レビュー一覧
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谷村ゆりさん(女性/40代) 「アルキメデスの大戦」 8月4日(日) TOHOシネマズ日比谷にて |
日本映画界を代表するヒットメーカー山崎貴監督による太平洋戦争を舞台にした作品ということで、鑑賞前は「永遠の0」(13)のような内容かと想像していたのですが、実際には全く異なる視点から描かれている作品でした。 映画の冒頭、巨大戦艦・大和がアメリカ軍の総攻撃を受けて沈没していくシーンが圧倒的迫力で繰り広げられます。山崎監督作品ならではのVFX技術が駆使されていて、劇場で観るからこその醍醐味に溢れていました。知識として大和が沈没したことは知っていたものの、映像で観るとこんなにも痛ましいものなのかと胸が締め付けられるような思いがしました。 しかし、この作品の本当の見所は、そこに至るまでの人間同士のぶつかり合いだと感じました。大和の建造をめぐって旧海軍での会議シーンが何度も出てくるのですが、既存の価値観に基づく「日本の武力を世界に誇示すべきだ」という主張に対して、舘ひろしさん演じる山本五十六は「数年先の情勢を見越して今必要なものを考えるべきだ」と主張します。冒頭で大和の最期を見せつけられている私達観客にとって後者は非常に納得のいく考え方でしたが、既得権益にまみれた建造推進派によってそれが阻まれていく様子はとてもじれったいものでした。(現在でも政治やビジネスの世界でよく見られる光景かと思います) そんなフラストレーションを主演の菅田将暉さんが一掃してくれます。菅田さんは100人に1人の天才数学者の役で、数学の力で戦争へとひた走る日本を食い止めようとするのですが、難解な数式をひたすらに書き続けていく演技は鳥肌が立つほどでした。科学の力はどんな思想をも凌駕する。そんな風に思わせてくれました。…そのはずなのに、どうして結局大和は造られてしまったのか?観終わった後は、日本という国や日本人のメンタリティについて深く考えさせられました。この8月、ぜひ多くの方に観ていただきたい作品です。 |
林啓輔さん(男性/20代) 「劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer」 7月26日(金) なんばパークスシネマにて |
平成の時代から令和の時代へ。仮面ライダーの歴史も記念すべき20作の節目の作品であり、平成ライダーを締めくくる最後の仮面ライダージオウ。まもなく本編終了を迎える今作にとっては、集大成であり衝撃作でした。 今作の印象としては、『ありがとう平成ライダー!』です。「仮面ライダー 平成ジェネレーションズ forever」(18)は、『ヒーロー』そのものとは何かを問いかけ、たとえ虚構だとしても忘れないでいる限りヒーローは心の中で生き続けるという解を提示した。そして、今作は、『平成ライダーとは何か』というテーマで、平成を生きた全ての仮面ライダーに感謝を伝える、そんな製作者の矜持を感じました。クリム、剛に懐かしむ暇はないほどテンポのいい展開で、織田信長の時代へタイムスリップしたソウゴたち。過去編は、歴史の史実も結局は、客観的な事実ではなく、当時のとある1人の視点でしかない。そんな暗示が、現代でも冴え渡る。つまり、決められた未来などない。今を必死に生きた証が、後世から見た歴史になる。これは20年のという歴史を積み上げてきた平成仮面ライダーシリーズだからこそなせる荒技で、これまで作風も世界観もバラバラで保たれてきた平成ライダーそのものを体現するかのような痛快な解。サプライズ満載、観どころ満載。 子どもの時から足掛け20年間、平成ライダー見守ってき僕たちは今や立派な大人たち。そんな人たちと子どもの頃のように感動も歓声も劇場で共有する経験は二度とないような気がします。これでやっと平成ライダー、そして平成の歴史を終わらせ、次の時代をいける気がします。ありがとう!平成ライダー! |