レビュー一覧
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水姫クミさん(女性/30代) 「ヒロイン失格」 10月6日 お台場シネマメディアージュにて |
「ヒロイン失格」という作品を一言で表すと「女子力と女性ホルモンがアップしちゃう映画」なんじゃないかと思います。 私は、少女漫画は昔から、あまり読んできませんでした。読んだとしても友達が貸してくれたのを少し読んだくらい。どちらかというと、少年ジャンプなどを読んでいる女子でした。映画は大好きですが、学園物や青春ラブストーリー系は、自分には気恥ずかしくて、あまり観てこなかったように思います。なので、幸田もも子さんの少女漫画が原作で桐谷美玲さんが主演という情報と『私は楽しめるかしら…』という不安だけを持って映画館へ。でも、見始めると次から次へとテンポの良い展開に何にも深いことを考えずに観ることができて、ドキドキとキュンキュンする気持ちで胸がいっぱいになり、笑って泣けて、どこまでもまっすぐで愛おしくなる主人公の松崎はとりを応援している自分がいました。観て良かった! クールな幼なじみの寺坂利太と学校一のモテ男の弘光廣祐は、タイプの違うイケメンですが、二人とも性格が良いのでどちらも応援したくなるんです。学校に、ましてや同じ学年に、イケメンな男子が二人もいることが奇跡のようですが…。自称ヒロイン『松崎はとり』を演じている桐谷美玲さんが、捨て身の変顔やお芝居に挑戦していますが、何をやっても可愛いこと可愛いこと。また、はとりのコロコロと変わるヘアスタイルや洋服やネイルは、まるでファッション誌を見ているようで楽しかった!女性は、オシャレの参考になると思います。はとりの恋のライバルである安達未帆役の我妻三輪子さんの演技力が印象的で、これから色々な役を見てみたいと思える女優さんです。 西野カナさんの歌う主題歌「トリセツ」が、はとりの心情や作品にピッタリ。 観終わると、最近忘れていたトキメキやキュンキュンする気持ちを思い出し、なんだか足取りが軽い気がしました。原作の漫画も読みたくなりました。いくつになっても、女性はみんな世界でたったひとりのヒロインだし、男性もみんな世界でたったひとりのヒーローなんだ。とポジティブになれる作品です。 |
川澄典子さん(女性/38歳) 「バクマン。」 10月3日 新宿ピカデリーにて |
『デスノート』の大場つぐみと小畑健が書いたもう一つの人気コミック『バクマン。』の映画化とあり、公開前から家族や友人達と心待ちにしていた。とは言っても、少年ジャンプを読んでいる家族やアニメ版を観ている友人と違い、「バクマン。」がなんであるか私は実はよく知らなかった。ただ、キャストを知った瞬間に「この作品が面白くない訳がない」と思った。 そのメインキャストとは、週刊少年ジャンプでの連載を目標に漫画家としての道を歩んで行く高校生役を演じている俳優、佐藤健と神木隆之介である。彼らの周りのキャスト達も含め、この作品のキャスティングの素晴らしさに脱帽である。「るろうに剣心」(12&14)の見事な太刀回りが光る佐藤健と「桐島、部活辞めるってよ」(12)の 神木隆之介、両演技派俳優の絶妙な絡み合いと「渇き」(14)で強烈な印象を残した新鋭女優小松奈菜の可愛さが絶妙なハーモニーを奏でている。日本映画の新たなる可能性を切り開いたと言いたくなる程のトリオだ。 また、映画として初となるプロジェクションマッピング、サカナクションの新鮮なのに懐かしさを感じる主題歌や小気味いい効果音も作品を見応えあるものにしている。主題歌を口ずさみながら、作品を回想して、思い出し笑いしてしまう程だ。 外せない見どころはなんと言っても脇を固めているベテラン個性派俳優達である。「ヒミズ」(12)での壮絶な演技と「寄生獣」(14&15)での可愛らしい演技が対照的だった染谷将太。「そして父になる」(13)のリリー・フランキー。脚本家でありながら監督も俳優もこなす宮藤官九郎。その中でも一番光っていたのは「闇金ウシジマくん」(12&14)で、恐ろしいのに多くの大切なことを教えてくれたウシジマくんを演じた、個性派俳優山田孝之だ。彼の何とも言えない優しさ滲み出る役に鑑賞中「こういう人いるなあ」と心の中で何度もつぶやいた。驚いたり、お腹をかかえて笑ったり、心配になったりしながら、この作品からたくさん元気を貰えた。感動のラストシーンを是非劇場でご鑑賞頂きたい。 |
森泉涼一さん(男性/28歳) 「罪の余白」 10月5日 TOHOシネマズ錦糸町にて |
今年は新人女優が豊作な年である。「ソロモンの偽証」の藤野涼子に「海街diary」の広瀬すず。そして、第13回全日本国民的美少女コンテストでグランプリに輝いた逸材、吉本実憂がスクリーンでも目覚ましい活躍をしてくれる予感を感じさせたのが「罪の余白」だ。 彼女が今作で演じた木場咲は容姿端麗、頭脳明晰と誰もが羨むスクールカーストの頂点に君臨する女子高生だ。表では優等生を演じ、裏では恐ろしい一面を持つ。吉本が新進気鋭の新人ならば、共演するのはベテランの渋さを漂わせる内野聖陽。「臨場」(12)の時とは比べ物にならないほど物腰の柔らかい人間を演じているが、そんな彼を見られるのも「臨場」の印象が強い故に貴重かもしれない。 今作では教職者が生徒に復讐を決行するという「告白」(10)の構図に似ている部分がある。それをふまえて注目したいのが、木場を含めた女子高生たち一人一人の背景に隠れた真実にある。自身の目標を遂行するために周囲との関係を犠牲にしながらも、裏では寂しさを隠しきれていない者や友達ながら服従するという立場で彼女を恐れている者。一つの事件が引き金になり、隠し切れない感情が誘発寸前という状況下で、内野演じる安藤聡がどう心の隙間に入り込み彼女たちの真実を引き出すか。未熟な高校生と人生経験豊富な大人の至高の心理戦はどちらに転んでもおかしくない手に汗握るサスペンス劇場に仕上がっている。 |