の首領」「空海」「修羅の群れ」等、多くの作品がある。東映任侠映画ならではの様式美に満ちた「最後の博徒」と、はかなくも美しい「夢千代日記」の 2作品に、昭和30年代からの長い経験に裏打ちされた、円熟の腕を見せた。(1929年 京都府)
優秀賞今村力(結婚案内ミステリー/それから/魔の刻/夜叉)


「結婚案内ミステリー」「それから」「魔の刻」「夜叉」での緻密な美術設計が評価された。わけても「それから」では、“電車通り”“坂道”といった広大なセットを組み、明治時代の雰囲気をたくみに表現し、手腕を発揮する一方、時代考証のゆきわたった調度品を含めて、主人公の“高等遊民”的な生活ムードを、香り豊かに表現した。(1943年 東京都)
優秀賞戸田重昌(食卓のない家)


大島渚作品を数多く手がけ、最近では「戦場のメリークリスマス」での捕虜収容所のセットは高度に完成された作品として評判となった。対象となった「食卓のない家」は、名匠・小林正樹監督作品だが、同監督との作品としては、「怪談」での、大がかりで耽美性に富んだセットの記憶が今も鮮明である。ディテールをおろそかにしないセットには高い評価が寄せられている。(1928年 東京都)
優秀賞西岡善信(愛しき日々よ/薄化粧/櫂)


五社監督作品の「鬼龍院花子の生涯」と「陽暉楼」による、1983・1984年につづいて、前回1985年も、「北の螢」「化粧」「瀬戸内少年野球団」「旅芝居行進曲」で「最優秀美術賞」を受賞した。昨年は「愛しき日々よ」「薄化粧」「櫂」での仕事が対象となった。時代考証が重要なポイントとなる作品では、豊富な知識と、確かな目に支えられた美術の果たす役割は大きいのである。(1921年 奈良県)
優秀録音賞
最優秀賞橋本文雄(刺青・IREZUMI/恋文/早春物語/それから/タンポポ/Wの悲劇)


大映、日活をへてフリーランスとして活躍中だが作品数は既に220本を数え、録音界のベテランとして映画への貢献度には計り知れないものがある。シンクロで音録りする技術には群を抜くものがあり、ドラマの90%以上を同録で録り上げる。「刺青・IREZUMI」「恋文」「早春物語」「それから」「タンポポ」「Wの悲劇」でもその技術の冴を明解に知ることが出来る。(1928年 京都府)
優秀賞斉藤禎一(ビルマの竪琴)


「ビルマの竪琴」は、チーフから技師へと昇格して始めての仕事であった。市川監督との仕事は永く、金田一シリーズをはじめ、多くの作品の音録りに関わった。東宝での在籍25年を迎え、録音の道を邁進中である。最新の仕事に、相米慎二監督の「雪の断章」がある。映画の合間を縫ってのテレビの仕事も多い。(1941年 千葉県)
優秀賞紅谷愃一(聖女伝説/春の鐘/魔の刻/夜叉)


「聖女伝説」「春の鐘」「魔の刻」「夜叉」と作品が続いた昨年だった。録音技術の日進月歩の進歩を踏まえながら、独自の音の世界を造り続けている。当部門賞の常連と言える存在でもあり、1981、1983、1984年と3度の最優秀賞を受けた実力者である。大映京都から日活に移り、その後フリーランスとして活躍、鋭くリアルな音づくりには定評がある。(1931年 京都府)
優秀賞宮本久幸(それから)


「ときめきに死す」での、リアル・タイムの音声を大切にした録音が印象的だった。「それから」は、この人にとって、2作目の森田芳光監督の作品である。そして、この作品にも、リアル・タイムの音録りという精神は生きており、徹底したシンクロによる録音が行われ効果をあげている。それは、森田監督自身の希望でもあり、啓発されるところは大きかったと言う。(1942年 東京都)
優秀賞矢野口文雄/吉田庄太郎(乱)


馬が疾駆し、矢が飛び交い、銃弾の乾いた音が緊張した空気をさらに張りつめたものにする。「乱」における矢野口文雄の仕事は、黒澤組のベテランとして、そして、この人の作品歴の締めくくりにふさわしいものだった。この超ベテランは、1985年1月に惜しくも他界し、後を受けた「天平の甍」等で知られる吉田庄太郎が完成させる劇的なものとなった。(1917年 長野県)(1925年 東京都)
優秀編集賞
優秀賞鈴木晄


今年度優秀作品賞の内、2作品(「恋文」「それから」)を編集。その他「カポネ大いに泣く」「夜叉」「春の鐘」「タンポポ」「クララ白書少女隊PHOON」「魔の刻」「友よ、静かに瞑れ」「高校教師・成熟」等、幅広く手がけその高度な技術とエネルギーが評価された。
優秀外国作品賞
最優秀賞アマデウス


「モーツァルトは本当に毒殺されたのか?」――その歴史的な謎に挑み、大胆なモーツァルト像を創出したピーター・シェーファー脚本による話題の舞台「アマデウス」の映画化。米アカデミー賞を、8 部門で受賞し、圧勝したミロス・フォアマン監督作品である。当時の宮廷音楽の世界がリアルに描写され、フォアマンの出身地チェコでロケされた17世紀の見事な再現がみものである。(松竹富士)
優秀賞インドへの道


「ライアンの娘」以来、実に14年ぶりという、巨匠デビット・リーン監督の新作だ。1920年代、英国統治下にあるインドと、その自然を背景に、植民地問題、東西文化の問題を視野におさめながら、豊かな人間ドラマが描かれるこの作品は、監督自らの脚本をもとに、半年のインド・ロケを敢行し製作されている。円熟の世界と、年齢を感じさせないみずみずしさが同居する魅力の映画である。(松竹富士)
優秀賞キリング・フィールド


複雑な政治状況のもと、無惨な戦闘の続くカンボジア戦線を舞台に、死線をさまよう米人ジャーナリストと現地人ガイドの別離と再会を描く、友情の物語。実話の忠実な映画化である。演出は、この作品でデビューしたローランド・ジョフィ。ドキュメンタルな映像は、映画であることを忘れさせてしまうほどの説得力で観る者を圧倒する。必死に友情に生きようとする二人の男の姿が感動的だ。(ワーナー)
優秀賞刑事ジョン・ブック 目撃者


暴力の世界に生きて来た刑事が、殺人事件にまき込まれた目撃者の少年とその母親を守り、敵と闘う中で、人間のやさしさをとり戻す。この作品はひと味違うポリス・アクション映画として全米で大ヒットした。監督は、「誓い」「危険な年」で注目されたオーストラリア出身のピーター・ウェア一。刑事ものとしては、「ダーティー・ハリー」以来のニュー・ヒーロー誕生と絶讃された。(UIP)
優秀賞コットンクラブ


愛と野望に彩られたローリング・トゥエンティー。禁酒法下のニューヨークに実在したナイトスポット“コットンクラブ”を舞台に、ギャングたちとスター志願の黒人たちが、スインギーなジャズに集って、華麗なドラマを展開する。「コットンクラブ」は、フランシス・コッポラが予算を大幅に超過し、約120億円の巨費を投じて撮り上げた執念の大作である。(松竹富士)
新人俳優賞
優秀賞江夏豊(最後の博徒)


現役引退後のマルチな活躍には、目を見はるものがある。この人のタレント性の豊かさに期待する者は多い。「最後の博徒」のデビューも見事という他なく、ユニホームを着流し姿に替えて、スケールの大きい新人の登場を映画ファンの心に焼き付けた。元来が映画好き。高倉健の東映やくざ映画に胸踊らせたファンの一人でもあった。(大阪府出身)
優秀賞新藤栄作(俺ら東京さ行ぐだ)


「俺ら東京さ行ぐだ」は、初の主演作品である。NHK朝のテレビ小説「心はいつもラムネ色」の主役に、全国オーディションで抜擢されたラッキーボーイだ。高校時代に空手部、大学中退後、プロのキックボクシング界に籍を置いた変り種。それだけにがっしりした体躯である。甘いマスクと、野性味を兼ね備えた好青年だ。(和歌山県出身)
優秀賞山下規介(ビッグ・マグナム 黒岩先生)


「ビッグ・マグナム黒岩先生」は「廃市」に続く映画出演作。テレビでの活躍も多く、レギュラー番組に「スーパーポリス」「アイアイゲーム」。その他、NHKの朝のテレビ小説「澪つくし」等にも出演した。ちなみに、この「澪つくし」の作者、ジェームス三木は父である。ピアノを弾き、スポーツは万能という現代的な青年である。(神奈川県出身)
優秀賞河野美地子(瀬降り物語)


中島貞夫監督作品「瀬降り物語」でデビューを飾った。中島監督が「この映画のために」と他の仕事を一切させずにおいたという“秘蔵っ子”だ。映画では、山の民の戒律を破ってまでも一人の青年を情熱的に愛する野性的な娘を演じた。明るい性格と芯の強さに、中島監督直伝の映画魂が加わった期待の新人である。(大分県出身)
優秀賞沢口靖子(ゴジラ)


第1回東宝シンデレラ女優に選ばれて以来の成長はまことに素晴らしく、大物女優としての将来に日本映画界が寄せる期待は大きい。若さに似合わぬ落着きと、日本女性の情趣を備え、年齢、男女の区別なく支持されている。「ゴジラ」でもその美しさが光っていた。清楚で古風とも思える情感を漂よわす美しさなのである。(大阪府出身)
優秀賞早見優(キッズ)


「KIDS/キッズ」は初の主演作。歌にドラマに大活躍のアイドルとして多くのファンを持つが、この作品は一般的なアイドル映画のイメージを突き破る優れた映画作品として注目された。他に、映画出演作として「零戦燃ゆ」があり、映画での活躍が期待される若手女優として、これからが非常に楽しみな人である。(ハワイ出身)
特別賞企画賞
優秀賞鹿内春雄


映画製作が宣伝興行を含めた総合計画を必要とする現在、フジ・サンケイグループの総帥として一貫した情熱と実行力を兼備し、先年の「南極物語」に引き続き、「ビルマの竪琴」の記録的成功をもたらし日本映画に活力を吹き込んだ功績による。
優秀賞原正人


外国との文化交流によって培った、映画製作者としての実力を諸作品(「乱」「銀河鉄道の夜」等)によって結実させた功績は大きい。
優秀賞奥山和由


「恋文」「カポネ大いに泣く」「聖女伝説」「Vマドンナ大戦争」「キッズ」等を企画プロデュースし、又、その作品の面白さとユニークさという点で評価された。
特別賞特殊技術賞
優秀賞特技監督・中野昭慶をはじめとする「ゴジラ」特殊技術スタッフ


「ゴジラ」は特技を生かした話題性のある作品として国内外で多大な評価を得た。今回、当作品の特技スタッフ一同の功績に対して本賞が贈られることとなった。
話題賞

作品部門:「CHECKERS in TAN TAN たぬき」


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俳優部門:ビートたけし(「夜叉/哀しい気分でジョーク」)


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