レビュー一覧
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藤野薫子さん(女性/20代) 「gifted ギフテッド」11月23日 TOHOシネマズ シャンテにて |
私の好きな作品の一つでもある「(500)日のサマー」(09)を手がけたマーク・ウェブ監督作品「ギフテッド」を見に行きました。舞台はフロリダ、今のこの寒い季節には羨ましいくらいあたたかで穏やかな風景を写しながら、そこに暮らす一人の男フランク(クリス・エヴァンス)と少女メアリー(マッケナ・グレイス)の複雑で繊細かつ愛溢れる関係を描くストーリーとなっています。 メアリーは生まれながらにして他の子より秀でた才能(ギフテッド)を持つ女の子。メアリーの育ての親である叔父のフランクは彼女の才能を知るが故にどのように育てるのが正解なのかと悩みながらも、メアリーの亡き母であり姉でもあるダイアンがメアリーに普通の暮らしをさせたいと願っていたことを尊重していました。フランクに“子供らしく”と言われ小学校に通い始めたメアリーですが、簡単な算数の授業に嫌気がさし、その態度を担任の先生に指摘され、あえて難しい問題を出されるも難なく解いてしまいます。 次第にメアリーに特別な才能があることに気づく周囲によって、メアリーとフランクのこれまで通りの“普通の暮らし”が脅かされることに。さらに事態はフランクとダイアンの母であるイブリン(リンゼイ・ダンカン)の登場により裁判にまで発展、メアリーの才能を活かすべきと考え二人を引き離そうとするイブリンとの対立の終末にはダイアンの残したあるメッセージが。フランクとメアリーの関係はどうなるのか、ふたりの強い愛の絆がこの困難にどう立ち向かっていくか見どころとなっています。また、本作はフランクとメアリーという二人の関係だけでなく、フランクとイブリンという実の親子同士の複雑な関係性も描かれていて、親と子という観点から、育て方について何が正解で何が間違っているというのは誰にもわからなくて、とても難しい問題だなと感じさせられました。 見どころとしては役者の演技力もまたひとつあげられます。子役のマッケナ・グレイスは幼い頃に母親を亡くし、幼いながらも周囲の子供たちより特別な才能を持っているという難しい役を、その豊かな表情で巧みに演じていて、彼女の一喜一憂した演技に心を揺さぶられること間違いなしです!また、この作品に欠かせないキャラクターとして片目の猫フレッドの存在も忘れられません。メアリーの大切な相棒でもあり作品の中で大事な役どころでもあるので是非ご注目を。 |
富元靖雄さん(男性/30代) 「ナオト・インティライミ冒険記 旅歌ダイアリー2 前編」11月30日 渋谷HUMAXシネマにて |
私は旅が好きで、今までにも何度かヨーロッパなど一人旅をしてきました。そんな私の気持ちに真っすぐ浸透するのか、『旅がしたい!!』、『もっと世界を見たい!!』、『人との出会いって素敵!!』、映画鑑賞後にそんな気持ちが溢れ出します。 さて今回は、アーティストであるナオト・インティライミの冒険記「ナオト・インティラミ冒険記 旅歌ダイアリー2 前編」をご紹介します。映画を観てすぐに驚かされます。飛び込んだ先がどこであろうと、どんな人たちであろうと、言葉も文化も異なる異国の人々と自然と打ち解けあい、ナオト・インティライミに人が集まって、その人たちがお祭りのように笑顔になっていく様に感銘を受けます。 南米インカの言葉で「太陽の祭り」を意味するインティライミ、その名の通り、ナオトのいる所に太陽ありです。現地のミュージシャンと即興でセッション、子供たちとのサッカー、その土地の伝統舞踊を全力で踊り、その土地にしかない見たこともない楽器に触れる。音楽に国境はないとはまさにこのこと、音楽を通じてその場にいる人たちが一体になり盛り上がる光景は、観ている人の感性にも何かを訴えかけてきます。生き生き、まさに生きていることを実感できる、それでいてとても温かく、人と人のつながりって言葉だけじゃない、言葉がなくても伝えたいことはしっかり伝わる、体から伝わる何か、共有できる何かが確実にあるのだと、ナオト・インティライミから学びました。 その中でも今回の旅は、「音楽を楽しむ心を取り戻したい」というナオト自身が原点回帰するために世界をめぐった旅の記録です。目で見て、肌や匂いや味で感じて、音で感じて、そのすべて音楽という要素に詰め込んでいくナオトの姿はまさに音楽という枠を越えた芸術、本当に素敵なアーティストだなぁと感じさせられます。次々と起こる体験や経験がどんどん上書きされてしまう前に、ひとつひとつを記録していく姿が印象的でした。また旅の途中で、病院に搬送されたり、現地音楽フェスが中止になったり、トラブルもつきまとうのですが、どんなときでも前向きな姿勢であり続けること。何よりこの映画から私が感じたことは、失敗にも意味があって、そのとき辛いことでも、その辛さがきっと後に意味をもって返ってくるのだということです。ドキュメンタリー映画だからこそ、なお一層、感じ取れたことの意味に重みがあります。 ナオトは言います、「忘れられない思い出が渋滞している」、ナオトのように今ある時間を精一杯生きている人だからこその言葉、私自身が過ごす今の時間、私自身が過ごす毎日を少しでも大切にしようと感じさせてくれる素敵な作品でした。 |