レビュー一覧
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水姫クミさん(女性/30代) 「インサイド・ヘッド」 8月6日 お台場シネマメディアージュにて |
幼い頃にこの作品に出会えた子供達は幸せだなぁと思いました。今まで生きてきて、『悲しみや怒り、イライラや恐れなんかいらない。楽しいことだけでいいのに』と、ずっと30年近く感じていたことが、「インサイド・ヘッド」を一回観ただけで、『悲しみも怒りもイライラも、全部必要だったんだ。今までのことは無駄じゃなかった。悲しみなどがあるからこそ、喜びを感じられるんだ。イライラや恐れがあるからこそ、自分の心地良い物が選べて、安全でいられるんだ』と思えるようになってしまったので、どんなセラピーや本よりも、強力な作品です。 それを子供の頃に学べるのだから、羨ましいなぁと少し感じましたが、いや、大人になってからでも十分遅くない、この映画に出会えた時、そう今年の夏が、観た方の学ぶ時期なのだと。むしろ、色々経験してきた大人たちだからこそ響くのかもしれません。一見、子供向けに思えますが、それくらい深い作品です。 11才の女の子、ライリーの頭の中に存在する5つの感情たちのヨロコビ、イカリ、ムカムカ、ビビリ、カナシミを通して繰り広げられるのですが、映画の始まる前に、ピート・ドクター監督のメッセージがあり、「これは、あなたの物語です」って仰るんです。まさに、映画を観た方達それぞれの人生にフィットすることと思います。それから、DREAMS COME TRUEが書き下ろした主題歌「愛しのライリー」が、とっても愛に溢れていて、自分の感情たちの事が愛おしく思え、曲が流れただけでウルッときてしまいました。また、同時上映短編の「南の島のラブソング」も、ロマンチックで不思議で、愛が感じられて、ハワイの世界観が暑い季節にピッタリな素敵な作品です。ピクサーの作品は、映像やキャラクターが魅力的なのは勿論、それだけでなく脚本が素晴らしいので、いつも驚かされるのですが、ピクサーの方達の頭の中はどんなことになっているのでしょうか。見てみたいです! なぜ悲しみが必要なのか…この映画を観たら自分の頭の中の感情たちが、どう動くのか…ヨロコビとカナシミの大冒険をぜひ劇場に確かめに行っていただきたい作品です。 |
森泉涼一さん(男性/28歳) 「ジュラシック・ワールド」 8月9日 TOHOシネマズ市川コルトンプラザにて |
今夏は「マッドマックス」(1979~)「ターミネーター」(1983~)とリブート(再起動)映画が多数ある中で最もリブートを強く意識した作品がこの「ジュラシック・ワールド」だ。 恐竜の壮大さや脅威、弱肉強食の中生代を見事に再現したシリーズ1作目(1993)の「パーク」から全ての要素が格段にレベルアップし世界中の人々を巻き込んだ「ワールド」へと進化を遂げている。そしてリブートを顕著に感じられるのが早くも冒頭に訪れ、再園したこのテーマパークの全貌が徐々に明らかになり大きな入口がお披露目された瞬間と同時に流れるお馴染みのメインテーマには懐かしさを感じる人も多いはず。音楽だけに留まらず小出しにしてくる懐かしいロゴやジープは往年のシリーズファンにはたまらない最高のおつまみになっているのではないだろうか。 振り返るとシリーズ3作目から14年の月日が経ち、テクノロジーも大きな進歩を遂げていることから、視聴覚の面でも前作をはるかに上回り、より恐竜の存在を近くに感じられるのは今作の魅力の一つだが、これがあるからこそ人間と恐竜の密接した関係から成る絆も活きてくる。恐竜がハイブリッド化したり、人間が恐竜を調教していたりと非現実的な事をより現実的な事に近づけているのがその証拠である。 帰ってきた恐竜映画の原点とも言えるこのシリーズ最新作を今の時代だから可能である最新技術を駆使して生まれ変わった恐竜たちを観るだけでも劇場へ足を運ぶ価値のある映画です。是非、この夏は迫力ある恐竜体験を! |
坂本彩さん(女性/20代) 「バケモノの子」 7月26日 新宿ピカデリーにて |
前作から3年の製作期間を経て発表された細田守監督の最新作。「時をかける少女」(06)「サマーウォーズ」(09)そして「おおかみこどもの雨と雪」(12)、3作全て魅力的な映画でとても好きなこともあり、製作が発表されてから公開を本当に心待ちにしていました。 スタートからダイナミックな映像に引き込まれ、詳細に丁寧に描かれるアニメーションに終始心が躍らされっぱなしになります。母親と死に別れた少年・九太が渋谷から渋天街というバケモノが住む世界に迷い込むところから物語は始まっていきます。私は渋谷を訪れる度に、賑やかさと寂しさが混在し、なにか訳アリな人が自分の居場所を見いだせるような街だという雰囲気を感じます。そのため、九太が自分自身と向き合う重要な場所として渋谷という街を舞台に設定したのにはとても意味があるのではと思いました。 また印象的な画として「青い空と白い入道雲」があります。細田監督の物語の中盤によく登場するモチーフですが、主人公が成長して大きくなっていくということがよく表れていると思います。独りぼっちで生きている九太を、熊徹をはじめとした周りのバケモノたちが育てあげていく。そして、師弟関係や親子関係など、人(バケモノ?)との関係性が築き上げられていく。私たちが生きている社会もそのように出来上がっているのかもしれないなと考えさせられる物語でした。 声優のキャスティングもこの映画を楽しみにしていた理由でもあります。非常に豪華な声優陣で、どのキャラクターのイメージにも合っていて、その上で味や雰囲気があり、そのキャラクターが持つ心の寂しい部分も真っ直ぐに伝わってくる演技でとても楽しませられました。特に広瀬すずさん演じる楓の声には、背筋がシャンと伸ばされるような凛とした存在感がありとても魅力を感じました。 |