日本アカデミー賞協会事務局
昨年3月11日の東日本大震災で被災された方々に心よりお見舞い申し上げると共に、皆様の安全と一日も早い復興をお祈り申し上げます。
あの、震災からまもなく1年が経とうとしています。
この1年は多くの映画人が「映画に何ができるのか」を自問した年でした。
今回の授賞式では多くの映画会社、映画人たちが、復興支援の一環として行ってきた様々な取り組みに関して特別コーナーを設けてご報告いたします。
また、当協会は復興への願いと支援の気持ちをこめて、受賞者、来場者がつけるコサージュとリボンを作りました。コサージュには被害の大きい宮城、岩手、福島の復興を願い、三県の花をイメージした花と大漁旗リボンをデザインしました。コサージュとリボンどちらも、被災地の方々に協力いただき手作りしました。3か所の被災地の方々が協力くださったその様子を報告します。
>>′12年1月28日、仮面ライダーで知られる故・石ノ森章太郎氏のふるさと
宮城県石巻市渡波町・仮設渡波第一団地へ
>>′12年1月29日、海の女は強かった!
岩手県陸前高田市広田町でコサージュ作り、そして新年会!?
>>′12年2月12日、東京都・汐留、電通本社ビルで
福島県からの避難している親子が手作り
>>ディナー会場及びパーティ会場の飲み物に宮城県一ノ蔵酒造の【すず音】
●′12年1月28日、仮面ライダーで知られる故・石ノ森章太郎氏のふるさと
宮城県石巻市渡波町・仮設渡波第一団地へ
宮城県石巻市は漫画家、故・石ノ森章太郎氏のふるさと。所縁の作品を展示する石ノ森章太郎ふるさと記念館も被災した建物のひとつです。
その記念館を見ながら向かったのは市内の渡波町。仮設渡波第一団地に住むお母さんたち総勢11名がコサージュのパーツ作りに協力くださいました。
「何もかも流されちゃって、こんな道具しかないけどできるんかい?」と小さな裁縫セットを片手にお母さんたちが次々と集まり、仮説団地の集会所は一気に明るく元気な雰囲気になりました。まるで被災したのがウソのような明るさです。
使用した大漁旗は、現地で活動するNPO法人オンザロードの田中鉄太郎さんから提供いただきました。田中さんがボランティアで石巻を訪れたのは昨年4月。そのとき、瓦礫の山の中にひと際目立つ色の布を見つけます。のちにそれが大漁旗というもので初出港を祝うために船に飾られるものだと知り、その大漁旗で何かできないかと考え始めました。瓦礫撤去作業をしながら300枚近い大漁旗を集め、持ち主を探し出し、この大漁旗をもう一度復活させるための活動をしています。その一つとして大漁旗をリメイクして製品を作るブランド「funade~船出~」をこの3月11日に立ち上げます。そして、仮設住宅に住むお母さん方にその製品作りに参加してもらい、新たな職につなげる活動をしているのです。
渡波町で参加してくださったお母さん達
作業しながらおしゃべりが止まることはありません。しかし、時折苦しい胸のうちを語ってくださることも・・・・・・。
「こうやってみんなで集まって話したり、何かモノづくりしている間は何も考えなくてすむから気が休まります。仮設の部屋でひとりになると、先のことを考えて泣いちゃうんだよね」
大漁旗のコサージュをつけた俳優たちを見て、この日のような笑顔をまた浮かべてほしい、少しでも楽しい気持ちを持続させてほしい、そう思ってやみません。
●′12年12年1月29日、海の女は強かった!
岩手県陸前高田市広田町でコサージュ作り、そして新年会!?
岩手県陸前高田市広田町は、定置網漁や牡蠣やホタテ、ワカメの養殖とその加工業が盛んな町でした。3.11の津波は広田湾に大打撃を与え、船も養殖の筏もすべてが流され、沿岸にあった海産加工所はほぼ全滅。現在、船を失った漁師や加工所で働く女性たちが職を失っています。
震災後、漁港町・広田町では広田女性会、広田湾漁協女性部、山田編み物チームの3つグループが復興のために一つになり広田町女性部を結成しました。今回のコサージュのパーツ作りには、その中の広田湾漁協女性部代表・熊谷眞美子さんの声掛けで女性部ほぼ全員が参加してくださいました。
こちらの作業で大漁旗を提供してくださったのは船主で漁やワカメの養殖を営む佐々木信雄さん(69歳)。所有していた「明神丸」は津波で流されてしまいましたが、新たに船を購入し再建に向けて息子さんと共に奮闘しています。この日も、新ワカメをもってコサージュ制作の作業場となった公民館に立ち寄ってくださいました。
そして、もう1枚の大漁旗を提供してくださったのは、震災の日に修理を終えたばかりの定置網漁の14t船6隻を失くした村上福一郎さん(84歳)です。広田湾漁協組合は、その年最高の水揚げをした船に祝いの旗を贈ります。村上さんが提供してくださった旗は、何度も授与されたその旗のうちの1枚です。
広田湾漁協女性部のみなさん
作業が終わると、誰ともなく持ち寄ったご馳走がテーブルに並び、私たちスタッフまでその郷土料理をご馳走になってしまいました。佐々木さんがもってきてくださった生ワカメの新鮮さにも舌鼓です。
別れ際には「また暖かくなったら来てね!」とお母さんたちみんなが言ってくださいました。
●′12年2月12日、東京都・汐留、電通本社ビルで
福島県からの避難している親子が大集合!
一方、授賞式に来場するお客様が胸につけるリボンは、福島県から関東地区に避難している親子に協力していただいて制作しました。材料には、福島の復興を願い福島県二本松市に伝わる伝統和紙「上川崎和紙」を使用しています。
この日集まったほとんどの方がお互いに初対面。しかも慣れない作業に戸惑った方もいらしたようです。しかし、「関東には知っている人がいないので、このような機会で福島の人たちに会えてうれしいです」「子どもが小さいので不安でしたが、今日は育児のこと、健康面でのことなど情報交換ができました」など会話が途絶えません。そして、皆さん語るのはこれからの福島のことです。みなさん福島への想いを、それぞれ抱えている声をたくさんいただきました。
また、当日は作業室とは別室で子どもたちのために「ドラえもん のび太と鉄人兵団」と「それいけ! アンパンマン すくえ! ココリンと奇跡の星」を上映。子どもたちは夢中になって映画を楽しんでいました。
●ディナー会場及びパーティ会場の飲み物に宮城県一ノ蔵酒造の【すず音】
ディナー会場及びパーティ会場の各会場での乾杯には、これまでシャンパンを提供していました。今回は宮城県一ノ蔵酒造の発泡日本酒‘すず音’を乾杯酒として用意いたします。
一ノ蔵酒造も震災当日商品破損も含め、麹や作業中の米の廃棄を余儀なくされる被害を受けました。
コサージュやすず音などを通し、来場者すべてが被災地に向け、共に復興を願い気持ちをもつ授賞式にしたいと考えています。
また、今回3か所でコサージュ、リボン作りを通じ“何かを楽しむ‹ “誰かとともに時間を過ごす”“何かに夢中になる”、それは「映画を楽しむ」と同じことだと感じます。そういった時間の提供もまた、復興支援なのだと感じました。
被災地への支援はまだまだ必要です。当協会は日本アカデミー賞受賞作品の上映会を催すなど、今後も様々な支援を考えていきたいと思っています。