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レビュー一覧
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| 丸山美歌さん 「港のひかり」 11/18(火) 新宿バルト9にて鑑賞 |
| 藤井道人監督の最新作「港のひかり」を紹介します。漁師として日々慎ましい生活を送る元ヤクザの三浦は、視力を失った少年幸太と出会います。純粋無垢な幸太に救われた三浦は、幸太の手術代のために罪を犯してしまいます。 時が経ち、刑事になった幸太。三浦との再会とともにストーリーは再び動き出します。 ㅤ私は藤井監督の「ヤクザと家族 The Family」もとても好きなのですが、監督の描く、人情に溢れる義理堅いヤクザ像はみんなどこか孤独で寂しい。本作も同様、レッテルを貼られたヤクザを通して人間としての在り方を問われました。 ㅤ「家族でもない他人の幸太にどうしてここまでしてやるんだ」という問いに対して「あの子は私のことを1人の人間として接してくれた」と答える三浦。血の繋がりより強い2人の関係に胸が熱くなります。他人優先からくる自己犠牲は真の強さの表れ。誰かのために生きるとはどういうことなのか、考えさせられました。 ㅤまた全編フィルム撮影だからこそ出せる質感や味わいは俳優陣の迫真の演技を際立たせます。静かに情熱が宿る渋い作品となっています。じんわりと感傷に浸れる劇場でご覧ください。 |
| 河村あずささん 「平場の月」 11/17(月) 新宿ピカデリーにて鑑賞 |
| 大人になったらなんでも器用にこなして、正しい判断ができると思っていました。しかし実際には、大人になったからこそ生き方や振る舞いを簡単には変えることができず、後先を考えずに衝動的に動くことが難しくなってしまうのだと気づかされます。 「平場の月」は、離婚と死別でパートナーを失った50代になった中学の元同級生のふたりが再会し、物語が動き出すラブストーリーです。彼らの姿を見ながら、10代の頃より多くのことができるようになったはずなのに、恋愛となると不器用で滑稽で、どうしてこんなにも切なくなるのかと感じ、胸が締めつけられました。 堺雅人さんと井川遥さんという華やかな俳優のお二人が、まるで身近にいそうなふたりとして佇んでいて、その自然さに引き込まれます。その自然さのおかげで、物語の世界にすっと入り込み、最後までふたりを見守り続けることができました。 若い頃に憧れたドラマチックで甘酸っぱい恋愛も素敵ですが、ただ愛する人と平凡で普通の暮らしを積み重ねていくこと、その尊さが静かに胸に沁みてきます。鑑賞後、時間が経つほどにじわじわと余韻が広がる、苦しくも美しい大人のラブストーリーです。是非、映画館で感じてください。 |