レビュー一覧
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富元靖雄さん(男性/30代) 「メッセージ」5月30日 渋谷HUMAXシネマにて |
もし宇宙人が地球にやってきたらどうする?幼い頃その構想にワクワクしながら思いを馳せた人は多くいるのではないでしょうか。私もその一人です。未確認飛行物体や宇宙人など、見たことがなかったり、遭遇したことのないことへの期待感は計り知れません。未知なものへの好奇心が、ヒトの心を動かす最も大きな原動力なのではないかと思います。実際今年の2月、約39光年先にある恒星トラピスト1の周りに、地球に似た惑星が7つも発見され、世界中が盛り上がっています。そのうちの3惑星には水が存在する可能性を秘めたハビタブル惑星であることもわかり、未知なる生命体への大いなる期待感は言うまでもありません。どんな星なのか、生命体がいるとするならばどんな生物なのか、想像で描き起こす世界は無限大です。 さて、今回私が紹介する映画は「メッセージ」です。ある日突然、巨大飛行体が地球に、その目的は不明…エイミー・アダムス演じる言語学者のルイーズは、“彼ら”がどこから何のためにやってきたのかを探るためその言語解読を軍に依頼され、物理学者のイアンと共に飛行体の内部へと向かいます。飛行体の内部には地上とは異なる重力が存在し、透明の壁越しに現れたのは、7本の脚で動く生物ペプタポッド。脚から黒い煙状のものを噴射し、一瞬にして意味を形作るサークル状の「表意文字」を発します。『わたしたちは人間です』ということから、『わたしはルイーズです』と名前を語り、“彼ら”と意思疎通を図ります。“彼ら”はそれに対し何かを伝えるために「表意文字」で応えますが、解読に困難を要します。 “彼ら”はルイーズたち人類に何を伝えようとしているのか、映画が進行するたびに、映画の先が読めないことへのワクワク感を嬉しく感じます。そして映画冒頭に観た、湖のほとりで戯れる母親のルイーズと幼い娘のハンナ。その後娘は病にたおれ最愛の娘との別れがやってくる。それは、母親ルイーズにとって一体何を意味するのか。 映画の最後に何を得て何を感じるのか、観る人によってその“メッセージ”の受け取り方は千差万別なのかもしれません。私自身は、人生においてどんな結末を迎えようとも“今ある幸福を実感し、今を一生懸命生きていくこと”を感じられた気がします。 |
藤野薫子さん(女性/20代) 「ちょっと今から仕事やめてくる」6月1日 TOHOシネマズ日本橋にて |
「ちょっと今から仕事やめてくる」というタイトルが印象的なこの作品。皆さんはどんな印象を抱きますか?私は昨今よく耳にする「ブラック企業」や「過労死」といった言葉を連想し、見る前はネガティブな印象を抱いていました。しかしこのタイトル、作品を見た後にはきっと初めに受けた時とはちょっと違った印象に感じられると思います。というのも、このタイトルが重要なフレーズとして発せられた時、そこにはネガティブなイメージとは打って変わって前向きな思いが込められていたからです。 登場人物の青山(工藤阿須加)は日々の仕事に疲れきって線路に落ちようとしたところを突然現れたヤマモト(福士蒼汰)と名乗る男に助けられます。その出会いをきっかけに青山は追い込まれていた状況から徐々に明るさを取り戻し、仕事へのやりがいも再び感じ始めます。ヤマモトと接することで変わっていく青山を見て、一度は「死」という選択をしてしまうほど追い詰められ、余裕のない状況になってしまうというのは本当に怖いことだと感じました。 また、会社で上司からひどい扱いを受ける青山を見て「もっとあの場面ではこうしたら良かったんじゃないか」とか、青山に対して色々思うこともありました。けれど実際に自分が同じ状況になったら思った通りにできるだろうか、実際は何も言えないほど追い詰められてしまうのではないか。ふとそう考えてみた時、そんな時にそばにいてくれる人、気にかけて声をかけてくれたり話を聞いてくれる人の存在は大切だなと思いました。周りが見えなく、どんどん閉鎖的になっていた青山に声をかけるヤマモトの大切さに改めて気づかされました。 だからこそ最近忙しくてなんだか余裕がないと感じている人や今の環境が辛いと感じている人に、この作品をお勧めしたいです。周りが見えなくなっていないか、自分の選択肢は他にないかとふと考え直すきっかけを与えてくれ、前向きな気持ちへとさせてくれるそんな作品です。そうでない人も、自分の周りに青山のように悩んでいる人がいないか、身近な人への普段の接し方はどうだろうかと改めて考えさせられる作品となっています。作品のタイトルが前向きに発せられる時、そこに至るまでの葛藤や、それはどのような決断からなのかそこに思わず涙してしまうこと間違いなしのこの作品、現代の働き方についての問題をどのように描いているかも注目です。ぜひ劇場でご覧下さい。 |
なおとさん(男性/30代) 「家族はつらいよ2」 6月1日 新宿ピカデリーにて |
笑いあり涙ありのみんなを楽しませる山田洋次監督の作品を楽しみにしておりました。橋爪功、吉行和子、妻夫木聡、蒼井優ら前作の豪華なキャストの再結集、前作から数年後の平田家の日常的なことが描かれた話です。 橋爪功演じる平田周造が高齢を理由に自動車の運転を家族に反対されることから物語ははじまります。家族からは反対されていても最後まで諦めないで自身の考えを貫き通して乗り越えている姿が伝わりました。そんな時工事現場で働いている高校の同級生である丸田吟平(小林念待)に偶然会います。周造は、吟平のことで今までいろいろ噂になっていたり、30年以上連絡がないことで、吟平を心配していて気遣っている様子が伺えました。周造と吟平は、旧友の向井(有薗芳記)と3人で女将かよ(風吹ジュン)のお店で同窓会を開催します。吟平がサッカーチームでキーパーだったことを皆で懐かしく話し、向井は応援団の応援を、周造や吟平ものりの良いシーンが笑いありでおもしろかったです。そして酔った吟平を周造が平田家に泊めてわいわい話していて和んでました。 ところが悲しいことに吟平が孤独亡くなってしまいます。その出来事に家族は驚くのですが、鰻屋さん役の徳永ゆうきの驚き方は大胆すぎて笑えました。警察役の劇団ひとりが尋問するシーンもおもしろかったです。 周造が身寄りのない吟平を安らかに天国に送るために、葬式をすることに真剣に向き合っている姿は友達思いなところがすごく伝わりました。他の平田家の人々や旧友の向井が参列していて周造の思いが届いている様子も嬉しく思いました。死を笑いに転化する大胆な挑戦をする山田洋次監督を素晴らしく思います。また次の山田洋次監督の作品を楽しみにしたいです。 |