レビュー一覧
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板谷政弘さん(男性/50代) 「シンクロ・ダンディーズ!」 7月31日(水) 試写会にて |
男性のシンクロ?ということでちょっと引いてしまうタイトルですが、単なる笑いだけのコメディ映画ではありません。どこにでもいる人生にやや疲れたおじさんたちが、イギリス代表チームとして「シンクロで世界大会を目指す」という同じ大きな目標を見つけることによって、グダグダ感がありながらもだんだんと一致集結し、それぞれの人生の輝きを取り戻してゆくという「胸アツ」なヒューマンドラマ作品です。 まず、これがスウェーデンに実在する中年男性シンクロチームの実話がベースになっていることに驚きです。イギリス実力派の俳優陣がそのあまり褒められない体形で、まさに体当たりでシンクロに挑んでいます。そこには、イギリス中年男性のユーモアとダンディズムがベースにあって、自分の年齢が近いこともあり余計に自分のことのように感じられて、いつになく感情移入してしまいました。 水中での撮り方や各シーンの撮影技法も、やはり日本人とは少し視点が異なっていて、繊細な感じにイギリスらしさを感じました。主人公には中年男性の日常によくある妻や子供との気持ちのすれ違いがあり、他のメンバーにもそれぞれに問題を抱えていて、ダメになりそうになりながらも「シンクロ世界選手権」に出場という目標をきっかけにして、非日常へとだんだんと気持ちが入ってゆき、世界選手権のシーンでは大きく感動。巧妙なCGや特別なセットもありませんが、心揺さぶらせる感動の場面が幾度もあり、特に、最後のシーンでも人生はやはりこうでなくてはと、感無量の境地で涙腺崩壊でした。 なお、この作品はイギリス版ですが、同じテーマで製作されているフランス版の「シンク・オア・スイム」(19)と観比べてみるのもおもしろいと思います。中年層の人たちにエールを送るハートウォーミングでたまらない作品となっていて、ごく日常の人生をハッピーに、元気にする映画ですので、是非ともご家族皆さんで観てもらいたいです。 |
中村千春さん(女性/20代) 「台風家族」 9月1日(日) TOHOシネマズ新宿にて |
人の不器用さや、一筋縄ではいかない家族愛を破天荒満載に描いたコメディ映画。鈴木家長男・小鉄を演じる草彅剛のクズっぷりの演技がとても良い!脇を固める周りの俳優さんたちも素晴らしい。 強盗事件を起こして2000万円を奪った鈴木一徹とその妻が失踪。10年後行方は知れず、仮想葬儀を済ませ財産分与を行うために兄弟たちが揃います。事件の関係者が訪れ、不可解な強盗事件の真相が明らかになっていくお話。 財産を一銭たりと譲らない長男、ビジネスで成功して長男を見下す弟、バツイチの長女、フリーターの三男。長男のクズっぷりにあきれてしまうが何故か憎めない。観終わった後は、両親のことを思い出しました。家族の絆や不器用な父が子を大事に思う姿が描かれていたり、弟4人の怒りや愛情、嫉妬や後悔など共感する感情が紡がれいて、うるっときます。鈴木家の葬儀後の一日が描かれていて、一人ひとりの登場シーンが多く、役者個人の個性や存在感も存分に楽しめて 見どころ満載だと思います。 狭い茶の間でのドタバタした兄弟喧嘩って、こんな感じだろうなと。親から注がれた愛情と家族ささやかな幸せが感じられます。ところどころ「ありえない!」なんて思う展開もあるのですが、とにかく笑って笑って、泣けて観終わったあとは爽快な気持ちになりました。小鉄が開き直る「クズでケッコー」には破壊力があり…笑わされました。 親子や兄弟にスポットを当てた強烈な映画であること。おそらく誰もが親兄弟との関係を考えさせられると思います。3週間限定公開というのが悔しいところですが、ぜひ観ていただきたい作品です。 |