レビュー一覧
|
玉川上水の亀さん(男性/51歳/会社員) 「はやぶさ/HAYABUSA」 9月25日 よみうりホール試写会にて |
7年間60億キロもの距離を飛行し、小惑星イトカワのサンプルを持ち帰るという世界初の偉業を成し遂げた探査機『はやぶさ』をドキュメンタリータッチで描いた作品である。JAXAの全面協力のもと、テレビや新聞等で報道されなかった『はやぶさ』帰還までの真実が、感動的なドラマとして再現されていく。 情けない話しだが、この映画を観るまで小惑星イトカワの名前の謂れが日本の宇宙開発の祖・糸川博士から来ているのを知りませんでした。それ以外にも、ロケットエンジンとして採用されたイオンエンジンのこと、小惑星イトカワからのサンプル採取方法とか、この作品を観て、初めて知ることばかりでした。 そればかりでは無く、『はやぶさ』が宇宙を飛行中、どのようなトラブルが発生し、それをJAXAの研究員達がどうリカバリーしていったのか?当時の新聞でもテレビでも報道されなかった真実が描かれていく。この映画は、科学ドキュメンタリー系作品として優れているだけでなく、人間ドラマとしても優れている。 主人公・水沢恵をはじめとして、『はやぶさ』プロジェクトに係わる人々、そして『はやぶさ』の動向に一喜一憂する一般の人々のドラマが、並行して描かれていきます。モデルは無く、映画オリジナルの役柄である水沢恵は、天体好きで、若くして亡くなった兄の遺志を継いで宇宙科学の道を歩んでいる。 『はやぶさ』プロジェクトを完遂させるべく、政府やロケット発射場のある地元の説得に泥臭い営業活動をする的場JAXA対外協力室室長。『はやぶさ』がトラブル、難局に陥る度に創意工夫し、粘り強く対処して乗り切っていくJAXAの人々。『はやぶさ』に搭載されたターゲットマーカーに夫々の思いを込めて名前を寄せた数多の一般の人々。 これらの人々の思いを乗せた『はやぶさ』は、映画が後半になるにつれ、機械から人格を持った「はやぶさくん」となっていく。だから終盤『はやぶさ』が大気圏に突入し、幾つもの光となって散り散りになった時、目頭が熱くなりました。 夢と希望を与えてくれるこの作品を、多くの人々が鑑賞し、感動を分かち合えたらと願います。 |
大内さん(女性/49歳/イラストレーター) 「極道めし」 10月5日 バルト9にて |
食欲の秋、このタイトルを目にしたら観ないわけにいかないでしょう。その期待をかなり上回る目にも心にもお腹いっぱいな作品でした。 とある刑務所204房。ここで暮らす4人のもとへ傷害罪で服役してきたチンピラの栗原(長岡佑)が入所してくるところから物語が始まる。いきなりの食事シーン…質素ながら観ていて、もうすでにお腹が減ってきてしまう。 この房には年末恒例になっている行事がある。年始に振舞われる『おせち料理争奪戦』だ。各自思い出料理の話をして、聞いてる誰かの「ごっくん」が1点。1番ポイントが高かった者がおせち料理を1品ずつもらえるというゲームだ。えー、刑務所でそんなこと?…もうそんなことはどうでもいい!それぞれの話は芝居仕立てのコミカルなものだったりするけれど、それがもうすごいのなんのって。それは高級料理ではなくて庶民のごはん!卵かけごはんやオムライスやラーメンの話。だけど、皆自分の思い出と重なって泣いたり、感動したり、ごっくんしたりもう大変!そんな中、孤立していた栗原も皆の話を聞くうちにだんだんと氷山の一角が溶け始め、自分の料理のほろ苦い思い出を語り始めるのだった。さて、争奪戦を制したのは?そしてそれぞれのその先は? なんといってもこの作品の1番の美味しさは204房の面々だろう。栗原の他、古株に麿赤兒扮する極道(実は伝説の大泥棒)の八戸、的屋の南(勝村政信)、元力士で覆面レスラーのチャンコ(ぎだろー)、ホストの相田(落合モトキ)。皆、個性的で本当に楽しめた。 この映画を観て、いつ、誰と、どこで…そんなことも相まっていつも普通に食べているごはんがとても愛おしいものに思えてきました。そして美味しそうなことばかりでなく刑務所内の労働を通して食べるということは体力をつけ日々の糧になるということも実感できました。 最後の出所後の栗原のシーンはもう胸がいっぱいになります。もう何も考えないで笑って笑って泣いて、そしてごはんを食べに行きましょう! |
後藤さん(女性/37歳/主婦) 「マネーボール」 10月7日 USAにて |
この映画は、メジャーリーグのオークランドアスレチックスで現在ゼネラルマネージャーを務めるビリーの物語。ブラッド・ピット&ハリウッドということで、前知識無しに派手な映画を期待して観に行くと良い意味で期待を裏切られます。 ブラッド・ピット扮するビリーは、元メジャーリーガー。でも彼には選手として、これといった成績を残すことなく引退した辛い過去が。そして現在は貧乏球団のワンマン・マネージャーとして、低予算ながらも強いチームを作るべく、試行錯誤する日々を送る。そう、これは今までのブラッド・ピットの役所とはひと味違う。洒落たスーツや派手な扮装は一切なし。いつもジャージで仏頂面、でも子煩悩なお父さん。そしてそれが意外にもしっくりくるではありませんか!ブラッドの新境地をここにありです。 そして作品のストーリーもいわゆるハリウッド的な終わり方ではないのがまたグッときます。自分の信念を曲げずにやり通す、勝つことだけを考える。渋い映画ですよ~これは。しかもほぼ実話というのが、この“グッとくる感”を後押ししてくれます。全く野球ファンでない私ですらこれですから、野球ファン、特にメジャーリーグファン(もっと言うならアスレチックスファン)が観たら感涙ものでしょう。 普段は娯楽映画が大好きな私ですが、たまにはこういう真面目な人生の物語も悪くないなと。観終えた後に、珍しく色々物思いに耽った秋の晩でした。 |