レビュー一覧
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林 道治さん 「アナログ」 10月12日(木) TOHOシネマズ 六本木ヒルズにて鑑賞 |
行きつけのカフェで出会ったスマートフォンを持たない彼女。今作は「アナログ」というタイトルですが、『デジタル』な生活に慣れている私にとって、とても新鮮な感覚に包まれるひとときでした。話をしたいときに連絡ができないもどかしさ、相手がどこにいるかもわからない不安感。だからこそ、二人でいられる時間を大切に過ごそうと思えるのでしょう。 主演の二宮和也さんと波瑠さんのお芝居が素晴らしく、澄み切った世界観とあわさり、深く心の奥底へと浸透していきます。僅かな表情の変化で感情の機微を表現する二人のやり取り、互いを真摯に思うその姿に胸を打たれました。優しさと強さ、愛することにはその両方が必要なのだと改めて気付かされた思いです。 スマートフォンという連絡ツールを介さず、紡がれていくピュアラブストーリー。丁寧に構成された純愛映画に触れることができ、鑑賞後の余韻も冷めやらぬままです。また、劇中で映される景色や背景が美しく、ロケーションの素晴らしさも見どころの一つとなっています。便利になった今だからこそ、一層沁みる珠玉の物語、是非劇場で体感して頂きたく思います。 |
高山はる菜さん 「キリエのうた」 10月13日(金) グランドシネマサンシャイン池袋にて鑑賞 |
一週間が過ぎた今も、感想や考察を読み続けている。いつもならレビューをメモするスマホも開かず、どこかでキリエが歌っている気がして、探すように映画館を出た。これは、そんな“キリエのうた”が引き合わせた、逆らえない運命を生きる人達の、贖罪と祈りの物語。現実的な神話であり、大切な人への聖歌だ。 皆さんは、岩井俊二監督作品と聞いて何を思い浮かべますか?私で言えば同い年の「リリイシュシュのすべて」(01)で、まさに魂が震えた衝撃とともに特別な映画であり続けています。今作は、その「リリイ…」に続く岩井俊二監督の音楽映画。過去作を彷彿させる画の数々に、常に鳴り響く音と歌。すでに監督の世界に魅了されている方々にはもちろん、まだ出会えていない同世代や下の世代に、体感してもらいたい。この3時間が、かけがえのない映画体験になるから。 そして、個人的な思いにはなってしまうのですが、10年大好きな広瀬すずちゃんの凄まじさに、改めて、応援できていること、幸せに思いました。「キリエのうた」への感情のすべてを言語化することができないのですが、私から言えることとしては、この映画がリアルタイムに上映されているということがどんなにありがたいことかということ! |