第19回日本アカデミー賞優秀作品一覧に戻る
日時: 1996(平成8)年3月23日(土)
場所: 国立横浜国際会議場 国立大ホール
司会: 西田敏行/かたせ梨乃

優秀作品賞
最優秀賞/優秀賞
(C)(株)近代映画協会作品

最優秀作品賞 「午後の遺言状」


舞台女優、別荘の管理人、専業主婦と立場は違うが、同じように人生の黄昏を迎えた三人の女性を主人公に、“老い”を見つめた問題作。長年、夫婦として、同志として映画人生を歩んできた新藤兼人、故・乙羽信子両氏の最後の共同作となったが、本作品にこめられた二人の情熱が三女優の熱演とともに感動をよぶ。(近代映画協会)

優秀作品賞 「きけ、わだつみの声」


終戦50年を記念して、太平洋戦争下の若者の生きざまを今の視点で捉え、戦地に散っていった青春を描く感動作。学徒出陣した若者の遺稿集「きけわだつみのこえ」を基に、1ヶ月に渡る猛暑のフィリピンロケを敢行。リアルな映像が、観るものに戦うこと、平和、自由であることの意味を再び問い直した。(東映=バンダイ)

優秀作品賞 「藏」


これまでに「鬼龍院花子の生涯」「陽暉楼」など数々の小説をヒットさせてきた宮尾登美子の作品、7作目の映画化。舞台は雪深い新潟・亀田の蔵元。父の意志を継いで、女性で初めて蔵元となったヒロインの鮮烈な生き様を、美しい映像の中に綴った作品。俳優・松方弘樹の3本目のプロデュース作品としても話題になった。(東映=松プロダクション)

優秀作品賞 「写楽」


わずか10ヶ月間という短期間に140数点の絵を残して姿を消した謎の絵師・写楽。歴史上のミステリーに、エネルギッシュに花開いた江戸文化の主役たちを絡めて描く群像劇。写楽研究家として映画化に向けて奔走したプロデューサー・フランキー堺氏の情熱が光る。(西友=カルチャー・コンビニエンス・クラブ=堺綜合企画=表現社=テレビ朝日)

優秀作品賞 「Love Letter」


山の遭難事故で婚約者を亡くした女性が、今は亡き恋人に一通の手紙を出した。来ないはずの返事が届いたことから過去への旅が始まる。テレビドラマやCF などでその才能が注目されていた岩井俊二監督の劇場用長編デビュー作。監督自ら手掛けた脚本で、相手が不在の恋愛というかつてないテーマに挑んでいる。(フジテレビジョン)
優秀監督賞
最優秀賞新藤兼人「午後の遺言状」


愛妻そして同志である、乙羽信子氏との別れの時を目前にしながらの映画作りに挑んだ「午後の遺言状」で、第1回以来の監督賞受賞を果たした。自ら手掛けたシナリオで、老いをいかに生きるかという人間にとって普遍的なテーマを真摯に見つめつつ、撮影当時82歳という年齢を感じさせない軽快で洒脱なタッチの人間讃歌に仕上げた会心作である。衰えることのない創作意欲に、次回作が期待される。(1912年 広島県)
優秀賞熊井啓「深い河」


「サンダカン八番娼館」「ひかりごけ」等、常に人間の心理の奥底にある真実に取り組んできた熊井監督が「海と毒薬」に続き、遠藤周作の小説を手掛けた。インドの母なる河・ガンジス…そこに何かを求めてやって来た人々を通して「人が生きるために最も大切な宝とは?」を問うた小説「深い河」。この深遠なテーマを、壮大なスケールの映像と共に見事に映画化してみせた。(1930年 長野県)
優秀賞篠田正浩「写楽」


最優秀監督賞を受賞した前作「少年時代」とは趣を変えた異色作「写楽」で4度目の監督賞受賞。映画化に執念を燃やし続けたフランキー堺氏の情熱に応える形で、有名無名の芸術家たちが熱い魂を燃やした江戸文化の息吹をスクリーンに焼き付けることに成功した。日本映画界を代表する監督として、一作ごとに新しい映画世界を展開させる円熟の力量がますます注目される。(1931年 岐阜県)
優秀賞出目昌伸「きけ、わだつみの声」


「天国の駅」「玄海つれづれ節」と重厚な作品で知られる出目氏が、戦後50年の節目に発表した「きけ、わだつみの声」で嬉しい初受賞。戦争映画を手掛けたのは初めてという氏だが、自由への憧憬を抱きながら死んでいった“わだつみ”の声を風化させまいとメガホンを取った。暑さとの戦いだった厳しいロケにも負けない力強い映像が観るものに感動を呼ぶ。(1932年 滋賀県)
優秀賞降旗康男「藏」


「駅STATION」「あ・うん」など、男女の機微をしっとりとした映像に焼き付けてきた降旗康男監督が、この「藏」で宮尾文学に挑戦。旧家の中に生きる女たちの葛藤、恋、情熱を見事に描いてみせた。「各人のドラマを美しい雪景色で包み込むことができた作品に仕上がったのではないか」と監督。その言葉通り、新潟にロケした雪の風景が美しい印象を残す作品となった。(1934年 長野県)
優秀脚本賞
最優秀賞新藤兼人「午後の遺言状」


シナリオライターとしてもキャリアを誇る新藤氏だが、「午後の遺言状」のテーマ“老人の生きがい”については「老人にならないと書けない。年齢に合ったものが作れて嬉しい」と振り返る。これまでに手掛けたシナリオは250本以上。そのうち100本がオリジナルだが「シナリオライターは、オリジナルのいい脚本を書くことが念願。今回の受賞はその意味でも嬉しいです」と語る。(1912年 広島県)
優秀賞奥寺佐渡子「学校の怪談」


「お引越し」で初めて映画脚本を手掛けたという新進気鋭の脚本家。今回「学校の怪談」で学校の旧校舎に閉じ込められた教師と生徒達の不思議な1日を生き生きと描き出し、初の優秀賞受賞となった。「特撮など、画で派手に見せる作品なので、ドラマの部分をしっかりさせようと、気をつかいました。助言を与えて下さった平山監督、スッタフの方々に感謝しています。」と奥寺氏。(1966年 岩手県)
優秀賞高田宏治「藏」


脚本家としてベテランの域に達した感のある高田氏が、「鬼龍院花子の生涯」「陽暉楼」などに続き宮尾文学四度目の脚本化に挑んだ。「小説『藏』を読んだ時から自分が脚本をやりたいと思っていました。今回は“日本の原風景の中に展開する純愛”をテーマに思い切って自由にやらせてもらいました。私を信頼して、まかせてくれた宮尾さんに感謝しています」と高田氏。 (1934年 大阪府)
優秀賞早坂暁「きけ、わだつみの声」


戦後50年の節目の年にシナリオ界の重鎮が手掛けた「きけ、わだつみの声」は、若くして“死”と向かい合わなければならなかった学徒兵たちの現実を描き出した。“生と自由への願望”を抱えながら戦場に散っていった若い命…。早坂氏は彼らを描くことで、戦争のイメージすらわかない今の若い人たちに、何かを考えるきっかけを与えることができれば、と考えたという。 (1929年 愛媛県)
優秀賞皆川博子/堺正俊/片倉美登「写楽」


直木賞作家の皆川氏がシナリオ初挑戦ということで話題に。“視覚型”という皆川氏、本作でも「とんぼを切る主人公の姿が初めに浮かび、楽しくノリに乗って書けた」と振り返る。(1930年 京城・現ソウル出身) (1929年 鹿児島県) (1964年 東京都) (1931年 岐阜県)
優秀主演男優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞三國連太郎「三たびの海峡」


すでに主演・助演あわせて数度の受賞を果たしている大ベテラン。今回は、第二次世界大戦から現代までの時代を背景に、日本と韓国の間で揺れ動いた男の生涯を描いた話題作「三たびの海峡」での受賞となった。日本人女性を愛しながらも、日本という国を憎む主人公…この男の胸に去来する複雑な心情を、ベテランならではの卓越した演技で見事に表現してみせた。(群馬県出身)
優秀賞中井貴一「マークスの山」


テレビドラマやCMに引っ張りだこの人気俳優。昨年は「四十七人の刺客」で見事に最優秀助演男優賞を獲得したが、今年はベストセラー推理小説を映画化した「マークスの山」で、主演男優賞の受賞となった。作品の中では、社会の汚い裏側まで知り尽くしたはみ出しものの警部補・合田を、男っぽい骨のある演技で見せ、新境地を開拓した。若手の実力派として期待がかかる。 (東京都出身)
優秀賞中村吉右衛門「鬼平犯科帳」


歌舞伎役者としてお馴染みの人気俳優。池波正太郎原作の人気時代劇「鬼平犯科帳」のテレビシリーズに、本人の父親・先代松本幸四郎に続き主演して人気を博した。今回はその劇場版で、人道に反する凶悪な連中を憎しみを込めて追う男・鬼の平蔵を、キリリとした魅力で演じた。また、部下や妻に見せる人情味のある顔も味わい深く、役者としての奥の深さを感じさせる。 (東京都出身)
優秀賞松方弘樹「藏」


出演作品数がすでに130本を超えるという日本映画界の顔となる役者である。これまではヤクザ映画や時代劇のイメージが強かったが、「藏」では旧家の当主という新タイプの役を演じ、その押さえた演技が高く評価された。また今回はエグゼクティブプロデューサーとしても作品にかかわっている。「家族のあり方を提示している『藏』で、家族を見直してみたかった」と松方氏。 (東京都出身)
優秀賞渡部篤郎「静かな生活」


これまでにも「橋のない川」「ナースコール」等で、キラリと光るものを見せてきた。今回は「静かな生活」で、純粋無垢な魂を持つ障害者・イーヨーという難しい役どころを演じ、初の優秀賞受賞となった。伊丹監督がその目に一目惚れしたというだけあって、その巧みな演技は見る者に深い感動を与えた。独特の個性を持った役者として今後の活躍が期待される。(東京都出身)
優秀主演女優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞浅野ゆう子「藏」


数々のテレビドラマに出演し、“トレンディードラマ”の中心的女優として活躍している注目の女優。「藏」では、テレビとはガラリと違った演技を見せ、今回が嬉しい初受賞となった。亡き姉の夫を影ながら慕い、支える女性・佐穂。彼女の耐える恋を、しっとりした魅力で演じている。大人の女を演じることのできる女優として、今後の活躍が明待される。(兵庫県出身)
優秀賞秋吉久美子「深い河」


1974年に藤田敏八監督の日活“青春3部作”で映画デビュー。その新鮮で繊細なキャラクターが注目された。以後、女優として数々の映画作品に出演し、1 作ごとにその魅力を増している。「深い河」では、人生に迷い真実を求めるヒロインを熱演。クライマックスの沐浴シーンでは、体調の悪さをおして撮影に挑んだという。彼女の女優魂を感じさせるその沐浴シーンが感動的だ。 ( 静岡県出身)
優秀賞沢口靖子「ひめゆりの塔」


第9回の新人賞受賞以来、着実に映画女優の道を歩み、「ひめゆりの塔」で念願の主演女優賞を手にした。本作では太平洋戦下の沖縄で、無私の献身の果てに命を散らした若き乙女たち、“ひめゆり部隊” を率いる女教師役を熱演。生徒を守る立場でありながら、前線に送り出さなければならなかった指導者の苦悩を見事に演じてみせた。(大阪府出身)
優秀賞十朱幸代「日本一短い「母」への手紙」


「日本一短い『母』への手紙」で4回目の主演女優賞を獲得した。一大ムーブメントを起こした“一筆啓上運動”という手紙コンクール。その秀作の一つをもとに製作された本作では、家族を捨て、女として生きる道を選んだ“母”を演じた。長い離別の末に再会した娘と息子を前にしたとき、涙で母親という存在に戻っていく姿が感動を呼んだ。(東京都出身)
優秀賞羽田美智子「人でなしの恋」


昨年「RAMPO奥山監督版」で新人俳優賞を受賞したのに続き、今回は「人でなしの恋」で、見事に主演女優賞を獲得した。婚礼から半年…夜な夜な床を抜け出して土蔵へと通う夫の秘密を知ろうとする若妻…。この作品の中では、恋する女のせつなさ、こわさをしっとりした感性で演じている。女優としての成長ぶりは驚くほどで、将来が大きく期待される女優の一人である。 (茨城県出身)
優秀助演男優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞竹中直人「EAST MEETS WEST」


俳優として、また監督として、数々の作品を成功させてきた、今最も波に乗っている人物の一人。岡本喜八監督の奇想天外なウェスタン「EAST MEETS WEST」で、大西部に現れた忍者という現実離れした役回りながら、持ち前のパワフルさと個性で、観客の心をガッチリとつかんでみせた。日本の映画界を代表する役者として、今後の活躍が一層期待される。(神奈川県出身)
優秀賞今井雅之「静かな生活」


テレビ、映画で味のある演技を見せているが、自衛隊出身いう一風変わった経歴の持ち主。自作自演の舞台劇「ウインズ・オブ・ゴッド」で高い評価を得、アメリカ公演も成功させた旺盛なチャレンジ精神を持つ。「静かな生活」では障害者・イーヨーの水泳コーチを独特の解釈で演じ、すぐれた素質を感じさせてくれた。将来が楽しみな役者の一人だ。(兵庫県出身)
優秀賞豊川悦司「Love Letter」


第16回に新人賞を受賞し、「Love Letter」で助演男優賞の初受賞を果たした。本作では想いを寄せる主人公の女性のことを、大きな愛で見守る男を演じている。長身の恵まれたルックスとクールな男の魅力を兼ね備えた大人の役者。95年はこの人の年といっていいほどの活躍ぶりだったが、これまでにないその個性には、今後もますます注目が集まりそう。(大阪府出身)
優秀賞萩原聖人「マークスの山」


キリッとした顔だちと、その爽やかさで多くの女性ファンを持つ。最近では男らしい精悍さも加わり、将来が楽しみな俳優の一人として大きく成長している。第 17回には新人俳優賞を獲得したが、今回「月はどっちに出ている」の崔洋一監督と再び組んだ「マークスの山」で助演男優賞の受賞となった。本作では、心を病んだ青年という難しい役どころに挑戦している。(神奈川県出身)
優秀賞フランキー堺「写楽」


代表作「幕末太陽傳」の撮影時に、故・川島雄三監督から写楽を主人公にした映画の構想を聞かされたことがきっかけで、写楽研究にのめり込む。以来30年間念願としていた映画「写楽」を、プロデューサーとして世に送り出すことに。作品中では自ら江戸出版界の奇才・蔦屋重三郎役を熱演。華やかな寛政文化を支え、若き才能を惜しみなく支援した男に扮している。 (鹿児島県出身)
優秀助演女優賞
(C)日本アカデミー賞協会
最優秀賞乙羽信子「午後の遺言状」


「午後の遺言状」で第1回以来2度目の、そして最後の受賞となった。末期のガンに侵されながら撮影に参加、作品を見事に完成させてゼロ号試写を鑑賞した後、1994年12月22日に逝去された。“老い”をどう生きるかをテーマにした本作で、別荘の管理人としてひっそりと余生を送りながらも、胸の中に熱いものを持ち続ける女を演じた。その豊かな表現力が深い感動を与える。(大阪府出身)
優秀賞一色紗英「藏」


現代っ子らしいハツラツとしたさわやかさで若者に人気の女優の一人。平成3年にドラマデビューし、その後も、ドラマ、CM等、テレビを中心に活躍してきた。映画は今回の「藏」が初出演となるが、目の病に侵されながらも、内に激しい情熱を秘めて強く生きる女性・烈を演じ、好評を得た。映画初出演にもかかわらず見せたのびやかな演技は、大きな将来性を感じさせてくれる。 (東京都出身)
優秀賞鶴田真由「きけ、わだつみの声」


成長株として近年注目される女優の一人。「きけ、わだつみの声」で初受賞を果たした。本作では自ら志願して従軍看護婦になり、最前線で傷ついた兵士の心までも癒そうとする看護婦を演じている。灼熱のフィリピンロケにもめげず、むしろその環境によって、当時の心境に少しでも近づくことが出来たと語る。美しさと芯の強さを合わせ持った表情が魅力だ。 (神奈川県出身)
優秀賞中山忍「ガメラ 大怪獣空中決戦」


清楚さの中に、どこかキリリとした魅力を感じさせる期待の女優。1993年に「ゴジラVSメカゴジラ」に出演したのに続き、今回は「ガメラ大怪獣空中決戦」に出演。蘇った古代生物ギャオスの危険を訴える鳥類学者に扮し、芯の強さを感じさせる演技で観客の共感を呼んだ。正統的な美しさを感じさせるルックスに、演技力が加わり、今後の活躍が楽しみな若手の一人である。 (東京都出身)
優秀賞名取裕子「マークスの山」


コミカルなものからドラマチックなものまで、幅広く演じることのできる女優として、貴重な存在。第12回に続き、2度目の助演女優賞の受賞となった。「マークスの山」では、患者である青年の看護をしながら、彼の母親、姉、恋人のどれをも兼ねるような女性を演じ、その複雑な心情を見事に体現してみせた。また萩原聖人とのハードなラブシーンにも体当たりで挑んでいる。(神奈川県出身)
優秀音楽賞
最優秀賞武満徹「写楽」


現代音楽の作曲家として海外にも広くその名を知られ、数々の作品を世に送りだした氏は、先ごろ65歳の生涯を閉じられた。映画音楽においても、過去に日本アカデミー賞最優秀音楽賞受賞3回、優秀賞受賞2回という輝かしい足跡を残され、その栄誉は長く称えられるものである。今回の受賞作「写楽」では、歌舞伎、大道芸といった江戸文化を彩るゴージャスな音楽が印象に残る。(1930年 東京都)
優秀賞大江光「静かな生活」


作家・大江健三郎氏の長男。乳児の時の手術の影響で幼少時は言葉によるコミュニケーションがほとんどなかったという。11歳の頃より音楽のレッスンを受け、1992年に最初のCD「大江光の音楽」、1994年に2枚目「大江光ふたたび」を発表。大江氏の小説を映画化した「静かな生活」では、前記2枚のアルバムから氏の音楽が使用された。そのシンプルで純粋な音楽にはファンが多い。 (1963年 東京都)
優秀賞さだまさし/服部隆之「藏」


一面に広がる雪景色、その中に生きる女達のドラマを音に託して、見事な世界を築いたのが、シンガーソングライターのさだまさし氏と、新進気鋭の音楽家・ 服部隆之氏。さだ氏のメロディーに服部氏のオーケストレーションがぴったり融合し、芸術性の高い素晴らしい主題歌「烈」が産み出された。(1952年 長崎県)(1965年 東京都) 「ひめゆりの塔」で手掛けた映画音楽は 303本目という映画音楽界の第一人者。若手をリードする立場として「1作1作を大切に、シンセサイザーでは出来ない正攻法の音作りを心掛けている」と語る。特に今回は、日本が世界に誇れる独特の旋律を持つ沖縄音楽にこだわり、「花」という主題歌を採用することからはじめたそうだ。心に深く刻まれる佐藤ワールドがまたひとつ生まれた。
優秀賞佐藤勝「ひめゆりの塔」


(1928年 北海道)
優秀賞REMEDIOS「Love Letter」


「Love Letter」で初受賞。その受賞に寄せて「岩井監督の想像に引かれ1993年から共に息吹を吹き込み、残してきた作品のオーラが世界の人々に渡っていくことを祈っています。『Love Letter』はその年で一周忌を迎えた母の、天国からの微笑みを受けて手掛けました。スコア譜を書いた実弟MARIO UMALIと指揮者・中谷先生を始めとするスタッフの皆様の志に感謝します」とコメント。
優秀撮影賞
最優秀賞鈴木達夫「写楽」


受賞は4度目というベテラン。「少年時代」でも名コンビぶりを見せた篠田監督の「写楽」に参加。次々と新しい文化を生み出していった江戸の芸術家たちをエネルギッシュに描いた本作で、その若い息吹を見事にフィルムに焼き付けた腕が光る。また、今回はコンピューターによるデジタル合成技術の採用など随所に新しい映像作りへのチャレンジもみせている。(1935年 静岡県)
優秀賞飯村雅彦「ひめゆりの塔」


太平洋戦争下における沖縄で、悲劇的な青春を送ったひめゆり部隊の真実を描いた「ひめゆりの塔」で受賞。「現実に起きた話を丹念に表現することを目標にしていました。当時沖縄で実際に使われた壕などを開放して撮影することで、現実感が絵に出たと思います」と振り返る。全篇の2/3をロケが占め、現実の戦場を使った撮影では、祈りを捧げながらカメラをまわした思い出も。(1928年 栃木県)
優秀賞栃沢正夫「深い河」


熊井啓監督とは「海と毒薬」以来「ひかりごけ」までの全ての作品の撮影を担当している。構図の設定や移動他、粘り強い撮影に定評がある。今回の「深い河」では、「劇映画ではありますが、インド、ベナレスの撮影ではいつもワンチャンスをものにするという姿勢が必要でした」と栃沢氏。ドキュメンタリーの経験を活かしたその撮影方法が、作品に奥行きを与えている。(1932年 岩手県)
優秀賞原一民「きけ、わだつみの声」


戦後50年の節目に製作された「きけ、わだつみの声」での受賞に「記念すべき年に身に余る光栄です」と感想を語る。「戦争映画はいまや時代劇で、戦争を知らない世代がスタッフの大半を占めます。そのなかでいかに実話を曲げずに映像化するかが、難しいところでした」と振り返った。デジタル合成やCGの利用など、新世代の映像作りも意欲的に手掛けるベテランである。(1931年 東京都)
優秀賞森田富士郎「藏」


今回の「藏」で8度目の受賞となる大ベテラン。「日本アカデミー賞は同じ映画人の投票によって決まるもの。選ばれて大変嬉しく思っています。撮影の目というものは、お客様の目である…それに自分の個性を載せる…常にそういう気持で取り組んでいます」と森田氏。“雪”という自然を相手に振り回されたというが、その静謐かつ情熱的な映像が作品に深みを与えている。(1927年 京都府)
優秀照明賞
最優秀賞水野研一「写楽」


爛熟の江戸文化をスクリーンに再現した意欲作「写楽」で3度目の受賞を果たした。今回の作品は広島・みろくの里に組まれた広大なオープンセットでの2ヶ月に渡る撮影が大きな話題を呼んだが、そのオープンセットの最影には少なからず苦労したと振り返る。だがベテラン・カメラマン、鈴木達夫氏との仕事は楽しく、よい刺激を受けたと語った。 (1951年 東京都)
優秀賞大澤暉男「ひめゆりの塔」


「ひめゆりの塔」で昨年に続き、2年連続の優秀賞受賞を果たした。「この作品は映画界でも稀な4回目の映画化です。“戦争”“沖縄問題”“生きること” 等、今日まで続いているテーマを、現代に伝えられるよう、作品に取り組みました」とその撮影を振り返った。少女たちの屈託のない笑顔と、その後に来る悲劇の対比を見事に捉え、沖縄ロケのリアルな映像などにその技術が光った。(1938年 東京都)
優秀賞島田忠昭「深い河」


「泥の河」(小栗康平監督) では最優秀賞を受賞している島田氏。今回の「深い河」ではインドに長期ロケーションを敢行し、全てを飲み込むようなインドの熱気を見事に映し出している。そのロケに関して、「仕事のうえでのとまどいはありませんでしたが、気候や食事が合わなくて苦労しました。インド独特の雰囲気、インドらしさが出せたのでは、と思いま す」と島田氏。(1937年 東京都)
優秀賞篠崎豊治「きけ、わだつみの声」


「きけ、わだつみの声」で嬉しい初受賞。寒さの厳しい日本での準備を済ませてから、今度は逆に1ヶ月に渡り乾季のジャングルの暑さと闘うという苛酷な撮影を体験。フィリピン・ロケでは、ほとんどのスタッフが体調を崩し、自身も6 キロも痩せたという。現地のスタッフとのコミュニケーションなど海外ロケならではの苦労は多かったが「苦労のかいがあった」と感慨もひとしおだ。(1939年 東京都)
優秀賞増田悦章「藏」


前回の「東雲楼女の乱」に続き森田富士郎氏とコンビを組み、今回で11度目の受賞を果した。「とにかく作品に恵まれ、ありがたい思いです。そして自分を理解してくれる監督、キャメラ、助手の方々に恵まれたことに感謝しています。こればかりは自分の力だけではどうにもならないことですから」と増田氏。ベテランらしい誠実な仕事が、作品に反映されている。(1931年 京都府)
優秀美術賞
最優秀賞浅葉克己/池谷仙克「写楽」


CMや各種広告などで特異な才能を発揮している浅葉氏と、テレビ「ウルトラマン」などの特殊撮影美術等でも知られる池谷氏。このふたりのコンビが、斬新でユニークなセンスを「写楽」で開花させた。江戸文化の一瞬のきらめきを画面に焼き付け、コンピューターを駆使して新しい映画作りにトライしたふたりの感性が光る。(1940年 神奈川県)(1940年 東京都)
優秀賞育野重一「ひめゆりの塔」


「ひめゆりの塔」で初受賞。「この撮影を担当してまず思ったのは、内地人である私がいかに沖縄での戦争を知らなかったかということ。現地でひめゆり学徒隊の方々から当時の生の話を伺い、また南風原(ハエバル)陸軍病院の洞窟、壕跡などを見て思い知らされた。資料を出来るだけ集め、当時を忠実に再現することを心掛けた」と振り返る。作品作りにかける真摯な姿勢が、感動的な画面を生んだ。(1926年 東京都)
優秀賞小川富美夫「天守物語」


昨年、伝統とSFXが見事に融合した「ヤマトタケル」で受賞したのに続き、今回は坂東玉三郎監督の「天守物語」で優秀賞を受賞。「冒頭、お城の窓から見える空や、亀姫と富姫が遊ぶ雲の上のシーン等に舞台の手法を取り入れてみました。玉三郎さんが美術に理解のある方だったので、やりがいがありましたね」と、小川氏。近年は映画だけでなく舞台美術の世界でも活躍している。(1948年 宮城県)
優秀賞中澤克巳「学校の怪談」


「家族ゲーム」「病院へ行こう!」等、常に新しさを感じさせてくれる作品に携わってきた中澤氏。今回の「学校の怪談」では、内部がどんどん変化する“お化け校舎”を不気味に、そしてシュールに表現している。「自分の子供の頃を思いだしながらやりました。ラストのほうはイメージで苦労しましたが、校舎が異次元空間に変化していくところを見て欲しいと思います。」(1954年 京都府)
優秀賞西岡善信「藏」


日本映画界の美術を代表する大ベテラン。日本的な美の創造には定評があり、常に高い評価を得ている。「今年担当した3作品中、『藏』で選ばれたことは大変幸せに思います。と同時に、仕事は“丹念”に時間をかけてやるべきだと自戒しています。共に参加して頂いた美術関係の人達にあらためて御礼申し上げます」と、その喜びを語ってくれた。(1922年 奈良県)
優秀録音賞
最優秀賞瀬川徹夫「写楽」


歌舞伎や大道芸などの華やかな江戸文化を描き出した「写楽」で2度目の受賞。今回の作品は、どのシーンも同時録音で、採った音をドルビーステレオにいかに上手く取り入れるかなど、苦労は多い分、面白い仕事だったと振り返る。デジタルの機器を現場に取り入れ、最先端の技術を導入しての撮影は、ベテランにとっても刺激の多い現場だったそうだ。(1943年 岩手県)
優秀賞池田昇「ひめゆりの塔」


40年近い映画人としてのキャリアを誇るベテラン。「ひめゆりの塔」で念願の初受賞を果たした。「これまで一つ一つの仕事を一生懸命にやってきました。いまでも毎日が勉強であり、挑戦です。今回の受賞は録音スタッフを始めとして、すべてのスタッフや俳優が力を出し切った結果と受けとめています。よい作品に恵まれました」と喜びを語った。(1938年 東京都)
優秀賞伊藤宏一「藏」


これまでに「吉原炎上」「江戸城 大乱」等、スケールの大きい作品を手掛けてきた伊藤氏。「私にとって『藏』は生涯忘れ得ぬ作品です。現場の録音、仕上げの整音、最終段階の光学録音等、映画のレコーディング作業を全てやったという満足感で一杯です」と振り返る。「これからも日本映画発展のため録音という立場から携わっていきたいと思います」と、その思いを語ってくれた。 (1940年 京都府)
優秀賞柿沼紀彦「きけ、わだつみの声」


「きけ、わだつみの声」では、フィリピンロケでの暑さとの闘いが、映画生活35年の経験の中でもとりわけ印象深かったと振り返る。初受賞については「大変光栄です。これからも一層努力していきたいと思います。スタッフ・キャストの皆様ありがとうございました」と感想を語った。ほとんどが同時録音だったフィリピン、日本のロケとも車の音と人の話し声に苦労したとか。 (1940年 東京都)
優秀賞宮内一男「ゴジラVSデストロイア」


長年、多くのファンに愛されてきた“ゴジラ”シリーズ。そのゴジラの死を扱った話題の大作「ゴジラVSデストロイア」で2度目の優秀賞受賞となった。「今回はゴジラの最後ということで、熱が入りました。シリーズ物は、常に前作以上のものが期待されるので、そういう意味では手が抜けません。これまでの経験に新しいものをプラスした音作りをしました」と宮内氏。 (1940年 埼玉県)
優秀編集賞
最優秀賞篠田正浩/阿部亙英「写楽」


篠田氏と組んで初受賞した阿部氏は「ベテランのスタッフに引っ張ってもらったおかげです。もっと頑張れ、と声をかけられたような、新人賞を頂いたような気持ちです」と喜びを語った。1995年は5作品を手掛け、「才能ある人々と出会えたラッキーな年」と振り返る。篠田氏との出会いは助手時代に関わった「少年時代」から。(1931年 岐阜県) (1960年 秋田県)
優秀賞長田千鶴子「ゴジラVSデストロイア」


第一線の編集者として、そのキメの細かい仕事ぶりが高く評価されている。昨年「四十七人の刺客」で最優秀賞を受賞したのに続き、今回の「ゴジラVSデストロイア」で4度目の受賞となる。「ゴジラの最後を飾るという大きな作品を手掛けることができて大変嬉しく思います」と、その喜びを語ってくれた。希少な女性編集者として今後の活躍がますます期待される。 (1942年 福岡県)
優秀賞川島章正「GONIN」


感性を活かした仕事ぶりで、近年活躍めざましい川島氏は、「GONIN」で5 度目の受賞となった。「5年連続で受賞できたことを大変嬉しく思っています。今回は対象作の『GONIN』を始め、『サンクチュアリ』『学校の怪談』『EAST MEETS WEST』『ひとでなしの恋』…すべての仕事に対しての受賞と思っています。仕事に臨む態度は常に一緒です」と語る。 (1950年 東京都)
優秀賞玉木濬夫「藏」


目の不自由な女性・烈、耐える恋に生きる佐穂など、女達の微妙な心の動きを見事な編集で紡ぎだし、第11回に続き2度目の受賞となった。「今回は初めから手応えがありました」と玉木氏。後半のクライマックスでは吹雪のシーンで日本では初めてのCG機“シネオン”を使用。感動的なシーンを産み出した。「あの時の苦労が鮮烈に思いだされます」と振り返る。 (1939年 愛媛県)
優秀賞渡辺行夫「午後の遺言状」


「午後の遺言状」で初めての受賞。新藤監督とはこれまでも何度か組んでおり、今回も「監督の演出がカチッとしているので、その意向を汲んで素直につなぎました」と振り返る。初受賞には「思いがけないことで驚きました。作品を手掛けているときには、スタッフの皆様からいただいた助言がとても参考になりました」との感想を。 (1952年 新潟県)
優秀外国作品賞
最優秀賞ショーシャンクの空に


ホラー小説の帝王スティーブン・キングの、非ホラー小説を映画化。殺人の罪を着せられて刑務所に投獄された青年を中心に、塀の中の男達の逸話と20年以上にわたる男の友情が、ヒューマンなタッチで語られていく。主人公に扮したティム・ロビンスと、物語の語り手となるモーガン・フリーマンの競演も見ごたえたっぷりだ。(松竹富士)
優秀賞アポロ13


1970年4月11日、アポロ13号は宇宙空間で爆発事故に遭遇、果たして乗組員たちの命は…? 実際に起こった事件を素材に、宇宙飛行士たち、地上のスタッフたちの葛藤がスクリーンいっぱいに描き出される。主演のトム・ハンクスを始め出演者の熱演が感動を呼んだ。ロケットの発射シーンなど、迫力あふれる特撮映像も見もの。 (UIP)
優秀賞フォレスト・ガンプ 一期一会


少し知能が低い上、脚にも障害を持つ少年フォレスト・ガンプ。しかし彼は、その純真な心でフットボール選手の花形となり、ベトナム戦争の英雄となっていく…。トム・ハンクスのとぼけた演技とファンタジックなストーリーが受けて世界中で大ヒットした感動作。ケネディ大統領と握手する特撮シーンも話題になった。監督はロバート・ゼメキス。 (UIP)
優秀賞マディソン郡の橋


クリント・イーストウッドが監督・主演、相手役に演技派メリル・ストリープを迎え、世界的ベストセラー小説を映画化した話題作。農家の主婦として平凡に暮らす女とカメラマンとして世界中を飛び回る男との束の間の、そして真実の恋。静かに胸を打つ大人のためのラブロマンスに仕上がっている。アイオワ州にロケした風景も美しい。(ワーナー)
優秀賞レオン


「グレート・ブルー」「ニキータ」等の作品で熱狂的なファンをもつリュック・ベッソンが、新たに描いた新感覚のアクション作。ギャングに両親を殺され復讐を誓う少女、そして彼女に殺しのテクニックを教えていく殺し屋…二人の微妙な関係がスピーディなアクションと共に描かれていく。少女を演じた新人ナタリー・ポートマンの演技が光る。(ヘラルド)
新人俳優賞
優秀賞柏原崇「Love Letter」


受賞作「Love Letter」では、主人公の“死んでしまった恋人の中学生時代”という役どころながら、その美少年ぶりで見るものに深い印象を残した。女性誌のアイドル募集コンテストで優勝し、デビュー。現在、ドラマやCMにひっぱりだこの人気者に成長した。恵まれたルックスと、爽やかな個性が今後も注目を集めそうだ。(山梨県出身)
優秀賞原田龍二「日本一短い「母」への手紙」


ロックアーティストとしての活動と平行して俳優としても著しい成長ぶりを見せる存在。「日本一短い『母』への手紙」では、幼いころに別れたきりの母親を探す息子役を熱演。母親の愛を求める姿が見る者に感動を与えた。また、それぞれの思いを抱きながら離れ離れに生きる家族を結び付けるための狂言まわし的役柄を見事にこなして、力強い存在感を見せた。(東京都出身)
優秀賞渡部篤郎「静かな生活」


「静かな生活」で主演男優賞とのダブル受賞を果たし、久しぶりの大型演技派の登場を印象づけた。実在する人物がモデルで、障害のある青年という難しい役どころを熱演。純粋で無垢な魂の持ち主というキャラクターを豊かな表現力で演じてみせている。長身でスポーツが得意という外見を持ちながら、アイドルとは一線を画す“役者”の香りを持った人。今後の成長が期待される。(東京都出身)
優秀賞一色紗英「藏」


すでにテレビドラマやCMでは人気の存在だったが、「藏」で初めて本格演技に挑戦。光を失う難病と闘い、女性ながら蔵元となり、伝統を守りつつ激しい恋に身をやつす…。そんな波乱の人生を送る女の半生を見事に演じ、1995年の各映画賞の新人賞を総なめにした。伸びやかな肢体とその美少女ぶりを武器にしたアイドルから、演技派女優への第一歩を踏み出した。(東京都出身)
優秀賞江角マキコ「幻の光」


現在第一線のモデルとして活躍中でありながら「幻の光」で女優へと華麗な変身を遂げた話題の人。対象作では、最愛の祖母を亡くし、その直後には夫にも先立たれてしまう若妻の深い孤独とその心象風景を静かに熱演した。抜群のスタイルと個性的なマスクはこれまでの女優とはー味違う魅力を放っている。女性層の支持も厚く、日本映画界に新風を吹き込む存在として注目されている。(島根県出身)
優秀賞酒井美紀「Love Letter」「ひめゆりの塔」


「Love Letter」では、中山美穂の少女時代を好演し、「ひめゆりの塔」ではひめゆり学徒隊の一員に扮した。こぼれるような大きな瞳と長い黒髪が魅力の正統派美少女だが、その瞳の奥からは強い意志が感じられ、少女から大人の女優への成長が楽しみな存在。すでにテレビ、CM、雑誌グラビア等では幅広く活躍中で、若い男性を中心に圧倒的な人気を誇っている。 (静岡県出身)
協会特別賞
優秀賞松野嵩志「現像・オプチカル」


1962年に東洋現像所(現IMAGICA)に入社。以後33年間にわたり、映像特殊合成等の特殊技術・オプチカル一筋に携わる。これまで「砂の器」「八甲田山」「乱」など数々の傑作を世に送りだし、近年手掛けた主な作品に「女ざかり」「居酒屋ゆうれい」「河童」「写楽」「家なき子」等がある。(1942年 石川県)
優秀賞森吉隆「現像・タイミング」


1959年に東京現像所に入社。以後37年間にわたり、カラータイミング一筋に携わる。これまで担当した作品には「男はつらいよ」シリーズや「泥の河」「四万十川」「渋滞」などがあり、数多くの傑作を手掛け、最近では「幻の光」などにその優れた手腕を発揮した。(1937年 東京都)
会長功労賞
優秀賞萬屋錦之介


父は三世中村時蔵。歌舞伎役者として嘱目されたが、20歳の時、映画界に転向。「笛吹童子」(1954)「紅孔雀」(1954)で早くもトップスターとなる。以後、「織田信長」(1956)で演技者としても高く評価され、作品の幅を広げる。代表作に「一心太助」(1958) 「反逆児」(1961)「宮本武蔵」(1961~1965)「武士道残酷物語」(1963)など。今年芸能生活60年を迎えた、戦後最大の時代劇スターである。
優秀賞高峰秀子


1929年松竹蒲田撮影所で5歳でデビューするや、天才子役の名声を得、13歳の時東宝映画に転じ「綴方教室」で初主役を射止める。以後、小津安二郎、木下惠介、成瀬巳喜男、五所平之助、松山善三など日本映画界の名匠の代表作に出演し「浮雲」(1955)等幾多の傑作で実力を発揮。1979 年に女優を引退するまでの50年間、日本映画界に尽くした功績は大きい。
特別賞企画賞
優秀賞新藤兼人「監督」


永年に亘り氏を支えてきた女優、乙羽信子氏の女優人生最後の賭けとして製作した「午後の遺言状」で見せた人生を見つめる温かい愛情は、広く大衆の心に訴え、映画界に輝かしい光明を与えた。
優秀賞フランキー堺


謎の浮世絵師「写楽」の映画化に情熱を傾けること30余年。幾多の障害を乗り越え、作品的にも興行的にも成功させた努力は、映画人としての範を示した貴重な業績であると高く評価される。
優秀賞松方弘樹/日下部五朗


「藏」のドラマ性、話題性に着目し、企画・プロデューサーとして製作全般の陣頭指揮に当たる。完成後も宣伝・動員のために全国キャンペーンに行脚し、営業成果に多大な貢献をした。
特別賞特殊技術賞
優秀賞樋口真嗣をはじめとする特殊技術スタッフ「ガメラ 大怪獣空中決戦」


緻密なミニチュア・ワークにオープン撮影を併用したリアリティある映像を再現。また、最新のデジタル・テクノロジーとの融合にも取り組み、質感溢れる造形描写に成功した。
優秀賞佐々木英世(音響効果) 「ゴジラVSデストロイア」


本作品において、音響効果の果たした役割は大きい。監督の意図する音を作り、特に特撮シーンの音や、自然の音に関しては、違和感なく、また突出もせず、非常に巧い入れかたをしてるのが印象に残る。
会長特別賞
優秀賞神代辰巳「監督」


1953年松竹に入社し、1955年に日活に移籍。1968年「かぶりつき人生」で監督デビュー後、演出力豊かに独自の男女の愛の姿を描く諸作品によって認められ、「赫い髪の女」(1979)「恋文」(1985) 等の各種映画賞受賞作品を始め、映画・テレビを通じての活躍は、病躯を押しての遺作「棒の哀しみ」に至るまで、映画への情熱の衰えを知らぬ生涯であった。
優秀賞高羽哲夫「撮影」


1948年松竹大船に入社。1963年山田洋次監督の「馬鹿まるだし」でデビュー以後、同監督作品の掛け替えなき撮影監督として1969年の生涯を大船に埋めた。その間「男はつらいよ」シリーズ 47本の全作品、「幸福の黄色いハンカチ」「学校」等の名作を担当、各種映画賞 と1992年に紫綬褒章を受け、日本人の心や山河を美しく描き続けた。
話題賞

作品部門:「君を忘れない」


俳優部門:豊川悦司「Love Letter」