レビュー一覧
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神月 淳さん 私の好きな映画「バウンド」(1997年公開) |
今回は、私の好きな映画作品のひとつ1997年に公開された「バウンド」を紹介します。「マトリックス」シリーズで有名になった、ウォシャウスキー兄弟改め、姉妹の初監督作品。 私の大好きなジーナ・ガーションと、ジェニファー・ティリーのW主演で、レズビアンの世界も自然と感じられる構成になっているのも、この作品の好きなところです。監督ご自身たちがセクシャルマイノリティという事もあってか、わざとらしすぎない描写に、同士でも違和感なく観られると思います。 クールで恐ろしい…といったような、海外マフィアのイメージが少し変わるかもしれない人物やキャラクター設定も魅力的です。そしてなんと言っても、画角など、見せたいモノの『魅せ方』が素晴らしくカッコイイのは、云わずと知れたウォシャウスキー姉妹作品の特徴ではないでしょうか。最後までドキドキできる上に、派手なアクションシーンが続くわけでは無いのにもかかわらず、観終わるとめちゃくちゃスッキリ爽快な気分になれる、ストレス発散にもオススメの映画です。 こんなに抜かりなくカッコイイ映画は、そう無いのではないか…と思うと、もっと評価されても良いと思うところ。セクシャルマイノリティのリアルな世界も垣間見られるので、このご時世にも合っているせいか、今観ても古い感じが一切しないのもお洒落な証拠。 |
齋藤 睦さん 「空白」10月8日 T・ジョイ蘇我にて鑑賞 |
映画でしか表現できないものがあると感じられる作品だった。 万引きした女子中学生が、松坂桃李さん演じる青柳に見つかり追いかけられ、逃げる最中に道路に飛び出して車に轢かれて死んでしまう。古田新太さん演じる添田さんはその子の父親で娘の万引きや事故に疑念を抱いて周りの人に迫っていく、ワイドショーで両者について議論が盛り上がりそうな始まりだった。 けれど両者の視点でのストーリーを追うごとに、ニュースの中の話ではなく、万引き現場や自動車事故という身近な事件は、他人事でなく明日は我が身かもしれないという怖さも感じられる。 加害者とされる青柳が抱える罪悪感の一方で、それに天罰を下さんとする世論や過剰な慈悲には神経がすり減らされ、遺族である添田さんの怒りはどこに持っていくのか、どう向き合えばいいのか、持て余している様子が痛々しかった。 その針の筵のような展開の先で訪れるシーンにはぐっときた上に、そのときの古田さんの演技が忘れられない。言葉にするのは難しいけれどあれが赦しの瞬間だと感じた。SNSやオンラインでの人との関わりが多くなって来ているこの世の中でも忘れずにいたい心のあり方だと思う。 |