レビュー一覧
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板谷政弘さん(男性) 「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」 5月31日(金) 109シネマズ港北にて |
この映画は、ハリウッドが映画化した「GODZILLA ゴジラ」(14)の5年後を舞台にしたシリーズ第2作です。ストーリーには継続性がありますが、単独で観ても十分に理解できる内容になっており、昔からあまりにも有名で説明は要らない怪獣であるゴジラ、モスラ、ラドンそしてキングキドララの巨大生命体ラインナップが互いに壮絶な戦いを繰り広げる大作です。物語の根底には、現代人類社会への痛烈な批判的なものが流れているのを感じながら、その上に家族への深い愛情や人間以外の生物との共存への葛藤も謳っており、特務機関「モナーク」の活躍や人間ドラマも入っていて、巨大モンスターの地球での覇権を賭けた激闘シーンだけの単調なものではありません。 個性豊かな各怪獣のそれぞれの壮大なスケール感に驚かされる登場シーンや、人間目線で怪獣達の戦闘を見上げるアングルでの臨場感あふれるシーン、激闘の中で出てくるビルの破壊シーン、怪獣の起こした風圧で飛ばされる人々、怪獣の表情や体の質感までもCGで駆使されており、スーパーリアルに表現されていて、かつ、音響や音楽も合わせて極めて効果的に利用されていて、そのド迫力に圧倒され、感動すら覚えます。 更に、音楽は今までのゴジラのテーマを引き継いでますが、対して各怪獣の描き方は今までになく美術的な感じもして、懐かしさと斬新さが共存しています。昔からのゴジラファンの多くの方々は、その雄姿の進化ぶりに驚き、かつ、ここまでよく描いてくれたという何か満足感的なものが込み上げてくるものがあるのではないでしょうか。また、日本人として出演されている渡辺謙さんが演じている重要な役柄も非常に印象に残ります。 ゴジラは1954年に日本で生まれてからなんと65周年という長い間人気を保ち続けており、今回はハリウッド版ということですが、日本発信であり世界中で知られるようになったヒーローキャラクターとして少し誇らしく、懐かしさ感もあり、幅広い年齢層の方々で最高に楽しめる作品です。 |
中村千春さん(女性/20代) 「長いお別れ」 6月2日(日) TOHOシネマズ新宿にて |
「湯を沸かすほどの熱い愛」(16)の中野量太監督の最新作。認知症になった70歳の父、昇平とその家族を描いたヒューマンドラマです。現実では笑えない状況なのかもしれないけれど、クスッと笑えるようなシーンもあって、生きていれば誰もが直面するエピソードがありました。放っておくと家から出てどこかに出かけてしまう、食べられないものを食べてしまうなど、認知症や介護は他人事ではないし、いつか自分たちが誰かの面倒を見るかもしれないし、面倒を見てもらうのかもしれない。自分はどうしていくか、今からできることは何かを考えさせられる時間になりました。 徐々に記憶を失っていく7年間に、父に対する感情や考え、周囲の環境も変わってきます。父親の病気で家族が集まり、仲睦まじくなんでも話せる姉妹の関係がとても誇らしく、記憶がない父親に語りかける芙美(蒼井優さん)が本当に素敵でした。縁側で涙を流す芙美のおでこに手を置いて熱を測る仕草。娘の事を忘れてしまっているけど愛情を感じ取れるシーンでした。 70歳にして、電車の中で奥さんにプロポーズするシーンもグッとくるものがありました。忘れてしまっていても、奥さんへの想いはきっと心に残っている、繋がりがあるものなのではないでしょうか。 認知症のことを英語でdementiaと言うけれど、作品の中ではlong good bye(長いお別れ)と表現されています。少しずつ記憶をなくしてゆっくり遠ざかっていく。この表現を聞いた時、ものすごく優しいと感じました。認知症と聞くと、現実から目を背けたくなるような、少し後ろめたい気持ちになったり、胸が引き裂かれる感じがしますが、その言葉を聞いて温かい気持ちになりました。家族、身内が認知症になっても、最後まで受け入れてあげたい、そんな気持ちになれた瞬間です。 認知症の役を演じる山﨑努さんの演技がとても自然でした。ぜひ注目していただきたいです。家族愛に溢れ優しさを感じられる映画。コミカルに描いているのであまり介護や認知症の大変さをメインに描いてはいませんが、家族っていいなぁと思える作品です。多くの人、同じ世代の方に観ていただきたいです。 |