第44回 日本アカデミー賞 授賞式レポート

 異例の無観客開催から1年。いまだ新型コロナ感染症の終息が見えない中、様々な感染症対策と一般観客の入場数を収容率50%以下に絞り、3月19日に無事開催された日本アカデミー賞授賞式。今回はグランドプリンスホテル新高輪国際館パミール内の隣接する二つの会場を使い、ステージのある第1会場には一般観客と技術部門各受賞者、第2会場には俳優部門並びに特別賞と作品賞の各受賞者やプレゼンターが着席。レッドカーペットや受賞の際には該当者が第2会場から第1会場に移動した上で贈賞し、両会場の模様は大型モニターを繋ぐ形で進行した。

 まずは部門ごとに受賞者がレッドカーペットに登場。すると、昨年の無観客とは違い、会場に盛大な拍手が響き渡った。その中を受賞者たちが颯爽と歩きステージ上にラインナップするとそれぞれの席へ。今年の司会は、羽鳥慎一さんと昨年、外国人俳優として初の最優秀主演女優賞を受賞したシム・ウンギョンさん。「こうした時だからこそ明るく楽しく、皆様に感動のドラマをお届けしたい」との協会メッセージを羽鳥さんが読み上げ、開幕となった。

 各俳優部門受賞者へのインタビューでは、倍賞千恵子さんが「お兄ちゃんも連れて来ました」と寅さん風のぬいぐるみ“寅チッチ”を掲げて会場を和ませ、二宮和也さんは「浅田家!」の共演者の方々から、撮影現場の空き時間にゲームばかりしていた姿を暴露されて笑いを誘うなど、羽鳥さんが言葉巧みに二つの会場を繋ぎながら様々な話題を引き出して、楽しく進行した。

 特別賞のコーナーでは、話題賞、協会特別賞、会長功労賞が贈賞された。ニッポン放送リスナーの投票で決まる話題賞では、俳優部門を「罪の声」の小栗旬さん、作品部門を「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が受賞した。「とてつもなく大きな話題作の隣に、ちょっと小ぶりな小栗旬ですが」とおどけつつも、「こんな状況の中、少しでも誰かに寄り添って、勇気や元気や楽しい時間を提供できているところに自分という存在がもしいるのだとしたら、そんな嬉しいことはないです」とコメント。そして劇場版「鬼滅の刃」からは企画の岩上敦宏さんが登壇。日本の興行収入記録を更新中の作品だけに「この1年を振り返ると、(賞を)受け取った私が言うのも変かもしれませんが、話題賞にふさわしい作品だったのかなと思っております」と述べた。

 映画製作の現場を支えるスタッフを称える協会特別賞では、池端松夫さん(背景・塗装)、納富貴久男さん(ガンエフェクト)、安彦良和さん(アニメーター・キャラクターデザイン)に贈られた。また、会長功労賞では、石原まき子さん、小山明子さん、鈴木達夫さん、前田米造さん、吉行和子さんの映画人生を振り返ってメッセージが読み上げられると、吉行和子さんが代表で登壇し、会場にいる全員が立ち上がり拍手で迎え、今ある映画界を築いてきた方々への尊敬と感謝の気持ちを表した。

 新人俳優賞は服部樹咲さん、蒔田彩珠さん、森七菜さん、岡田健史さん、奥平大兼さん、永瀬廉さんが受賞された。プレゼンターの松坂桃李さんが「この仕事はたくさんの出会いや別れが連続しますが、その分、一つ一つ積み重ねていくことで再会も増えてくる仕事だと思います。ぜひ皆さまなりの良い再会ができるような向き合い方で作品に臨んでください。皆さんと現場での再会を望んでいます」とエールを贈った。

 最優秀賞は、12部門12賞で優秀賞を受賞していた「Fukushima 50」が、監督、撮影、照明、美術、録音、そして渡辺謙さん初の最優秀助演男優賞を含む最多6部門を獲得。同作の各受賞者は、震災から10年の節目にあたる年での受賞に大きな意味を感じていた。最優秀脚本賞は「罪の声」、最優秀編集賞は「男はつらいよ お帰り 寅さん」、そして社会現象となった「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」がアニメーション作品と音楽の2部門で最優秀賞に。最優秀外国作品賞は世界の映画賞を席捲する「パラサイト 半地下の家族」が受賞した。俳優部門は、昨年最優秀助演女優賞を受賞し、今年は2作品で優秀主演女優賞受賞の長澤まさみさんが「MOTHER マザー」で初の最優秀主演女優賞に。最優秀助演女優賞は「浅田家!」の黒木華さんが3度目の受賞。草彅剛さんが最優秀主演男優賞を初受賞した「ミッドナイトスワン」は、最優秀作品賞も獲得。服部樹咲さんや内田英治監督らと共に檀上に上がった草彅さんは、自身の受賞時と同じく「マジですか!?」と発して驚きをみせた。

 コロナ禍で映画の公開や製作の延期が相次いだ中、公開ができたからこそこの場に集えた喜びや、観客に見てもらえることへの感謝を皆が共有し、檀上でもそうした思いを熱く語る姿が見受けられた。レッドカーペットから退場する際には、最優秀と優秀賞の各受賞者が互いを称え合いながら肩を並べて歩き、観客に見送られる姿も感動的であった。

 最後に島谷能成会長が「日本映画界の新しいシーズン、最高のキックオフとなりました」と語った通り、決して歩みを止めずに進み続ける日本映画界の力強さを見せると共に、観客の皆様と一緒に祝える喜びを改めて実感できた、忘れられない祭典となった。

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